2000年11月

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2000年11月2日〜10日


渡部由春
「流れ」 1998年 55×23×35cm


小山素雲
「莫妄想」 2000年 45×35cm

渡部由春(わたべ よしはる)
■1945年安田町生まれ。69年独立し、地元の土で暮らしの器をつくりながら創作活動を開始。70年県展初入選、その後現代工芸展入選、県展奨励賞、芸展奨励賞、そして98年日展入選となった。日本現代工芸会会員、現代工芸新潟会会員、県美連会員。安田町在住。

 

 

 

小山素雲(こやま そうん)
■1954年頚城村生まれ。高校教員の傍ら、今井凌雪氏に師事し芸展新潟日報美術振興賞、読売書法展特選、日本書芸院展大賞、そして98年日展入選を果たす。個展開催は5回。読売書法展評議員、日本書芸院展審査員、県美連会員、雪心会会員。安田町在住。

3年前、渡部さんと小山さんは、わが安田町から同時に日展に入選した仲である。上野の会場に友だちと駆けつけてみた。工芸部門の奥まったあたりに渡部さんの入選作を発見、華やかで奇抜な作品が多い中で、その形や色合いは地味ながら存在感があってすぐにわかった。
映画「阿賀に生きる」のタイトル揮毫が縁の小山さんの作品も、山のような作品群の中から、これもすぐに見つけた。なんだか、とっても誇らしく、嬉しい気分になって、誰かに自慢したくなった。
次の年、日展入選記念展を地元の吉田東伍記念博物館生家で開催して気がついた。二人のいずれの作品も、阿賀に吹く風の匂いを東京へ運んでいってくれたに違いないことを。
そう、ここ町屋づくりの新潟絵屋でも、安田の風土が生んだ土のぬくもりと、書の緊張感を自慢してみたくなった、というわけ。    (旗野秀人)




2000年11月12日〜20日

immanent――内在するもの――
布製 30×20cm
 

佐藤裕子(さとう ゆうこ)
■1966年新潟市生まれ。88年第9回新潟県工芸会展NT21賞受賞。89年同展県知事賞受賞。90年MITO・10月展(水戸芸術館)。92年新潟市内にアトリエを構える。92年ART NAIF JYAPON(GALERIE EAVX)、BLOW IN THE WIND(新潟市美術館)ほか個展、グループ展多数。

佐藤さんの作品は「きれい」だ。カタカナで浅い「キレイ」ではない。漢字でメンドーくさい「綺麗」でもない。それを目にした時、思わずほっと口からもれてしまう「うわー、きれい」というつぶやきであり、感嘆だ。
佐藤さんの作品についてゴチャゴチャめんどうなことは書きたくない。佐藤さんの作品は「きれい」だけど冷たくない。「きれい」だけど弱くない。じめっとしてないけれど適度な湿り気。カラッとしてるわけではないけど確かな乾き。えてして彼女の作品は「母性」というカッコでくくられちゃったりするけれど、それで、火にも深い森にも変貌を遂げる佐藤裕子がわかった気になっちゃいけないと思う。
まず手にとって、触れて、使って、感じて欲しい。まだまだ年若いながら着実に作品を作り続けてきた人間の自信と技と――こう書くと気恥ずかしいけれど作品に対する愛と、その作品を使うであろう人への愛がちいさな箸置きひとつにも感じられる。
まず手にとってください。じわっとぬくもりが伝わってくるから。 (田代早苗)




2000年11月22日〜30日

「鳥」 木口木版画 11.3×11.5cm
  

小林寿一郎(こばやし じゅいちろう)
■1954年佐渡生まれ。82年より高橋信一氏に師事。86年佐渡「大慶寺」にて日和崎尊夫氏らと三人展。91・92年「版画期待の新人作家展」入選、93・94年「一陽展」。95年第50回新潟県展賞受賞・無審査作家となる。96年「明日への道しるべ展」(高知県)、99年味方村、福島県郡山市にて個展。現在佐渡農業高校美術講師。佐渡版画村会員。

晴れた夜空には引力がある。ぼーっと眺めていると、その闇の底にぐいぐいと引っ張られて、昼間の由無しごとなどどうでもいいような心持ちになってくる。自分が肉を持ち、今ここにひとりで立っている。充分ではないか。夜の内省とは感傷的なもんである。
初めて小林さんの作品を見たのは、「鳥の歌」という店でのこと。明るい照明と少々の酒、気軽なお喋りに囲まれていながら、私は少し緊張してしまった。墨一色の闇にわき上がる一刀一刀は、小さな言葉をあわあわとつぶやきながら瞬いて、闇の深さを際だたせる。声高ではない。クールですらある。でもそれは、激しい熱量を秘めた冷たさだ。
あ、落っこちる、と思った。これは手に持つことができる夜空だ。夜空を切り取ることなどできない。だから、私は小林さんの作品に目眩のようなものを感じるのかもしれない。          (上田浩子)


      

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