2002年6月

2002年5月の絵屋

2002年7月の絵屋

  新潟絵屋あんない 作家INDEX Blog  


2002年6月2日〜10日
  


絵織部(彫絵)汲出と赤織部汲出
 
小山智徳(こやま とものり)
■陶芸家。1953年長野市生まれ。74年舞踏家土方巽氏に師事。「白桃房」で表現活動を行う。78年美濃大萱の陶芸家瀧口喜兵爾氏に出会い、焼物を始める。80年長野県戸隠村に登窯を築窯。戸隠窯「土包子」工房と命名し、織部を焼き始める。しぶや黒田陶苑(渋谷)、ギャラリー壹零參堂(鎌倉)、松葉屋(長野)、伊勢丹(新宿)、小田急(新宿)、東急(長野)など各地で個展。長野県戸隠村在住。
■花入、水指、茶碗、汲出、香合、香炉、陶硯、向付、酒器、片口、食器等100余点を出展。
桃山後期、美濃の陶工たちが新しい焼物を創作する。唐津式の登窯で焼かれ、草木を思わせる鮮やかな緑釉、大胆で巧みな鉄絵文様、多様な器形などの特徴を持っていた。後に織部焼と総称されるこれらは、斬新な意匠でその時代が求めた感性と見事に合致していく。
小山智徳は、桃山文化の黄金期に、使い手と作り手が互いに高め合い、嬉々として生み出した織部に魅せられ陶芸を志した。作陶半分、読書半分。半工半読で織部の解読と創作を長年続けている。
勿論、それは古陶の写しや再現が目的ではない。織部の構成要素を解体し、それぞれを丹念に読み解くうちに、自分が何を感じて再構築するかという手法なのだ。例えば、汲出に施された彫絵(掻き落とし)のモチーフは愛らしく、小山らしい破調のサンプリングだし、瀬戸黒や黒織部は、小山の内面的な躍動感を秘めたぬばたまの黒だ。
小山は、「暮らしの中で織部の思想的背景を辿り、思索しながらも土や火との対話に現を抜かしていたいのだし、僕の趣味的要素がそこに少しづつ投影されてゆけばいい……」と語る。小山は趣味性を甘く見ない。趣味能力は、人間の自由な反応の全てだからだと思う。(伊藤信行)

 


● 

2002年6月12日〜20日
 

Madhat Kakei(マドハット・カケイ)
■1954年イラクのキルクーク生まれ。バグダッドとマドリードのサン・フェルナンドス美術学校に学ぶ。イラン・イラク戦争の最中、ユーゴ、スペインを経てスウェーデンに滞在し、同国市民権を獲得。86年の初来日後、千葉とストックホルムのアトリエで制作。アラビアンネームの「マドハット・M・アリ」名で発表していたが(洲之内徹『さらば気まぐれ美術館』にはモハメッド・M・アリで登場)、現在はクルド人の宗教であるカケイ(ゾロアスター教)名に変えている。
昨年アフガニスタンのニュースで、ことの悲惨さと別に、テレビに映しだされた人々の顔に感動した人が多かった。高貴という忘れていた言葉を思い出したという人がいた。
アフガニスタンの隣の隣のイラク生まれのマドハット・カケイさんは、バグダッドとマドリードで絵を学んだ後、徴兵されてイラン・イラク戦争に従軍。前線で戦わされるのが、両国ともカケイさんと同じ山岳地帯の少数民族クルド人であるのに嫌気がさして脱走。今はスウェーデンと日本を拠点に、欧州各地と日本で個展で絵を発表している。
そのカケイさんが描く日本人の顔に、私はテレビの中のアフガンの人々を思い出す。顔立ちというより漂わす空気に、不思議な高貴さを感じる。私たちの中にあるのに、失くしたと思いこんでしまったものが、カケイさんの目には見えるのだろうか。(大倉 宏)
 
  
2002年6月22日〜30日
 

作者:若杉 勝 撮影:井上隆雄

第二びわこ学園(だいにびわこがくえん)
■滋賀県にある重症心身障害児(者)施設。長い人は40年間そこで暮らしている。人の心を悩ませ、和ませることを得意とする人々であることはまちがいない。

オープニングイベント
6月22日(土)

●●● 9:30〜12:00
体験教室「粘土にさわってみよう」
会場:新潟市美術館実習室〈無料〉

●●● 14:00〜15:30
スライド・トーク「にゃにゅにょの世界」
田中敬三(第二びわこ学園粘土室担当)
大倉 宏(美術評論家・新潟絵屋代表)
小林 茂(ドキュメンタリー映画監督)
会場:新潟市美術館講堂〈資料代500円〉

圧倒的な粘土の塊。粘土に情感をぶつけて、固めて、殴りつける。表面のギザギザはその日履いてきたサンダル底の文様であるらしい。寝た状態のまま左足一本で粘土をこねた棒が丸められている。黄金の左足と人は呼ぶらしい。粘土を食べ、時には体に塗りたくりながら、作られ焼かれた粘土群。それを「土と遊んだ残りカス」と粘土室担当の田中さんが言う。
第二びわこ学園とのつきあいも28年。いま、彼らの「存在」と向き合うドキュメンタリー映画「わたしの季節」(仮題)を撮りたいと思う。そして、なんとしても彼らが生きてきた証のような粘土作品展を新潟で開きたくなった。彼らの作品には「生命力の不思議」がにじみ出ているように思えるのだ。 (小林 茂:ドキュメンタリー映画監督)
 

   

2002年5月の絵屋

2002年7月の絵屋

  新潟絵屋あんない 作家INDEX Blog