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2005年2月7日 新潟日報 掲載

美術時評
 

新境地開く若手

笠原もなか ドロップ展
(2005年1月4日〜9日 ギャラリーdotONE)
サトウケイコ ドローイング展 ―スクランブル―
(2005年1月13日〜18日 羊画廊)


外山文彦(アートコーディネーター)
サトウケイコ 笠原もなか


 若い世代のアートが活発だ。昨年は、廃工場を使った「なくなる工場展」、通常の展示スペースをはみだして通路などにもインスタレーションを試みた「座・ミセモノゴヤ展」(今井美術館)、ライブパフォーマンスの「チナップ」などグループ展で面白い動きが目についたが、ここでは新年早々開催された笠原もなか(長岡市)とサトウケイコ(新潟市)の2人の個展に着目したい。
 イラストレーターとしても活動する笠原もなかの新作展(ドロップ展)は、イラストや刺しゅうなど多彩な作品群だが、バラエティー従来のさとは様相が異なる。例えばパネルを大きく白一色で塗り、その真ん中に小さく身近な風景を描写したシリーズなど、全体を通して画面の余白の意識が強くなされている。描かない部分を意図的に生かしているが、作家の思考がよりリアルに表出されたかのようで、シンプルな構成ながら味わいが格段に深まった。レリーフ作品を点在させるなどした、その展示手法の進展も興味深い。
 サトウケイコは、魚や果物、昆虫などをモチーフに、立体作品などでその溢れる生命力を表現してきた作家だが、今回はドローイング主体で「スクランブル」と副題がつけられる。作家によれば、技法、素材、内容などすべてを攪拌させ、今までのイメージを壊そうと試みたという。
 時折、具象的なイメージが顔を覗かせたりもするのだが、蛍光塗料を多用した絵画は勢いをもつ。会場は天井高3メートルほどの高さがあるが、その高さを生かしてランダムに配置、会場全体を作品に取り込んだインスタレーション作品となった。以前より空間的に整理された分、エネルギッシュな魅力がより生きるようになり説得力を増した。
 両作家とも今回の展示で新境地を開いており注目に値する。個展のなかから「個」を問い続けている姿勢は貴重であり、今後の展開も期待が大きい。