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2005年8月17日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

情緒匂う 映像と言葉の融合

高橋美由紀展
(2005年8月19日〜24日 楓画廊)


本間弘行
「月をみながら 太陽について 考えた。」
エッチング、アクアチント
45.0×60.0cm 2005年

 高橋美由紀の一版多色刷りの銅版画は、水墨画や墨絵のように、色の滲みや平面のバランスに特徴がある。
 また作品とタイトルとの関係もユニークであり、そこには寓話的とも呼べる世界がある。それは映像と言葉がコラボレーションしているようでもあり、作家の中で詩が生まれ、次に作品が生まれるかのようでもある。
 そのように感じるのであれば、私にとって高橋美由紀の作品は、晴れた日の冬の朝にそっと咲くことばの花だ。それは最初に水墨画を持ち出したのであれば、俳画といえなくもない気がする。
 ただ、それにしては、画面にはセンチメンタルというよりは感傷という文字が似合いそうなあるムードがあって、それは少しあまい情緒の匂いがしてデリケートでありナイーブだ。それが今後どのように変わっていくか、大きな期待と少しばかりの不安があるところだが、このあるムードが漂うこと、そしてそれが作品に保てること、そのこと自体は強いことだ。
 昨年の同じ楓画廊での個展から1年以上の歳月が流れて、今回の個展の作品は、より抽象度が高まったようだ。これだけ書くとまるで難解な作品のようだが、言い換えれば高橋の作品はたまたま隣りに立っている少女の見ている世界であり、作家はある形を表現しようと去年も今年もただ懸命なのだと思えてならない。
 だから、今はこの若い作家とともに、作家の手を離れて作品世界に自立する、色と言葉のデリケートなかたまりの出現に立ち会いたい。
 それが光の差す、明るい方へと向かって進んでいくためにも。