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2005年10月27日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

表情豊か 画面の深い奥行き

信田俊郎新作展「光の影・光の場所」
(2005年10月28日〜30日 見附市・今井美術館企画展示室)


外山文彦(アートコーディネーター)

 一貫して「描く」こと、「絵画」であることにこだわりつづけている信田俊郎(しだ・としろう)は、現代美術系と目される展覧会への参加も数多く、現代アートの分野で語られることも多い。インスタレーションなど表現手法が多様化している現代において、絵画の現在性を追い求めることはたやすいことではないが、その点で信田の仕事は注目されよう。
 信田は、かつて新潟にあり先進的な活動で知られた「倉庫美術館」の広大な空間での大作展示、12カ月連続での個展「信田俊郎12ラウンド」など、エネルギッシュな活動ぶりが目をひいたが、同様に今回も意欲的な動き。「光の影・光の場所」という同タイトルの7月の個展からわずか3カ月、本展はその延長線上にあるが、大きくスケールアップされて、500号(クラス)の油彩の大作を新たに描きあげたうえでの新作展である。展示室のひとつの壁面にひとつずつの作品を置く。シンプルに構成された空間は、鑑賞者を温かく包み込むかのようで、「場」と一体となった提示となっている。
 いわゆる具体的な何かを喚起させるようなものが描かれているわけではなく、黄色やオレンジ色といった暖色を主体とした色彩が柔らかなグリッドで構成され、何度も色が塗り重ねられた画面には深い奥行きが生じている。豊かな表情が形成されており、絵画としての存在感が感じられた。