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2000年7月1日〜10日
 

「梅」 ペン、紙
40.8×32.0cm
  

高良真木(こうら まき)■1930年東京に生まれる。東京女子大学に学ぶ。アメリカ・アラーム大学卒。1953年作家浜田糸衛氏らとともにコペンハーゲンの世界婦人大会に出席。フランス滞在、画業に専念。55年帰国。71年、73年、79年個展を開く(現代画廊ほか)。「野に帰ったバラ」(理論社)、「豚と紅玉」(アンヴィエル)など浜田氏の著作多数のほか、タゴール詩集(62年アポロン社)などに挿し絵を描く。

高良さんは人も絵も、直球投手である。
たとえば一本の木は、一個の真実だ。真実とは、いつもまっすぐに掴まなければならないものである。だから高良さんはまっすぐに、木に向かう。変化球を投げたり、タイミングをはずすなどというまねをしない。一方木の方は、真実である前に現実だから、向かってくる高良さんから身をそらしたり、いなしたり、渋面をみせたりもする。筆跡に響く独特の摩擦感は、この真実と現実の熱い格闘の痕跡なのだ。
美しい磁器が烈火から生まれるように、この壮絶な格闘の底から、高良さんの絵の気品、芳醇さ、暖かさは立ち上がってくる。人としての高良さんも相手の目をまっすぐ見てまっすぐ話す。この春久しぶりにその高良さんにお会いした。変わらない人柄に、揺るぎない大きな木に再会する心地がした。今はない「画廊たべ」での開催(83年)以来の、新潟での展覧会になる。     (大倉宏)




2000年7月12日〜20日
 
 


L'Apppel du Large
21.3×30.7cm

Jean-Francois Guerry
(ジャン・フランソワ・ゲリー)
■1943年スイスに生まれ、パリで育つ。スイス大使館の文化担当官として東京、ニューヨークで勤務した後、90年辞職しフリーの写真家となる。91年から新潟市に在住。ギャルリーワタリ(東京・90年)羊画廊(新潟・98年)、Arterage Modem Art Gallery(ウラジオストク・ロシア・99年)で個展。『週刊新潮』、新潟日報などに写真と文を発表。それらをまとめた『旅の虫』(新潟日報事業社)を本年5月に刊行。

新潟に住んで9年になるゲリーさんと、ときどき長話をする。ゲリーさんの話はきまって新潟市への厳しい批判になるが、聞きながら言葉の背後になにか違う感情のうごめきを感じることがある。人に定住民と旅人の二種類があるとすればゲリーさんは後者である。こういう人にとって、生きることはどこかここではない場所へ移動し続ける瞬間の中だけにある。生来の旅人が、好きでもない日本の一都市に釘付けされているとは、まったく何という不幸だろう。
そのゲリーさんが、数年前から新潟西港で撮りだした写真を初めて見た時は、胸を衝かれた。写っているのは船だが、それを見つめる写真家の目に目が重なると、翼を奪われた旅人の絶望と憧憬が、自分の感情として切々と感じられてくる。悲
惨や不幸からさえ、このような力を生み出す「表現」の酷薄で魅力的な魔法に、私は感動した。   (大倉宏)  




2000年7月22日〜30日
 

スミ、パステル 紙 56.0×76.0cm
 

涌嶋克己(わくしま かつみ)
■「♪ワックンはね、ホントは涌嶋克己と言うんだよ。だけど50歳の少年だから、みんなはワックンと呼ぶんだよ」1950年神戸市長田区に生まれ育つ。残念ながら新潟では誰も知らない? でも、テレビ番組の人気ドラマ「ロング・バケーション」でキムタクが着て話題を呼んだTシャツ「ガッツやKOBE」の作者といえばどうだろう。関西大震災では自宅が半壊、近くの高校に避難しながらも、大きな被害を受けた障害者小規模作業所の再建支援や、解体中のビルを囲む工事現場のフェンスに壁画を描くなどのボランティアを続ける万年少年。
   

98年の秋、神戸の被災地NGOの事務局を訪ねた時、なんとも元気のいいポスターやTシャツが目についた。「さすが子どもたちは地震にもめげずに凄いもん描いてるわ」と思った。ところがなんと作者は私と同じ50歳のオッチャン「わっくん」と知ってビックリ仰天! 翌年、縁あって実物の「わっくん」と会えた。少年よりも少年らしい感性でそのエネルギーは画集からはみ出し、自らも被災地でありながらそのバイタリティーは間違いなく「50歳の少年」作品は被災地の街角にあふれていた。
 今年の1月、再び神戸を訪ね出展を快諾してもらった。しかも、神戸の芸術仲間でつくる「アート・エイド・神戸」でやった 「ライブ・ペインティング」を新潟でもやってくれるというおまけがついた。とにかく見てほしい。ユーモアと元気がつくこと太鼓判!    (旗野秀人)

※7月22日(土)午後7時から、新潟市の新通保育園で有坂洋さんの演奏によるわっくんのライブ・ペインティングを開催します。詳しくは絵屋までお問合せください。



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