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2005年7月20日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

効果見せた画面構成の変化

小春 版画展・New Yorkの薔薇
(2005年7月22日〜30日 新潟絵屋)


小川 宏(造形家)
「ROSE」2001年

 ニューヨークを拠点に活動している版画家・小春の個展。作家は東京芸術大大学院を終了後30年近く創作活動から離れていたが、1998年、50歳のときにニューヨークに渡り活動を再開した。作品のモチーフとなるのは一環して「薔薇」であり、京都法然院、旧古河庭園・大谷美術館での個展など、ここ数年の精力的な発表が目につく。
 県内での個展は、昨秋の長岡での展示に引き続き2回目となる。昨年の個展会場で印象的だったのは「モノタイプ」と呼ばれる版種で、複数性を拒否した一品作品として制作されており、部分にはコラージュなども見られた。
 一般的にこのタイプの版画はストロークなどを多用し、偶然性を期待したものが多く見られるのだが、小春作品はバラの花が繊細にしかも象徴的に表現されており、ある種の気品を漂わせている。
 今年の展示には新しいシリーズが加わった。最新作の画面構成には変化が見られ、バラの花は象徴的中心性から解き放たれ、矩形の中のパーツ的役割として存在し、画面全体に昨年までとは異なった効果をもたらしている。
 本展では、そうしたシリーズとしての変化を見比べることができるほか、制作に用いられた道具、素材、技術など見どころは多岐に渡る。ここではあえて技術面での詳しいコメントを避け、作品との対面による楽しみとして温存しておきたい。