2008年1月


2007年12月の絵屋

2008年2月の絵屋

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2008年1月12日〜1月20日

企画 大倉宏

信田俊郎(しだ としろう)
■1953佐渡市赤泊生まれ。78年新潟大学教育学部美術科卒。在学中久保尋二、小町谷朝生、亀倉康之、長谷部昇、小磯稔各氏の指導を得、85年には故末松正樹氏と初めて会う。88年ニューヨーク近代美術館で見た主にバーネット・ニューマンの作品によってカラーフィールドペインティングの意味をはっきり知り、以後の制作の出発点となる。個展、グループ展等多数。

 

←「作品」 2007年 水彩、紙 20.5×22.5cm

一昨年(2006年)1月にも絵屋で個展をした信田俊郎さんが、今も水彩画の連作を描き続けている。彼の描く気力、持久力に私は感服し、信頼を抱く。
肝心の絵はどうか、とすかさず信田さんに聞かれそうだが、絵もいい。というかいい絵が、ある。なにしろ膨大な数だ。それらをひとつひとつ見ていくと、時折「おや」と思わせられるものがあり、そういう中に私がいいと感じる絵がある。しかしそれが信田さん自身がいいと思う絵と同じかどうかは、分らない。
区切られたリングの中で、水に運ばれた絵具と絵具が、パンチやジャブを繰り出し、よけ合ったり、もつれたり、回転しながらロープの中の世界を移動していくのが信田さんの水彩である。比喩がいつもスポーツになってしまうのは、これほど不定形に徹しながら、色や筆の動きが、色や動き以外のもの、つまりイメージを、見る側から誘い出さないからだ。その色や動きは、ますます澄み、美しくなってきた。
安易にイメージの世界に寄らないのは、信田さんの絵の特質であり、個性と言ってもいいだろう。それでも絵にどこか、イメージではなく、イメージの遠い、影のようなものが、一瞬よぎることがある。イメージとして補足しようとすると、もう見えないものの擦過(さっか)の音、あるいは匂いが私の目に、リングのさわやかな方形の外の、軟体で、じめじめして、めそめそしたりもするものの気配の雫(しずく)を、落としていく。もしかしたら事故のように零(こぼ)れてしまうのかも知れない、そんな一滴の、聞き取れないほどの音声が、けれど私は好きなのだ。(大倉 宏)


 

2008年1月22日〜1月30日

企画 大倉宏

漆山昌志(うるしやま まさし)
■1955年安田町(現阿賀野市)生まれ。愛知県岡崎市で石工修業。81年帰郷し漆山石像彫刻を開業。県内各地の寺社などの狛犬、石仏、石燈籠などを制作。88年から県展、芸展に石彫を出品。96、2000年県展で奨励賞。94、96年芸展連盟賞受賞。2000年二科展で特選。01、03、05、06年新潟絵屋で個展。

 

←「石像」 2007年 安田石 58cm

漆山昌志さんの新潟絵屋での個展は、これで5回目になる。漆山さんのお地蔵さんのような小さい石像は人気があり、いろんな方に買っていただいたが、それでもいつも全部が売れるわけではない。久しぶりに漆山さんの仕事場を訪ねたら、仕事場の前の庭の方々に、絵屋で会った記憶のある石像たちが置かれていた。風雨の跡を刻んだり、苔が付いたりして、すっかり周囲になじんでいる。絵屋で見た時より、なんだかずっと大人びて見え、引かれてしまった。これ、また並べましょうよと言うと、漆山さんは笑っている。
私が仕事場に着いた時、漆山さんは大きな、小学2、3年生くらいの背丈の、お地蔵さんを奥で彫っていた。正確には、衣紋のあたりに墨らしきもので、あたりの線を入れていた。聞くとそれはお地蔵さんではなく、アーナンダという釈迦の弟子で、一番悟りの遅かった人なのだという。つるんとした頭と、くりっとした目が可愛い。
近くの寺の依頼で作っている釈迦と十大弟子の一体とのこと。彫るため、釈迦の物語りなども聞いたり、読んだりしたという。アーナンダは「頭が悪い」弟子だったとのことだが、頭が悪いだけ、釈迦はアーナンダが可愛かったのかも知れないと、漆山さんの像を見て思ったりする。
最近彫ったという、手に蓮華を持った、結った髪が三方に飛び出しているレリーフがまた可愛い(思わず「三つ編み観音」と呼んでしまう)。可愛い、とばかり書いているが、漆山さんの像の愛らしさは、形ではなく石そのものの中からにじんでくるように思える。石もきっと頭が悪いのだろう。だから愛されて、底からあふれだす情も、その分深い。苔むして、愛らしさがさらに、しっとり深く輝くのはそのせいだ。(大倉 宏)

 

  


複数会場で展開したアンドシュ・プローデルさんの陶芸と写真の展覧会(11/12-20)。11/18(日)には別会場である絵屋の姉妹画廊<画廊Full Moon>においてギャラリートークを開催しました。当日はアンドシュさんの故郷のお話や茶道に興味を引かれたこと、禅の精神のことなど、作品の前を移動しながらの説明に皆うなずきながら聞き入りました。その後お茶をいただきながらの懇親会も和やかに美術談義で盛り上がりました。参加された皆さん本当にありがとうございました。  (いと)


絵屋便、DMの配達を担当する絵屋運営委員・田代のはみだし連載コラム 7

気をつけねば、それとわからないほどの小雨の中、愛自転車“走る粗大ゴミIII号”は、てってけ快調に走る。でも、なぜだか前方の坂井東方面が異様に暗い。小雨の粒もいつしか並の大きさに・・・。そのとき私は悟った。雨はやんだのではなく、雨雲が移動しただけだって事に。。(つづく)
タシロ…田代早苗(俳人・新潟絵屋運営委員)




   

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