2004年9月


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2004年9月2日〜9月10日

羊歯三郎(しだ さぶろう)
■1928年姫路市生まれ。詩人。若き日に金田弘、皆光茂とともに『天蓋』に参加(『天蓋』は昭和20年代に西脇順三郎の新作を数多く紹介した異色の詩誌)。西脇順三郎の詩世界との精神的葛藤のなかで詩作を絶つ。「才能は研ぎすまされた刃の如く、我が身を刻まずにいられない態のものだった」は金田弘著『旅人つひにかへらず』に書かれた羊歯三郎評。詩集に金田弘との合作詩集『CALECON』(著者名Harf & Harf)がある。

山田敏昌(やまだ としまさ)
■1940年新潟市生まれ。伝統に裏付けされた表具に情熱をかけ、神社、寺院の修復も多数手掛ける。近年は創作表具にも熱中。2002年4月羊歯三郎の「風」の書を多彩に表具した軸作品を中心に、新潟絵屋で個展開催。

←「山」

詩人西脇順三郎と、若き日に親しかった羊歯三郎さんを、姫路に初めてお訪ねしたのは16年前。西脇さんの水墨画や水彩画など、数々の秘蔵の絵も素晴らしかったが、長身痩躯の哲学者のような風貌で、はにかみやらしい羊歯さんの人柄がなによりチャーミングだった。新潟、鎌倉、また姫路でと、その後もお会いすることがあり、2年前に姫路をお訪ねした時、書き散らされた素敵な書を、ねだってお預かりした。
「天意無方」「位闌(いらん)」などは羊歯さん独特の言葉。「白虎青龍」は豆腐と青菜のこと。書とも絵ともつかないもの。奔放な文字や墨のにじみにも、気品と含羞の気配があり、羊歯さんが、まるでそこにいるよう。
一昨年、千変万化する羊歯さんの「風」の書を表具した新潟の山田敏昌さんが、今回は息子さんの敏之さんとともに、これらの書と楽しげに格闘して「大胆素敵」な軸や小屏風に仕上げた。初秋の光の中、ゆっくり眺めて、遊びたい。(大倉 宏)

 


  
2004年9月12日〜9月20日
笠原もなか(かさはら もなか)
■1977年長岡市生まれ。TOKYO-FM「百万人のメッセージ」イラスト、地元音楽祭のトロフィーのデザイン、カフェの看板デザインを経て、2003年より個展活動を開始、東京自由が丘、新潟、長岡で計4回。ほか、「ONE Mart EXPRESS」(今井美術館)、「笑えるアート」(ギャラリーdotONE)など企画展への出品や、月刊誌の表紙イラストなども手掛ける。長岡市在住。

←アクリル、紙 2004年 35.5×26cm

「もなか」という名前の人の、「おやつ」という名の「展覧会」。
別に和菓子の展示会というわけではなく、気軽につまんで、おやつのようにアートを楽しんでもらいたいと、その名を冠した発表を続けるイラストレーターの作品展です。主にアクリル板に描かれるイラストは、多彩な表情をみせ、人間、社会、生活などの多様さをも垣間見せるかのよう。時にノスタルジックに、幼少時の心ときめく一瞬を思い起こさせるなど、素朴な味わいが「おやつ」という言葉の響きとリンクされていきます。
今回の、5回目となる「おやつ」個展は同シリーズの最終回になるとのこと。絵屋の空間で展開される、どこか日本的な「もなか」ワールド。イラスト、オブジェ、木彫、絵画など、盛りだくさんの50点で構成します。  (外山文彦)
   
  
2004年9月22日〜9月30日
竹久野生(たけひさ のぶ)
■東京生まれ。上智大学文学部史学科卒業後、1968年造園家の夫とともに南米コロンビアに移住。80年コロンビア国立大学芸術学部美術科卒業。以後日本とコロンビアで美術活動を行う。日本では画廊ゆめじ(東京)での発表を中心に、名古屋、大阪、前橋などで個展。詩画集に『アンデスの風と石が運んだもの』(三修社)。
 
柔らかくて、おおらか。竹久野生さんの絵には、ゆったりとめぐっているものがある。風のようなその動きに、思わず耳をすましたくなる。
力に満ちた絵、というのが、十数年前に初めて野生さんの作品を見た時の印象だった。人物も、山などの風景も、強いタッチでぐいぐいと引っぱってゆく。南米の空気、光を思わずにはいられなかった。野生さんは北海道で育ち、造園を学び、同じく造園家のご主人とコロンビアに渡って、そこで絵を描きはじめたのだ、とあとで知った。
力は、今、地中に根をおろし光に溶けている。めぐる風に包まれて、光や水、羽ばたきや芽ぶきと交わされている対話に、会い、そして聞きにいくのが楽しみである。(吉田加南子)
 

 
絵 屋 と ぴ っ く す

●topics 1 
「難民キャンプで読み聞かせ」
7月25日、新潟市美術館講堂で安井清子さんの講演会、「難民キャンプで読み聞かせ」が開かれました。ラオスのモン族と、図書館活動などを通じて深い関わりを持つ安井さんが、モンの女の人が作った大きな刺繍のタペストリー(写真)の前で、民族の歴史や、モンとベトナム戦争の関係、モンの子供たちとのふれあい、20年以上も続く安井さんとモンとの関わりなどを、わかりやすくお話ししてくださいました。読み聞かせの実演をしたり、子供たちが作った刺繍絵本を見せてくれたりと、楽しそうな安井さんに、会場は次第に和やかな雰囲気に。終了後も刺繍作品を間近に見たり、安井さんとお話ししたりするお客様で賑やかでした。

●topics 2 
絵屋ライブ
「絵本とテオルボの夕べ」

7月31日、中山徹さんのテオルボ演奏に中山佳奈恵さんの朗読を交えたコンサートが開かれました。テオルボはリュートに低音弦の加わった大きな楽器。優しい声で呟くような音で古い曲が奏でられる合間に、絵本『ふれ ふれ あめ』などの朗読がはさみこまれ、最後はテオルボの楽曲に重ねて茨木のり子さんの詩が朗読されました。当日の新潟はすさまじい猛暑。クーラー全開の絵屋の中も温室のようでしたが、落ち着いた響きに暑さを忘れることのできた一時でした。


 

絵屋の当番をしていると、さまざまな案内が届けられます。美術展のDMはもちろんのこと、映画、ダンス、音楽などの公演案内のほか、地域おこしのセミナーまで。それら多岐にわたるチラシの数々でコーナーに設置されたチラシ入れの棚はいつも満杯状態。前売チケットを預かっていることもありますので、お気軽にご用命下さい。(小川)


   

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