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2001年2月2日〜10日


カラー 24.3×16.3cm

中村 脩(なかむら おさむ)
■1957年生まれ。新潟県出身。(社)日本広告写真家協会(APA)会員。20年間に渡り新潟県内の風景写真を撮影。今までに「尾瀬風景写真展」、写真展「風のある風景」、鼓童写真展「たたく」、写真展「雪降る越後の幻想風景」、「四季の光景」写真展、ほか写真展を多数開催。

目に見える景色という意味で普段なにげなく発している「風景」という言葉には、目に見えない筈の「風」という字が使われている。「風光」も然り。不思議だ。困った時の広辞苑。なぁんだ、「風(ふう)」にも「自然のけしき」という意味があるではないか。一旦は納得したものの、目に見えぬものに「けしき」の意味を与えたことへの疑問は残ったりして、やはり不思議。
中村さんが撮る写真は、時としてその目に見えないはずの「風」が写っていて心惹かれる。風景の美しさをそのまま印画紙に定着させることは存外に難しい。プロ・アマ問わず、そのことに腐心している写真家は掃いて捨てるほどいるが、それはただそれだけのこと。中村さんのように「美しい風」を撮る人は稀なのだ。比べてみればすぐに判る。一方は、まるでモデル撮影会で撮ったような風景写真。今日はカワイイ娘がいましたか?
特権的な目を持った写真家は例外なく孤独である。そうでなければ「美しい風」など見える筈がない。ひとり、風(かぜ)にさらされて立つ身の心細さと、風(ふう)に抱かれてある夢見心地の間の振幅。中村さんにしか見えなかった至福の風が、きっと絵屋の壁を飾ってくれる。      (村井 勇)




2001年2月12日〜20日

「WATERCOLOR-205」
1999年10月 水彩、紙 23.1×23.2cm
 

吉田淳治(よしだ じゅんじ)
■1951年愛媛県宇和島市生まれ。70〜76年東京で、以後は宇和島で制作。81年パリに1カ月滞在、イタリアに旅行。現代画廊(東京)、べにばら画廊(宇和島)、始弘画廊(東京)、ギャラリー小蕪亭(長野)などで個展。ほかグループ展多数。 99年『吉田淳治水彩画集』(三好企画)を刊行。

※12日には吉田淳治さんが新潟絵屋に来られます。

吉田さんの近作を見ていると、心の深い部分がさわぎだす。
水彩画は絵の具を水で溶く。その水という物質の不思議な作用。形がないのに他のモノを吸い、走らせ、裂き、衝突させ、まぜあわす。吉田さんの画面のあらゆる場所が、今は蒸発して消えた水の痕跡で、きらめいている。
まるで水の魔法に、絵の成り立ちのほとんどを委ねさえするように見えるのだが(実際にはそれは大変高度なコントロールを必要とする)、そのことで吉田さんの絵は、むしろ多くを得たのではなかろうか。独特の重みと浮遊感を染み込ませた、美しい芳醇な色のドラマのむこうから、なぜか私の行ったことのない、吉田さんの住む宇和島のどこかふわっとした空気が触れてくる。そんな吉田さんの個性を越えたものまでが、絵に流れ込み、息をはじめている。
心をさわがせるのは、そうしたとらえがたいものの気配、絵の水底からにじんでくる、ささやきのような、ざわめきだ。          (大倉 宏)




2001年2月22日〜28日

相田諒二 「本町12番町」 1990年

相田諒二(あいだりょうじ)■写真家。1947年新潟市生まれ。75年相田スタジオ設立。95年個展「見慣れた街の光景より」(北陸ガス・ガスホール)を開催。

勝又潔(かつまたきよし)■デザイナー・画家。1954年新潟市(元黒埼町)生まれ。昨年より新潟日報家庭欄にカット「新潟しもまち散歩」を掲載。

兼松紘一郎(かねまつこういちろう)■建築家・写真家。1940年東京生まれ。日本建築家協会(JIA)関東甲信越支部保存問題委員会前委員長。昨秋新潟を訪れた折、ハーフサイズのオリンパスペンで撮った連作が「新潟下町流歩抄」。

小林春規(こばやしはるき)■版画家。1953年水原町生まれ。二年ほど前より下町通いを始め、昨年10月木版画展「新潟下町界隈」を絵屋で開催。

村井勇(むらいいさむ)■写真家。1961年東京生まれ。昨年から新潟絵屋階上にアトリエを構え、9月下町を撮った写真展「泪目小路の猫」を絵屋で開催。

新潟市の目抜き通り、柾谷小路の川下側を下町(しもまち)と言う。もっとも、坂内小路より下手だとか、本町14番町の旧遊郭が下町なんだとか、実際は諸説紛々で、輪郭がいっこうにはっきりしてこないのが下町の特徴でもある。
ともあれこの一画、都心に近いのに、木造の町屋や蔵、戦前の洋風店舗が多く残り、細い路地(新潟では小路という)がめぐり、うねった道が方向感覚を狂わす、まことに不思議な場所でもある。あらゆる面での輪郭不明確も、実は長い歴史の中で消長してきた地域だからだろう。
かように曖昧な一方、ほかの地区にない独特の匂いがある。この下町を今回は3人の写真家、そして画家、版画家の5人の目という「窓」越しに眺めてみたい。会場の新潟絵屋も下町のど真ん中。展覧会を見て町に出て、今度は皆さん自身の6人目の目とつれだって、冬の下町を歩くのも楽しいのでは。                  (大倉 宏)


   

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