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2002年5月2日〜15日
  

「よしおくん」 2002年
ガッシュ、紙 50×38cm

スズキ・コージ(鈴木康司)
■1948年静岡県浜北市に発生。物心がついた頃から絵を描き始め、現在に至る。68年新宿歌舞伎町の路上にて初個展。サイケデリックフーテンヒッピー生活の中で才能はさらに磨かれ、「イラストレーター」の名称が世に出た頃にデビュー。創作絵本、画集、マンガ、映画や演劇のポスター、舞台装置や衣装、店の看板やマッチ箱、壁画など、その才能はとどまるところを知らず、多くのマニアックなファンを持つ。近年は自ら出演もするライブもこなし、好評を博している。東京都在住だが落ち着くことはなく、中南米、東南アジア、東欧などを行ったり来たりその幅広い活躍にはそれこそ目が離せない。別名は“コージズキン”。絵本に『エンソくん きしゃにのる』、『ガラスめだまときんのつののヤギ』(訳・田中かな子:以上福音館書店)、『やまのディスコ』(架空社)、『サルビルサ』(ほるぷ出版)『さんざんまたせてごめんなさい』(童心社)、『ウシバス』(あかね書房)など。 エッセイに『てのひらのほくろ村』(理論社)、画集に『ゼレファンタンケルダンス』(文・別役実、架空社)『ハンガリアン狂詩曲』(リブロポート)など。片山健さんの絵本『おばあさんの青い空』(偕成社)に登場する“コジさん”はスズキコージさんがモデル。
 
昨年のもうおおみそかに近いころ、“GYPSY COHJIZUKIN BAND LIVE ! 忘年会パーティ”なるものに参加した。開演より少し早めに会場に着いたので、リハーサルを眺めていたら、コージさんが私を見つけてくれて「やあ」と挨拶してくれた。そのときのコージさんはジプシー(ロマというべきか……)女に扮していて、胸にふくらみは入れ、鼻はいわゆる獅子鼻の形状にしていて、ともかくかなり妖しげであった。そのことをコージさんにどう伝えるか考えているうちに、コージさんが「いいんです。ともかく僕は僕なんですから、楽しんでいってください」と言ってくれた。
1948年生まれ、私とおない年。変な言い方になるが、自分自身をさらけだすのにちょっと臆病になる世代なのに、彼は彼自身でいる。まずそのことに「凄いな」と感心した。
初めてコージさんの作品に出会ったのは『はずかしがりやのおつきさん』(1977年「こどものとも」258号)。ロシナンテという名前の馬とおつきさんの洒脱なやりとりにグッときた。息子が5歳、絵本と出会うにはちょうどいいころだった。この人は独特の雰囲気を持つ人だなあ、と思った。そして、青い筆づかいが美しかった。やがて私が担当していた月刊誌の表紙をお願いすることになった。(「母の友」1993年〜1994年)そのときコージさんは「僕の絵は好きな人は好きになってくれるけど、万人向きではありません」と言った。でも、そもそも万人向きの絵ってなんだろう? そのころから少しずつおつきあいが始まった。エラぶらない、とてもくつろげる人だな、 と思った。
そして今、コージさんはまるで変わらない。絵に音楽に、そして旅に……。著者紹介にもあるが、“東京都在住だが落ち着くことはなく”生きること自体を表現にして、大切なのは今だよ、と発信し続けている。世界人権宣言50周年記念の際にコージさんが、アムネスティにあてたメッセージ。「権力を持たない小さな人々がのびのびと暮らしていけるような……アムネスティのパワーを期待します」。
そう、こんなアーティストに出会えることこそ幸せというものではないだろうか。(佐藤 滋)
 
特別企画「スズキ・コージのサルビルサ」
ブレーキのないレーシングカーのように、摩訶不思議なイメージをエネルギッシュに疾走、快走させる画家スズキ・コージさんのフリートークです。

日時:5月5日(日曜日・こどもの日)13:30〜15:00
会場:新潟市美術館講堂
参加費:500円(絵屋会員400円)
※直接会場にお越し下さい。なお幼児はご遠慮下さい。


 
2002年5月17日〜30日
  

「ちゃんちゃんこちゃん」
布、フェルト、毛糸、ビーズ
 

土橋とし子(つちはし としこ)
■1960年、和歌山県生まれ。浪速短期大学デザイン美術科卒業。デザイン事務所「Bグラフィックス」を経て、現在フリーのイラストレーター。雑誌、書籍のカバー、イラストルポなど仕事多数。著書に著書に『オリオン画報』『極楽さん』(晶文社)『よいこの玉手箱』(チャンネルゼロ)、絵本に『かぼちゃばたけ』(文、片山令子)『ものものずかん』『ありのあちち』『めちゃくちゃ るすばん』(福音館書店)など。
  
5月17日(金)に土橋さんが絵屋にいらっしゃいます。
土橋さんの絵本『めちゃくちゃ るすばん』(1999年「こどものとも年少版」268号)は、図書館で借りてきて以来、家の人気絵本だ。4歳(当時)の子はそらで覚え、声にだして読んでいる。いつも一緒のツッチーさんに、おめかししてでかけられた猫たちが泣き、立腹し、家中をめちゃくちゃにする。人形をいじめ、本を踏みつけ、隠していたお菓子を食べる。「やっちゃえー、やっちゃえー」と、読む声が気持ちよさそう。
TVの「やんちゃるもんちゃ」っぽいけど、この猫たちの悪は、ずっと心にしみる。ドアの開く音に「うれしいけれど しかられそうで ねたふり」するあたりも、わかるなあ。もちろんツッチーさんはかんかんになり、鬼のような顔で追いかけます。
悪いことは、いけないこと。でも、それは時に関係のひとつの不可欠の表現で、しかもいけないことだから、やっちゃうときには、はげしい解放感がある。という真実をこんなにストレートに描いた幼児絵本は珍しい。日本の絵本の貴重な財産とさえ感じるのだけれど、まだ単行本になっていないのは本当に残念だ。
土橋さんの絵は線はきちんとしてきれいで、色はカラフル。とてもおしゃれだ。そういう「良い子」の背後に、でも魅力的な「悪い子」の気配が確実にある。暗さ、野暮ったさ、割り切れない感じなどと言ってもいい。絵が丁寧な分だけ、それらが濃縮された不思議なテイストとなって心の舌をくすぐる。
明るいことが善だった80年代に、土橋さんはイラストレーターとしての才能を開花させ、大阪から東京へと場所を移して活動を展開したようだ。数年前、また関西に戻り、今はなぜか古都奈良に住んでいる。去年の春、用事で奈良に行った折りにお会いした。近鉄奈良駅に自転車を引いて現れた人は、絵本のツッチーさんそっくりのいでたち(そんな気がしました)。喫茶店では個展の話から奈良の寺社のまつりの話になり、春日大社の若宮おん祭がどんなにすごく真っ暗かとか、法隆寺西円堂追儺式(節分)で帽子を焦がした話など伺った(どこかライブの感想を聞いてるようだったのが印象的)。展覧会には人形を作りますと言われた、その人形がDM用にまずひとつ、送られてきた。
見る者を一目で混乱させる、あなどりがたい微妙な力がありますねえ。一体どんな展覧会になるんだろう。ドキドキする。         (大倉 宏)
 

   

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