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2005年10月26日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

品位感じる抑制効いた色彩

斎藤順正展
(2005年10月27日〜11月6日 アートサロン環)


橋本直行(画家)
左:「赤いコスモス」  右:「嵐(コスモス)」

 斎藤順正の絵の前に立つと見る人の心は和み、穏やかな気持ちになるだろう。越前浜にアトリエを持つ画家は、季節感のある身近な風景や野に咲く花、卓上に何げなく置かれた果物といった、さりげないけれども誰もが恋しく感じ、美として心の内に共有しているであろう情景からエッセンスを引き出し描く。
 抑制の効いた色彩は具体的な描写を品位あるものにし、明解な構図とデッサンにより画面は落ち着き安定感がある。斎藤は、顔料をニカワで溶く顔彩の技法で多くを制作するのだが、ニカワ絵の具特有の絵肌のつや消し感や、優しくなじむ輪郭がより一層描かれた主題を親密なものにしている。今展では、ジークレー版画を主として、日報読者欄「窓」の挿絵、顔彩、油彩などが会場を飾る。
 一方、西大畑の「砂丘館」では11月6日まで斎藤の屏風絵が展示されている。一双六曲の金屏風に弥彦の桜「春秋」を描いた大作である。「春」は、満開の桜の大木を一本、六曲の中心に置きほぼシンメトリーの構図を取り、画面いっぱい溢れんばかりに淡いピンクの花が咲いている。
 「秋」は、複数の木々を遠近法的に配置することで、色彩では金地に負けてしまいそうな紅葉に形態の面から変化をつけた動きのあるものとなっている。いずれも勢いがあり金地の装飾性によって幸せな雰囲気を与えてくれる作品である。「砂丘館」では斎藤の屏風絵を眺めながら茶会などの催しがある。


屏風絵「弥彦の桜・春」