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2005年9月28日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

毛布の画伯 原初の力にじむ

高橋俊文展
(2005年9月27日〜10月2日 A・BOX)
(2005年9月29日〜10月4日 羊画廊)


田代草猫(俳人)
〈1340〉毛布・水性塗料
200× 140cm  2005年

 高橋さんから最初に「毛布に絵を描きます」と聞いたときは、今だからゴメンナサイ。単に奇を衒っているだけなのかと思ってしまった。しかし、いざ作品を目の前にしたら、そんな自分の浅はかな憶測など一気に吹きとんだ。
 昨年、羊画廊で開催された高橋さんの個展は壁に掛けられ、床に並べられた毛布が心の奥を荒々しく揺さぶってくれた。ここに並べられたモノたちは絵なのかオブジェなのか。絵の具の下に毛羽だつ毛布は獣毛を思わせ、そしてふと世界最古の人類が描いた洞窟壁画をも思い出させられた。
 豊穣を祈ったとも大地の力を得るために描かれたとも諸説ある原初の絵画。古代の、いまだ宗教もなく芸術の概念も持たない人々が洞窟の闇に包まれた壁面に描いていたもの。それは意外にも病を得て床に伏していなければならなかった時期の高橋さんが、かぶった寝具の闇に見ていた世界。それに遠いようで近いのではないか。言葉にならない叫びや恐れ、希望や夢が絵のかたちをして噴き出したものに思われてならない。
 今回は毛布のみならず布団やシーツにも絵の具を塗った。今回は小さいサイズの作品も多い。しかし原初の力はそんな小さな画面からも静かににじみ出してくるのだ。