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2003年6月2日〜6月10日
  

漆山昌志(うるしやま まさし)
■1955年安田町生まれ。愛知県岡崎市で石工修業。81年帰郷し漆山石像彫刻を開業。県内各地の寺社などの狛犬、石仏、石灯籠などを制作。88年から県展、芸展に石彫を出品。96・2000年県展で奨励賞。94・96年芸展連盟賞受賞。2000年二科展で特選。2001年新潟絵屋で個展。
 

←石の地蔵たち

写真を撮りに安田の漆山さんの仕事場に行った日は、雨だった。
石や機械やいろんなものが、両側にごちゃごちゃ置かれた通路の奥の、波板一枚で囲われた数坪ほどの場所で、面を被った人が石を削っている。
これしかないですよ、と何かの台の下から抱えだされた鑿跡の新しい石の地蔵たちを、通路にそのまま置いて写真を撮った。
石工の仕事場、がぴったりの何の飾り気の無い場所に生まれた地蔵たちの、しかし何とふくよかで、かわいらしいこと。
そのほほえみは、でもこの場所とどこか、まさしく飾り気がないという点で似通っていると思う。
空調完備のアトリエでポーズをとる女の彫刻などとは違う、雨のにおいや通路を抜ける風のように、じかにふれてくるものに、ファインダーの中でみとれた。(大倉 宏)


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2003年6月12日〜6月20日
  

涌井欽也(わくい きんや)
■1936年新津市生まれ。処女作「さけ」が第17回県展奨励賞受賞。「北海の潮音」第30回春の院展初入選、「梅雨の華」第60回院展初入選。以降、春の院展21回、院展16回。90年より新潟日報「窓」の挿し絵を3年間連載。新潟市「NEXT21」ビルに江戸中期新潟全景の壁画を制作。96年新潟日報夕刊に「写生帳の思い出」を、97年読売新聞朝刊に「人形シリーズ 花遍路」を連載。02年より「木漏れ日」を連載中。出版物に「写生帳の思い出」がある。日本美術院院友。

←「笹川流れ」岩絵の具、板
  31.8×40.9cm  2003年

写真の花が薫ることも、風に揺れることもないようにモノトーンの絵屋便、いや印刷物は、どうしたって「作品」そのものを伝える事が出来ない。複製される過程の中でそのニュアンスは削ぎ落とされ、ただ「こんな作品があります」というお知らせにしかならないのだ。それでも削ぎ落ちた部分を伝えたくて文を書き連ねる訳だが、涌井作品の独特の味をどう表現しよう。
柔和で平明な画面は、この世ならざる世界が描かれているようにみえる。
追憶の世界、思い出の桃源郷めいた土地、あるいは夢でみた忘れられない光景のような。時間は静止し、光は時空を超えた彼方より穏やかに射し込んでくる。こう書くと儚く淡い懐古調の作品なのかと思われるかもしれないが、朴訥な筆は丹念にまぶたに浮かぶ色を岩絵の具に移し変えてゆく。
あやふやな今より、胸の内にある過ぎ去った時間が心に染み入ることがある。足早に過ぎてゆく時間の中で、私たちが忘れかけていた花々や風景が画面から微笑みかけてくるようだ。(田代早苗)
 
  
2003年6月22日〜6月30日
  
橘 三紀(たちばな みき)
■1941年両津市生まれ。69年大橋広治先生の知遇を得、師事。72年光風会展に入選、76年光風会会員に挙げられる。99年光風会退会、現在に至る。個展、グループ展多数。

←「少女」油彩、キャンバス
 
F8 2003年

橘さんには、まだ数度しかお会いしていないが、とてもダンディーな方だという印象。ダンディーというのは、さっぱりした優しさに、どこか筋の通った一刻さが包まれている場合に感じるもの(と私は思うのだが)。
その橘さんの絵の魅力は何といっても、画面をすぱっ、すぱっと走り抜ける、思い切りのいい線。そんな線に描き出される女たちは、ダンディーな人に出会った瞬間のように、心ときめかせ、生き生きと目や頬や口元を輝かせる。その輝きに照らされて色が、ほんのりと、明るくつやつやと、匂いだす。
この展覧会のために制作していただいたこの一年ほどの絵は、以前にまして、いい香りを馥郁と漂わせていて、うっとりする。絵の女たちにじっと見つめられると、私もなんだかいい男になったみたいで、どきっとする。 (大倉 宏)
 

E y a i n f o r m a t i o n
絵のある茶の間 「画廊たべ」を偲んで
田部直枝・追悼展
 前号でもお知らせしましたように、さる3月2日に田部直枝さんが97歳で亡くなられました。1972(昭和48)年から、95(平成7)年夏まで、新発田市西園町のご自宅の一画を改装して「画廊たべ」を開いて沢山の企画展を開催されました。展覧会では奥のお住いの部分まで開放されることも多く、床の間と囲炉裏のある部屋で、庭の緑や銀屏風の壁に飾られた油絵を眺めながら、田部さんに淹れていただいたお茶で、ゆったりした一時を過ごされた方も多いはず。日本家屋と画廊という今もなお異質な空間を、ひとつのものとしてさりげなく示して下さった心に残る画廊でした。
 その画廊たべを偲び、田部さんを追悼する展覧会を7月2日から20日まで、2会期に分けて開催します。Part1では画廊たべに飾られた絵や田部さんの書や手紙、絵などを、Part2ではゆかりの作家の方々の絵と、田部さんに寄せる言葉を紹介します。
 なお会期中7月6日(日曜日)には、新発田で田部さんを偲ぶ会も予定されています(詳しくは次号でお知らせします)。 (写真:明星敏江)
絵 屋 と ぴ っ く す
●この春から、中山佳奈恵さんと絵屋スタッフの越野泉さんが絵屋の企画委員に加わりました。
●4月29日、今年も絵屋の前で花絵を作りました(左写真)。図柄はお花畑で蝶を追う猫。分かるかな?
「損保ジャパンちきゅうくらぶ」(損保ジャパンの社員の方々の給与の一部を積み立てた資金で社会貢献しているNPO的団体に支援を行う組織)様からこの度支援団体の一つに選ばれ10万円の支援金をいただきました(新潟支店の今井英雄さんが申請してくださってのこと)。また故田部直枝さんの御遺族一同様より、故人に寄せられた篤志から30万円を絵屋にご寄付いただきました。厚く感謝申し上げます。


   

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