2004年6月


2004年5月の絵屋

2004年7月の絵屋

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2004年6月2日〜6月10日

冨長敦也(とみなが あつや)
■1961年大阪生まれ。86年金沢美術工芸大学大学院修了。95年大阪大学聴講生として哲学を学ぶ。97年〜98年(財)ポーラ美術振興財団芸術家在外研修によりイタリアに滞在。個展、グループ展多数。98年神戸学院大学創立30周年モニュメントコンクールで1位指名を受ける。2001年十日町石彫シンポジウムで作品(「座る人物」)を制作、設置。

←「横になる人」 2001年 能勢黒御影石 18×33×11?

砕く、削る、抉る、穿つ、造形する――彫刻家・冨長の頭に布を巻き鑿(のみ)で対象に没頭する写真を見たとき、あたかも開拓者のごとき印象を受けた。人間の始まりから現代まで、そのなかを貫く永久不変なる人間像を象(かた)ち造ること。彼の作品がプリミティブかつ力強いのは「根源へ」向かおうとする意志が何時もそこにあるからだ。岩盤に抉るように人の形を象(かた)ちどったアッサンブラージュはアルタミラの壁画を思い浮かべるまでもなく我々が久しく忘れていた表現することへの渇望に溢れていた。「根源へ」向かうことは未来を切り拓くことである。冨長はその未来を切り拓く彫刻家である。(御子柴 大三・アートNPO推進ネットワーク)

 


  
2004年6月12日〜6月20日
加藤丈策(かとう じょうさく)
■1901年酒田生まれ。慶応義塾予科に学んだ後京都の商業学校で国語科教員として勤務。関西美術院日曜部で学ぶ。1946年から3年ほど遊佐町で農業に従事。過労で倒れ酒田で静養。その後一時酒田西高校、商工高校で美術を教える。1980年酒田本間美術館で自薦展「田園隣人讃」開催(同題の画集を刊行。洲之内徹が文章を寄せ、「芸術新潮」でも紹介)。98年98歳で逝去。2001年酒田市美術館で寄贈記念展「農婦百態」が開催される。

←「『農婦百態』より」
  油彩、板 サムホール(22.7×15.6?) 9点

加藤丈策さんは生前たった一度しか個展をしなかった。それが1980年、70歳の時に酒田の本間美術館で開かれた自薦展「田園隣人讃」。その折り画集にまとめられた裸婦の作品は一括、酒田の市立美術館に没後寄贈された。ところがアトリエにはまだまだ数え切れないほどの裸婦をはじめとする絵が残されている。今回は、そのなかから選ばせていただいた絵で、酒田以外で初めての遺作展を開く。
加藤さんの裸婦たちはスマートでも、いわゆる美人でもない。けれど絵を並べてみると、その女たちの何とチャーミングで、生き生きしていること。山形の遊佐で農業をしていた頃、身近に接した農婦たちのイメージが心にあったというのだが、成熟した女であって、幼な子のようにのびやかではつらつとした肢体は、美しい歌声のよう。(大倉 宏)
   
  
2004年6月22日〜6月30日
櫻井謙一郎(さくらい けんいちろう)
■1965年新潟県吉田町生まれ。94年越後門出和紙と出会う。同年より作家活動を開始。98年より「LREX展」企画運営出展。01年ESPACE CARRE D'OR個展(パリ)、新潟絵屋展、野外アート展in弥彦出展、03年「門出和紙と櫻井謙一郎展」(東京)、「門出和紙と作家シリーズ展」(新潟)、04年「越後門出和紙・小林康生30周年展」出展、他個展・グループ展多数。

←「上権現堂山」 2004年 炭、和紙

櫻井さんが、楽しそうだ。もともと多彩な人ではあるけれど、最近さらに自由度が加わった感じがする。3月の「旧日銀新潟支店長宅におけるインスタレーション展」では、建物の外壁に真っ赤なマーキングをして道行く人を驚かせた。5月の「LREX展」では、会場の新津市美術館脇の土の上で直接和紙を漉き、土や苔をその和紙にそっくりすくいとって巨大な「大地の彫刻」を完成させていた。
場所に感応し、方法やかたちにこだわらずのびのび表現する。独特のスタイリッシュさも確かにあるのだけれど、どうも私には、櫻井さんがいたずらっこのように満面に笑みを浮かべているように思えてしかたがない。アトリエの襖に「描いちゃった」という絵は、そういえば思いっきり壁にらくがき(失礼!)する子どもの喜びがあるような気も・・・。
常にこだわり続けてきた和紙という素材と、とことん向き合って作品を作るという今回の絵屋展。さてさて、どんな企みが飛び出すのだろう。(上田浩子)
 

 

冨長敦也展企画者
アートNPO推進ネットワークについて

「アートNPO推進ネットワーク」は市民型コレクター(絵を買うのが好きな普通の人々)の立場から情報発信や展覧会企画を行って行こうとする趣旨で2年前に発足した東京のグループ。新潟絵屋の活動にも当初から関心を持って下さり、昨年7月理事の山下透さん、御子柴大三さんが新潟を訪ねて下さいました。絵屋の空間を見て、ここならこの作家が、と企画して下さったのが今月の冨長敦也展。画廊の多い東京で星の数ほどある展覧会を見続けているコレクターの目で、これからもいい作家を新潟に紹介して下さるご意向とのこと。早くも来年の企画の話も進行中です。お楽しみに。


新潟絵屋4周年
「絵屋の2階」で4年
 新潟絵屋が4周年ということは、私の写真アトリエも4周年を迎えたことになる。もともとが私の事務所移転先の空きスペースを共同利用する話から、新潟絵屋は誕生している。当初は、私が物件の借り主であり、1階部分を絵屋に又貸しするという形をとっていた。つまり私は形式上の大家さん。建物にも実は「クダンハウス」という意味不明ながらも立派な名前が付いていて、私のアトリエの所在は本当は「クダンハウス2F」だ。私のアトリエの優位性(?)は揺るぎないかのように思っていたのだが、今では、誰もが私のアトリエを呼ぶ、「絵屋の2階」と。そして悔しいかな私自身も場所の説明でつい「絵屋の2階」と言ってしまう。なにか、庇を貸して母屋を取られたような気もしないでもないが、ここはとりあえず新潟絵屋が無事4周年を迎えられたことを喜び、「絵屋の2階」4周年もついでに皆さんに喜んでもらえたら嬉しい。  (新潟絵屋運営委員・村井勇)


N E W S !

5月より、外山文彦さんが企画委員に加わりました。
新たな企画の広がりにご期待ください。

 

おかげさまで今月絵屋は開廊4周年を迎えることができました。企画委員も増員し、小さな画廊の大きなチャレンジ精神はさらにパワーアップ。これからも確かな歩みで少しずつ進化し続ける新潟絵屋にご期待ください。また企画や運営面でのご意見やご要望など、お気づきの点がありましたら、いつでも気軽にお申しつけください。開かれたアート空間として、地域に育まれる存在でありたいと願っています。(小川)


   

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