2004年2月 | |
|
|||||||||||||||||||
|
|
● | |
2004年2月2日〜2月12日 |
|
「pin」 2004年 銀、赤銅 |
阿部信子(あべ のぶこ) 阿部信子HP atelier NOVI |
絵屋の展覧会では、身につけるものを、自分の思うように自由に作りたい。そう言っていた阿部さんの作品を見て、あ、と思った。 ふわふわしているようでシニカル。クールじゃないけど、甘くはない。ぶつぶつと小さな声でなにごとかつぶやきながら、こちらの様子をじっとうかがっている、えーとこれは、そうだ、ムーミンにでてくるにょろにょろに似ている……。……はて。これはジュエリーなんだろうか。 ジュエリーって、もっと声高に自分を主張するものではなかったかしら。そうでなければ、いっそ人の体に寄り添って静かに息をしているような。これは、そのどちらとも違う。我が道をゆくというか、なんというか。よくよく眺めていたら、だんだん阿部さん自身に重なって見えてきた。 阿部さんは焼干子の愛好者である。洗濯したての足ふきマットに嬉しそうにほおずりし、セールがあれば勇んで出かける。そういうたくましい日常を生きているのに、しかし本人にはあまり生活感がない。茫洋としているようで、ところどころ唐突。素直かと思うと、とことん頑固。 金属はなかなか人の思い通りになりません。 しかし、きちんと向き合えば従順です。 私と似ていると思います。 ――阿部信子 なんだ、自分で書いているではないか。従順かどうかは別として。 彼女が生み出したものたちが、のびのびと絵屋の壁で呼吸して、思い思いにお喋りしてくれるといい。そして会場に足を運んでくださる皆さんには、実際に身につけてみていただきたい。ぼわ、とした生き物が、体に生えたような気分が、きっとすると思うので。 (上田浩子) |
|
|
|
2004年2月17日〜2月29日 |
|
栗田 宏(くりた ひろし) ←「聴く」 鉛筆、紙 872×572cm 2003年
|
|
栗田宏の絵は、強い印象のものから、静かな雰囲気のものまで、いろいろな表情がある。そのどれもが私を引きつける。一昨年の彼の個展で、作品を選ぶ時、飾る時、私は夢中になっていた。絵が心に入ってくる。私の中の何かと共振し、さまざまな波動を生み出す。その波動は、私を違う世界へ連れていくのだ。 その時の絵はほとんどが未発表の旧作だった。当時彼は自宅の庭に一人で築窯し、絵より焼物に熱中していた。 その陶器を見た時、私は驚いた。土の中から掘り出したのか、海の底から拾ってきたのか、火山の溶岩なのか。作意のなさが感じられ、迫力が漲っている。 今回の絵の中で、「聴く」(写真)には、強さ、畏怖、を感じるが、見つめていると、悲しさ、優しさ、親しみ、懐かしさ、など、たくさんの気持ちが湧いてくる。珠洲の風景を描いたものは、その儚い画面から、木々の間を吹き抜ける風の音が聞こえてくる。 栗田宏の絵は深い。耳をすませて、幽かな響きを感じる時、限りなく広がる世界が見えるだろう。それは、見る者の心の風景でもある。 (越野 泉) |
|
|
|
絵 屋 と ぴ っ く す
|
|
|
|
|||||||||||||||||||