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2005年2月2日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

雪のイメージ踏まえ形象化

栗田宏「陶と絵」・平野照子 陶芸展
(2005年2月5日〜20日 画廊Full Moon)


坂爪勝幸(陶芸作家)
栗田 宏 平野照子


 栗田宏のキャンバスに雪が、降り始めて白く覆い隠す。
 かって長い間、彼は修行僧のように白い世界を、尖った硬い鉛筆で、まだ会えない誰かのために、息遣い、涙、足跡、音、色をひそやかに削りだした。
 やっと最近、かれは、修行を終えたらしく、キャンバスに再び白い絵の具を置き始めた。雪で覆い隠された秘密のまどろみの中に、人は、心を休めるように栗田は、白い絵の具の雪を降らせる。
 その訳は、きっと土を焼くことで、大地の豊穣な色を炎で引き出し、手と唇の感触だけで器を作ったからだろう。彼の器の豊穣な肌と色。これらの上にも、いつか雪が降るだろうか。
 若い陶芸家の平野照子が、雪をふむ。雪の上に足跡を残しながら辿り着いた塔。誰も足を踏み入れたことのない階段を平野は、ぐるぐると昇って降りる。
 階段は、メビウスの輪のように終わる事無く、永遠に続く螺旋の世界。夢の中で巨大なぐるぐるの塔が、天を突く。滑り台のように彼女が下るとき、美しい青白釉の斜面を滑って、塔の外に飛び出し、ぐるぐるの塔のまわりを飛ぶ。
 疲れて階段の途中で顔を上げ、ひざを抱えて空中に浮かぶ満月を観る。また時折、ぐるぐるの塔の内部の階段に滑り込んで、小さく窪んだ踊り場で、青白い光に包まれて胎児のように丸くなって眠る。そしてすぐに次のぐるぐるの塔のめくるめく夢を見る。