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2005年10月17日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

「生」を感じさせる作家の技量

伝統工芸金工展
(〜2005年10月22日 工芸サロン金と銀)


田代草猫(俳人)

 当たり前のことだけれど、紙であれ、金属であれ、素材は生命体ではない。しかしそれが作品というかたちをとると、あたかもそれが生き物であるかのような存在を持つようになる。それを実感させられた。
 今回の企画展作家たちの作品があるデパートに展示されている、というので出かけてみた。ライティングも明るくケースの中にきちんと並べられている。でも何かが違う。物足りない。まるで水槽の中の熱帯魚や、檻の動物たちを眺めているかのように、自分と作品とが同じ空気の中に居る一体感がないのだ。
 小さなギャラリーはデパートや美術館ほどには大きな作品が多数並べられるわけではない。だが小さな空間でも、作品をつくり出した作家と、展示するギャラリーのオーナーとが醸し出す有機的な濃密な作品の空気がある。
 オーナーの佐藤さんが「ここまでやることないのにね」と思わず漏らしてしまうほど浅井盛征さんの作品はさまざまな技法が凝らされている。でも決してこれみよがしな感はしない。自分自身がどこまでできるのか、常に楽しんでいる。そんな雰囲気。小川澪さんの作品は素晴らしくかわいい。単にウサギなどの動物のかたち=写真=をしているからではなく作品自体がちゃんと生きている感じがする。もちろん、そう感じさせられるのは作家の技量の賜なのだろうが。