2005年10月


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2005年10月2日〜10月10日 企画 上原誠一郎

篠原佳尾(しのはら かお)
■1933年東京生まれ。1958年読売アンデパンダン展に出品を皮きりに、昨年2004年新潟・楓画廊の個展までに、常に前衛的な作品を発表し続ける。作品所蔵はバルセロナ・ミロ美術館、ローマ国立近代美術館、富山県立近代美術館、栃木県立美術館、多摩美術大学など。

←「E夫人の庭−A」 デカルコマニー
  11×15.5cm 1997年

熱い夏の夜、7月17日、佳尾(カオ)さんの訃報を聞いた。
今年は「瀧口修造・夢の漂流物展(世田谷美術館および富山県立近代美術館)」、「前衛の女性1950〜1975(8月から9月栃木県立美術館)」に展示され、栃木へはまたご一緒しようと計画していた矢先の出来事でもあった。
カオさんもこの新潟絵屋での個展を楽しみに、この春からはりきって制作に没頭しておられたのだが、今回は突然のこととて追悼展になってしまった。そのためにこの度は、主として小生のコレクションの中から、銅版画(豆本、蔵書票を含む)、デカルコマニー、バーントドローイング、コラージュなど、できるだけカオさんの前衛作家としての全体像が見えるような展示を心がけた。(上原誠一郎)

 


 
2005年10月12日〜10月20日
企画 大倉宏

伊藤歌夜子(いとう かよこ)
■1950年新潟市生まれ。90年代中頃から独学で写真を始める。97年にプロに転向。商業写真を撮りながら作品制作を続ける。2000年ケルヴィンギャラリ−、02新潟絵屋、04年画廊Full Moonで個展。

←「すすき」 29.7×21.0cm

伊藤歌夜子さんの写真について書こうとすると、やはり新潟の青の話になる。青空は世界のどこにもあるけれど、新潟の青空のように青い空はない。新潟では空気も風も青い。南国の青ではない。微妙にグレーを溶かし、寒さの気配を含んだ、透明度の高い鉱物質の青。
このほかにない青を、純粋状態のまま掬い取るなにかが、伊藤さんの目か、レンズか、フィルムにある。この数年の伊藤さんの写真を見て、そのなにかは線かも知れないと思った。ガラスやコンクリートの建物のシャープなエッジ。すーっと伸びる飛行機雲。ほっそりした草の葉のすじ。傾ぐ水平線。
線と色の質が、伊藤さんの写真では、確かに強く引き合っている。そしてそれらの合力が、新潟という土地の風土、というより風空(?)の一面を、印画紙上に鮮やかに吸い上げているように見える。  (大倉 宏)
 

 
2005年10月22日〜10月30日 企画 皆川徳志

隠岐安弘(おき やすひろ)
■1955年長野県東筑摩郡明科町に生まれ。千代田デザイナー学院絵画科、新日本文学学校などを経て帰郷。91〜92年、CWAJ第2回海外巡回展で“今日の日本版画”オーストラリア・ニュージーランド国立ニュージーランド美術館買上を始め、97年ポートランド美術館国際版画展では“アメリカ・オレゴン州”招待出品。98年第10回ソウル国際ミニアチュール版画ビエンナーレで佳作賞、99年第27回ルヴァン国際サロン展で抽象賞、04年第32回ルヴァン国際サロン展では版画部門賞”を受賞。現在、養蜂業を行いながら東京と郷里長野の自宅で制作活動を行い、国内外で精力的に作品発表を続ける。

現代版画にみる多様な表現は今日多くの人々を魅了し続けています。隠岐氏の今回の作品は木版・銅版・リノリューム版が主な版種となります。いずれも版を彫る事に重きを置いたマチエールの拘りは自身の独特な感性であり、その作風は本来の版画の魅力を素直に表現した作風になっているように思います。それぞれの作品はシンプルな版の構成で特殊な要素はあまりみうけられませんが、色の発色やメリハリの効いた色面の構成の上に措かれた繊細なタッチの重なりは油性インクの持つハードな感覚と用紙の的確な選択によって微妙なコントラストを巧みに表し、作品のテーマにみる表現主義的雰囲気を明瞭に表しています。一見風刺的でもあり、自身の潜在的日常性を端的に表したりしている様子が、以前どこかで目にした場面や心の奥深くにしまい込まれた風景を画面に再現しているような、懐かしさを呼び起こしてくれる不思議な世界観が感じ取れる作品です。(皆川徳志)
 

 

坪谷令子・新潟絵屋展に寄せて
灰谷健次郎講演会「いのち このいとしきもの」
■2005年11月12日(土)13:30〜15:00
●新潟市美術館 講堂 
●入場料:1000円(絵屋会員800円)
※参加ご希望の方は事前に新潟絵屋にお申し込み下さい。

「兎の目」や「太陽の子」などの児童文学作品で知られた灰谷健次郎さんが「老夫婦」を主人公に据えて描いたちょっと珍しい作品に小説「風の耳たぶ」があります。
その「風の耳たぶ」をはじめ絵本などの挿画で共作が多い坪谷令子さんの新潟絵屋展がご縁となってこの度、灰谷健次郎講演会「いのち このいとしきもの」が同時開催されることになりました。
「風の耳たぶ」の最後の舞台は良寛さんのふるさと新潟になりますが、その地は坪谷さんのルーツとも重なります。そして、主人公の人物像だという理論社を創設された小宮山量平さんも当日には駆けつけてくださるとのこと。昨年、大病された灰谷さんは講演依頼もセーブしておられる身、貴重な講演会です。「いのちは まるい」坪谷令子新潟絵屋展と共にご案内申し上げます。

「いのちは まるい」坪谷令子・新潟絵屋展
11月12日(土}〜11月20日(日)

10月9日は「新潟下町の日」

近年ますます注目度が高い新潟下町。10月9日(日)には恒例の「下町にいがたウォーク」が開催されます。午前8時半「みなとぴあ」集合。9時出発。今年は「堀と町屋コース」「下町名所めぐりコース」の2コースで約2時間ガイドと一緒に歩きます。参加無料、雨天決行。同じ日の午後、下町のまちづくりを考えるシンポジウムが開かれます。あわせて参加してみては。下町専門家になれますよ。
●「下町にいがたウォーク」 問合せ:025-229-3222
                下本町商店会(松原)


シンポジウム
「新潟の湊と堀と町並み 『回船問屋小澤邸』周辺と下町の堀」
日時:10月9日(日)午後1時半〜5時 
会場:新潟商工会議所中央会館ホール 
参加無料
主催:新潟まち遺産の会、堀割再生まちづくり新潟、下本町商店会、新潟商工会議所、新潟市
●問合せ:025-228-2536 新潟まち遺産の会事務局


新潟絵屋5周年に思う 

 この夏、版画家のWさんが新発田市郊外に住宅兼アトリエを完成させた。自力で「こつこつ作ったら3年かかった。」という苦労話は、苦労以上に作ることを楽しんでいるように感じられ、私は新潟絵屋開設時のことを思い出してしまった。
 新潟絵屋も手作りの画廊だった。長く使われていなかった町屋のミセ部分、昭和のリノリウムを剥がし、土と木と紙で再生した。自分たちの手でそうしたことは意味があったと思う。ここでは、それを詳しく述べるいとまがないので、当時の記録として「ばらくて」7号をお読みください。
 この町で生まれ、今は住んでいない私にとって絵屋に関わるまで、下町は追憶の町だった。追憶とは断片だ。絵屋が開廊して5年、すでに私の記憶の断片もリニアな時の流れに再生されている。しかし、もちろん幼い頃の追憶として、大切な記憶として、変わらずにそこにあって欲しい下町も私には残っているのである。 
(新潟絵屋運営委員 伊藤信行)


ひとりお店番をしていると、「作家さんですか」と時たま間違われる。何だか光栄で単純な私はウキウキしてしまう。しばらく前、大倉さんと並んで座っていたら兄妹と間違われた。それもまた、なかなか。眼力がついたみたい。(I)


   

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