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2005年10月14日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

「人間」と「自然」の関係問う

土沼隆雄 庭展
(2005年10月13日〜19日 画廊Full Moon)


五十嵐実(日本自然環境専門学校校長)

 作家ヘルマンヘッセは「庭仕事は瞑想である!草花や樹木は生命の秘密を教えてくれる」と述べた。現在、人間と自然の交流を確認する場としての庭園の重要性が再確認されている。21世紀は環境の時代といわれているが、環境と人を結ぶ接点がまさに庭なのである。このような時代背景の中、新潟市の画廊フルムーンで土沼隆雄の「庭展」が開催されている。
 ここで土沼は、佐渡の庭「緑水荘庭園」の紹介と「新潟の庭園」の研究成果の一端を提示する。土沼は佐渡で本格的な日本庭園を2年の歳月を掛けて造った。その過程で庭の現代的な意味を考え、庭のプライベート性と日本庭園の伝統性「縮景」「借景」との調和を目的とした。この難しい作業は、実は「人間」と「自然」の関係をあらためて問うているように思われる。
 また、地域性からみた新潟の庭園の体系的な研究は、彼が先駆的に取り組んだものである。彼の「新潟」の、そして「日本の庭園」にこだわる理由は、自分の「新潟の庭師」としてのこだわりでもあり、「地域性」は現代を語るもうひとつのキーワードなのである。
 六本木アークヒルズの庭で最も人気があるのは、実は日本の樹木、花を植えたスペースである。そこに求められるものは自己のアイデンティティーの確認とゆっくり移り変わる「日本の自然」の発見である。
 「現代」「地域」「自然」そして「人」。この調和の糸口が今回の展示から垣間見えてくる。