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2005年3月19日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

静かな絵にも心ざわめく

原聡美 展
(2005年3月17日〜22日 羊画廊)


正道かほる(児童文学作家)
「諦観の森」
50×36cm 岩絵具・雲肌麻紙


 薄暗い森の中を制服姿の少女が駆けている。後ろ姿で顔は見えないが、何かを追いかけているようにも探しているようにも見える。あるいは針葉樹の森、苔むした倒木に裸足の女学生が腰かけている。また枯れ枝が檻のように入り組んだ雑木林、少女が死んだように、眠っているように横たわっている。日本画の画材で描かれた絵はどれも静かなのに、見ているとなぜか心がざわめく。
 原聡美氏は思春期の少女たちを多く描く。「中学生、13歳、14歳という年齢に魅かれるんです。それも私服でなく制服の、拘束されている感じに拘りをもっています」
 言われて自分のあのころが甦る。何とも言えない焦燥感、閉塞感。拘束する制服、檻のように囲い込む森、そしてその前に女であるという縛り。二重三重に囲われているのではないか。それは地方都市で生活することの息苦しさに似ているかもしれない。
 でもこれはわたしの見方。紺色のスカートとハイソックスの間の肌に、草むらに横たわる少女に、別な見方をする方もおられるだろう。原氏が好きだというバルテュスの絵のように「見る人の心をあぶり出しにする」絵でもある。
 原氏はまだしばらくはこのテーマで描き続けていきたいという。先の絵、地平線がほの明るくなってきている。雑木林の先は海へ広がっている。もう少し描いて、気が済むまで描ききったとき、どんな世界が広がるのか。楽しみにこれからも見続けていたい作家である。