2000年10月

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2000年10月2日〜10日
 


「Balance Box」 2000年
ナラ材・オイルフィニッシュ仕上げ
W 88×H 150×D 47cm

(はしもと まなぶ)
■1967年千葉県に生まれる。90年東京芸術大学デザイン科卒業。在学中に千葉県美術協会彫刻部門会員となる。92年同大学院修了。93年東京芸術大学非常勤講師となる。93年ギャラリー銀(銀座)、95年ギャラリーU(目黒)、94・95・97年ギャラリーGK(銀座)で個展。96年新潟大学教育学部講師。98年新潟大学教育人間科学部助教授。現在に至る。

モノ作りに素材、技術、機能の追求は欠かせないが、これらに作り手の思考、心、感性、そして真摯な制作態度等々が融合されて、はじめて作品は昇華すると考える。いま造形表現の世界で無機質な作品が氾濫しているのはそれらの多くが欠けているからだろう。
そんな無味乾燥な造形からは脱却して、作品自体に素材感や存在感をもたせ、その空間自体を感じ楽しむ造形を目指しているのが橋本学氏である。企画展では、古来より日本文化に浸透している木材を用いて、既成のジャンルを超越した独自のアプローチから造形表現を行っている。例えば、照明効果や収納といった家具的な機能を基本的なコンセプトとしながらも、使い手はそのモノに触れ、視覚や触覚を通して豊かな体験ができる独創的な空間構成を提案した作品が多い。家具でありながら、単に物を納める道具ではなく、個性と個性がぶつかり合う確かな造形に観者は感動するだろう。 (小磯 稔)




2000年10月12日〜20日
 

「第四銀行住吉町支店」 2000年 木版画
26.3×36.2cm
 

小林春規(こばやし はるき)
■1953年新潟県水原町生まれ。幼時より木版画をはじめ、18才で初の個展後、京都の表具師の内弟子となり、表具の仕事を続けながら版画製作を続ける。90年新潟県笹神村に転居。70年より日本アンデパンダン展、平和美術展に出品。ほか個展、グループ展多数。

父親の手ほどきで3歳で木版画を始めた小林さんの刀技は、ほぼ名人の域に達していると私に見えるが、決して技巧が浮いては見えないのは、正確につりあう内容が絵にあるからだろう。平野や海を描いた風景は、自然の深みにひそむ不穏で混沌とした力、はげしい気を、感じさせる。気は、小林さんのなかから吹き寄せてくるものでもあるらしい。
一方で小林さんの鍛錬された観察眼は、自然のうつろいやすい、こまやかな表情をすくうことをわすれない。表層から深層へ、写真でいうと被写界深度のおそろしく深い目が、小林さんの刀とバレンに埋めこまれているのだ。
その小林さんが、新潟下町を歩きだし、描いたスケッチを版画にしはじめるという。生活の匂いが澱のように沈み、坦々とした時間が流れる(と私に見える)下町がどう映し出されてくるのか。ちょっと、待ちきれない気分がする。 (大倉 宏)




2000年10月22日〜30日
 

「ノクターン」 2000年
ドライポイント 22×16.8cm
  

涌井一朗(わくい かずあき)
■1960年加茂市生まれ。新潟大学教育学部卒。94年、個展(ギャラリー泉)。96年、「36枚のエッチングによる――樹展」(県民会館)。98年個展(ギャラリー紗衣)。同年、分水町の自宅に銅版画小屋完成。現在に至る。

涌井さんの作品をはじめて目にしたとき、「音楽」を感じた。それは1本の木をテーマにしたその作品が、どこかバタくさく、シューベルトの歌曲集にでも添えられる挿絵を思い出させたからかもしれない。
でもその後の作品をみていくうちに、そんな単純なことではないことに気づいた。画面の微妙な白と黒のせめぎ合い。光と影、水と空気の戯れの中に生まれたリズムの中にこそ音楽があるのだ。紙の上におかれた一点の汚点。それがいつしか木の葉の揺れに、水面のさざ波に転換されてゆく。絵画の魔法であり、モノトーンの魔力だ。決して版の大きな作品ではないのに、巨きな広がりと深い奥行きを感じさせられる。
これ以上言葉を重ねるのはやめよう。難しいことではない。画面の中に流れる静かな音楽に視線をゆだねればよいのだから。絵をみることの至福を感じさせる作品群に違いない。(田代早苗)

  

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