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2002年1月22日〜2月3日

「共性」 2000年
油彩、キャンバス F4
 

渡邊 博(わたなべ ひろし)
■1938年新潟生まれ。熊谷喜代治にデッサンを学び、後笹岡了一に師事。日展、光風会に出品し66年光風会会員となるが、68年退会。以後は紀伊国屋画廊、美術ジャーナル画廊、現代画廊、ギャラリーXepia、ギャラリー銀座汲美(いずれも東京)などで個展により発表。新潟での個展は91年新潟伊勢丹に続き2度目。

1980年代の後半ころ、はじめて見た渡邊さんの絵には、日本人形の少女や陶磁器、鏡台、経文の文字らしきものなどが浮遊していた。その後の十数年でイメージは背景のやわらかい暗がりに吸い込まれ、見えなくなった。けれど消えたのでないことは、完全抽象になった絵から流れてくる気配でわかる。
旧い不可視の日本に戸口を開放することで、渡邊さんの絵は見えにくさ=抽象の外観を得た。その暗がりのなかは奥深く、複雑で、心地よい。神社の境内のくすの大木の陰や、路地や、町家のほの明るい通り土間のように。
イメージの水没はしかし、渡邊さんの絵が「旧い日本」に生かされながら、そこからのゆるやかな自立をもはじめたことを物語るだろう。ひさびさに渡邊さんの絵を、近作を間近に見られるのが、とても楽しみだ。      (大倉 宏)


      


2002年2月5日〜14日

1945年2月18日
鉛筆、紙 19.9×24.5cm

1945年4月5日
鉛筆、色鉛筆、紙 19.8×23.9cm
  

末松正樹(すえまつ まさき)
■1908年新発田市生まれ。青年時代舞踊を学ぶため渡欧。大戦中のフランスで抽象絵画を描きはじめる。帰国後は自由美術家協会、主体美術協会で活躍。フランス美術の紹介、映画字幕の仕事でも知られ、マルセル・カルネの名作の邦題になった「天井桟敷」の訳語も創造。69年学園紛争時の多摩美術大学で学長代行をつとめる。91年新潟市美術館、92年板橋区立美術館で回顧展開催。

5年前に88歳で亡くなられた末松正樹さんは、舞踊の研究で訪れた欧州で第二次大戦のはじまりに遭遇し、戦中をフランスで過ごす希少な体験を持った日本人だった。独軍占領下の南仏マルセイユで領事館員として働くが、1944年連合軍の進攻で脱出。スペインに抜ける直前、国境近くの町ペルピニアンで捕まり、1年半近く抑留生活を送る。
抑留といっても部屋はホテルの個室、市中にも時間限定で出られたから、思いがけず得た人生の休暇のようでもあった。末松さんはそこで紙と鉛筆で素描をはじめる。群舞する人の絵だった。絵のなかで、せめて踊りたかったのだ。けれどくりかえし描くうち人の輪郭は徐々に、やがて急速にほどけ、からまり、もつれあっていく。舞踊を描くのではなく、まるで絵自身が踊る喜びに目覚めて、体を自由に動かし始めたかのように。
戦後日本で抽象絵画を一貫して描き続けた末松さんの、重要な出発点となったこのペルピニアンの素描から20数点をお借りし、真冬の絵屋の壁に掛けてみよう。絵のかたわらに記された言葉は、自己という階段を一段でも上へのぼりつめることを願う、息苦しいほどの思いを伝える。
それにしても鉛筆と紙の接触が奏でる、優しく穏やかなトーンは意外なほど。抑留を解放と言うのは妙かも知れないが、これほど集中し自分だけに向き合える時間は望んで得られるものではないだろう。苦難の名でおとずれた幸福。青年の身体にしみとおっていった喜びが、ひそかな低音のようにひびいている。    (大倉 宏)
  



 


2002年2月16日〜28日

三鍋光夫(みなべ みつお)
1951年生まれ。建築家。工芸にも造詣が深く数多くのガラス作品を創作。新潟市在住。

柳 利枝(やなぎ としえ)
中里村生まれ。繭・アートランプ作家。十日町市「繭ほたる悠々」にて創作活動を続ける。中里村在住。

山崎大輔(やまざき だいすけ)
1978年村松町生まれ。照明デザイナー。2000年新潟デザイン専門学校卒。フカミ照明(株)勤務。白根市在住。

山谷秀昭(やまたに ひであき)
1954年生まれ。プロダクトデザイナー。95年デザイン集団「ボッテーガ・ジラソーレ」ブランド設立。ミラノと新潟で活動。下田村在住。

■出品作家(五十音順)
石倉まみ(いしくら まみ)
新潟市生まれ。ステンドグラス作家。90年「日本ガラスアート展」佳作受賞。「未来工房」主宰。東大和市在住。

大関 博(おおぜき ひろし)
東京都生まれ。モザイク作家。94年「あかりオブジェ展」入選。環境美術スタジオ「ARTLIUM」主宰。東大和市在住。

木本さちこ(きもと さちこ)
1971年生まれ。陶器で「あかり」を創作。97年より阪神各地で個展開催。西宮市在住。

坂上和則(さかうえ かずのり)
1961年加茂市生まれ。建具職人。違う分野も模索中。加茂市在住。

清水亮子(しみず りょうこ)
東京都生まれ。陶芸家。辛島詢逸氏に師事。82年新潟市、95年には新発田市熊出に築窯。新発田市在住。

鈴木政彦(すずき まさひこ)
1967年加茂市生まれ。建具職人。新しいものを創造しています。加茂市在住。

中矢澄子(なかや すみこ)
鳥取県倉吉市生まれ。88年「工房花さかじいさん」設立。98年山里にアトリエを移し、蔓のあかりを作り始める。新潟市在住。

夜、高層の集合住宅を見上げると、様々な「あかり」を感じることができる。フレームで切り取られたその奥には、千差万別の多様な価値観の元での生活が繰り広げられてるのだなあといつも感じている。
「あかり」はただの光源体では無い。シェードや灯体により作られるあかりは光を装飾し、バランスや美意識を強調しその場の空気を作る。そんな、場の空気をも替えてしまうほどの「あかり」を、プロダクトデザイナーはもとより、工芸家、建築家等11名の作家が、多様に表現する。とかく暗い話題の多い昨今、様々な「あかり」によって、心のどこかがホッとしたり明るい気持ちになれるよう、新潟の冬を照らしたい。(伊藤純一)


   

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