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新 潟 絵 屋 “こ ど も” 月 間

シブい企画が多いと言われる新潟絵屋。来廊者の平均年齢が高いのはそのせい?ということで、9月は年少の方々にも楽しんでもらえる“こども”月間を企画してみました。二人の絵本作家(版画家/画家)の福知伸夫さん、片山健さんの仕事と、写真家田中栄一さんの“Baby”シリーズを紹介します。会期中にはそれぞれ作家もいらっしゃいます。ぜひ親子でおいでください。
 

 
福知伸夫
「ひとつひまわり」
(小長谷清実・文:福音館書店)
田中栄一
“Baby”シリーズ
片山健
「おやすみなさいコッコさん」
(福音館書店)




2001年9月2日〜10日

  

福知伸夫(ふくち のぶお)
■1968年、東京に生まれる。武蔵野美術学園版画家卒業。その後、多色刷り木版画の技法を好んで、創作活動をしている。91年JACA日本イラストレーション展特別賞受賞をきっかけに、イラストレーションの仕事を開始。絵本の仕事には『ひとつひまわり』『ジャッカルとトラ』(以上「こどものとも年少版/福音館書店)、『ぱかぱか』『とってください』(以上「こどものとも0.1.2.」/福音館書店)がある。新潟展は98年の個展(青山ピンポイントギャラリー)以来となる。
 

福知伸夫は「版画自体の持つ力」「版が何かをしてくれる」という話し方を好んでする。確かに福知の技法は、黒い輪郭線が力強く訴えかけてくる“主版法(おもはんほう)”であり、多様化した現在の技法からすると、趣を異にしている。また、制作に用いるのが、水性絵の具であり、和紙であり、馬簾(ばれん)であるという意味からしても、福知の仕事は浮世絵など、日本の伝統的な木版画の流れとして見てとることもできるはずだ。
ここ数年、絵本の仕事にとりくんできている福知は「絵本づくりをしてみて、読者からの反響がすぐ伝わってくることがとてもいい刺激になっている。作った者とそれを受けとめた人との関係が、かなりはっきりしてくるので、それが面白い」と語っている。今後、【子どもに向き合う仕事での福知】と、【もっと広い枠での福知】とが、どうもつれあい、どうつながっていくのか…それも大変興味深いところである。(佐藤 滋)

※2日(日)は福知さんが絵屋にいらっしゃいます。
  



 


2001年9月12日〜20日

モノクロ 15.4×23.2cm

 

田中栄一(たなか えいいち)
■1954年熊本市生まれ。東京造形大学映像科卒業。世界各国を旅して撮影した風景や、人物、キラウエア火山などの作品を発表。91年、オーストラリア・フレーザー島の砂の世界を大型カメラで捉えた作品は、クイーンズランド州立美術館にも所蔵されている。熊本市在住。
 

「旅の写真家」の姿を思い描いてみる。世界各地の老若男女の姿やその喜怒哀楽の表情を撮ったり、地域の美しい町並みや独特な風俗風習を撮ったり、豊かな山河や珍しい動植物などを写真に撮ったりしながら旅を続ける孤高の人……そんなところが一般的かな。
田中栄一さんは大学3年生の時にアルゼンチンに行ってから、南米、北米、アジア、アフリカ、ヨーロッパ、オセアニアと訪ねた国々は五大陸におよんでいる。訪ねただけでなく、撮影もし、作品も発表し続けているのだから、田中さんは間違いなく旅の写真家だと思うが、先に挙げたようなものを被写体に選ぶことはこれまでほとんどなかったようだ。20年以上も続けてきた旅の先々で選んだ被写体は、砂丘や岩山や溶岩跡など、美しいといえば美しいが、およそ人が好んで出かけて見に行こうとはしない物ばかり。どちらかといえば、ウエットではなくドライな視線で、生よりは死のイメージを好み、有機物よりは無機物を対象に選んできたのが、田中さんの作家としての指向および嗜好なのだろう、と思う。その田中さんが、ハワイ島に住むある赤ん坊を写真に撮った。赤ん坊といえば、有機物の固まり。死から一番遠いところにあるような存在に思える。その何に惹かれてレンズを向けたのか。それを知りたいのは、きっと私だけではないはず。(村井 勇)
   




2001年9月22日〜30日

「虫待つ蟇」 2001年
水彩、紙 27.0×39.4cm
 

片山 健(かたやま けん)
■1940年東京生まれ。画家、絵本作家。主な絵本に『おやすみなさいコッコさん』『だーれもいない だーれもいない』『コッコさんのおみせ』『コッコさんのともだち』『コッコさんのかかし』『タンゲくん』(講談社出版文化賞絵本賞)『きつねにょうぼう』(長谷川摂子文)『たのしいふゆごもり』(片山令子文)『ぼくからみると』(高木仁三郎文)『おなかのすくさんぽ』(以上福音館書店)、『どんどん どんどん』(文研出版)など。画集に『美しい日々』(幻燈社)『いる子ども』(パルコ出版)『夜の水 朝の水』(架空社)などがある。
 

片山さんの絵本「コッコさん」シリーズは、水彩画で描かれた日本の絵本の傑作だ。夢は、小さい子にとっては、まだ心と体ぜんぶをつつむ水のようなものだが、その水のようなものをそっくり、片山さんは文字どおり「水の絵具」で掬う。「ねむらないもん」をくり返す幼い女の子コッコさんを、ゆっくりゆっくり沈めていく水。その冷たさ、ひろやかな深さ、やわらかく濡れた陰影。水の夢の水の、手ざわり。
この手ざわりは泥絵具や油絵具や色鉛筆などでの絵本にも共通する、片山さんの刻印だ。
水に泥に、べとべとしたものに、さわるだけでドキドキする子がいて、その子と目を合わせ、言葉を通わせる大人がいる。片山さんのなかの、そんなふたりの会話から生まれたのが「コッコさん」シリーズなんではなかろうか。と、子と読むたび、ふたりがまるでひとりになるような気のする私は、思う。(大倉 宏)
 
片山さんを新潟にお迎えして、名作「コッコさん」シリーズの誕生のお話や 子どもや大人のことなどについて、インタビュー形式でうかがいます。
お気軽においでください。

■日時:9月22日(土)13:30〜15:00
■会場:赤沢保育園(新潟絵屋より徒歩2分)
■定員40名(定員になり次第締め切らせていただきます)
■参加費無料
■9月15日までに絵屋にお申し込みください。


 
   

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