2005年12月


2005年11月の絵屋

2006年1月の絵屋

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2005年12月2日〜12月10日 企画 上田浩子

坂本秀樹(さかもと ひでき)
■1962年新潟県加茂市生まれ。82年写真を撮る仕事に就く。83年、今はなきニコン新潟営業所ミニギャラリーにて初の個展を開催するも、その後は業務での写真撮影に追われ作品制作は休眠状態に入る。2002年「第5回LREX展」参加を機に、モノクロ銀塩写真にこだわり作品制作活動を再開。04年「第6回LREX展」参加。全しょ連会員。

坂本さんHPとブログ http://www17.ocn.ne.jp/~pgf32

「見る」ということは、とてもプライベートな行為だ。私たちはいつだって、見たいものを見て暮らしている。好意を抱く相手には、その姿や動きの中にも何か好いものを見ようとし、逆に距離を置きたい相手には、その理由となるべきものを見いだしてしまう。誰かと一緒に同じもの、たとえば絵や芝居や景色を見ても、それぞれの目がとらえているものをお互いに知ることはできない。できるのは、経験や時間を共有することだけだ。そして写真は、そのうかがい知れない他人の目がとらえた、決して「私」が持つことのない視線を二次的に体験できる、ひとつの手段だ。
松田優作のモノマネが得意で、妙なグッズ(ケロリンの風呂桶とか)を集めてはひとり悦にいっている、軟派なのか硬派なのかよくわからない坂本さん。彼の写真を見ていると、どこか潔癖でロマンチストな視線の持ち主の「坂本秀樹」という人物に、あらためて出会う気がする。少し気恥ずかしいような、新鮮なような。そしてこの見え方もまた、写真を見る人それぞれに違う。まるで入れ子のような視界の連鎖。

(前略)私が写真を撮っていると人に不思議そうに見られるときがある。何の変哲も無いシダやら樹木を必死に撮っているからだ。しかし、他人から見ればなんでもない光景の中に「おお!こいつは!!」と思う光や影を見たときは嬉しくてたまらない。そう、ちょうど「テレビに映る(相撲中継の)土俵の向こうの(枡席に座る)和服美女」を見つけたときのようなものだ。そんな私の「視覚」を楽しんでほしい。(坂本秀樹)

個展に取り組む日々が現在ご本人のブログにて同時進行公開中。「見る」と「読む」が楽しめる、ナマモノの個展です。   (上田浩子)

 


 
2005年12月12日〜2006年1月15日 企画 大倉宏

アンティエ・グメルス(Antje Gummels)
■1962年旧西ドイツ、レ−ゲンスブルグ生まれ。78年イタリア、サンレモへ移住し各国アーティストと交流。87年に来日し新潟県巻町(現新潟市)に住む。麻布工芸美術館(東京、92年)、創庫美術館(新潟、92、94年)、北方文化博物館(新潟、96年)ストライプハウス美術館(東京、98年)、新潟絵屋(01年、05年)、アートフロントギャラリー(東京、05年)、画廊Full Moon(新潟、05年)などで個展。絵本の仕事も多く手掛けている。

←「LOOKING INSIDE」水彩、紙
  23.8×16.6cm 2005年

アンティエさんの絵がゆらいでいる。
砂のように点を重ねたモノクロームの「夜曲」を完成させかけた頃、描き始められた水彩に、色がせり上がってきた。霧に似た以前の色にくらべると、個々のテンションが強まり、どこか生々しい、質感がある。おなじみのアンティエワールドの住人たちのイメージが見えなくなった画面を、「抽象」と彼女は言うのだが、それはイメージを飛び立たせる心の炉、ゆらぎそのものの場所の光景にも見える。
星が細胞に神経が光に、精神が性に、布が炎につながっている。沸騰して揺れるものを、見開いて呑み込んでしまった目の、漿液の手ざわりのようなものが、色の、線のにじみや、けばに帯電しているよう。数カ月のドイツ滞在の間に「抽象」はまた「具象」に揺れもどってきた。同じアンティエワールドに見えるけれど、何かが違う感じ。霧の微妙な重さ、だろうか。どことなく宗教絵画の風貌をまといはじめた異界。アンティエワールドがアンティエワールドに船出する旅をはじめたような、ぐるぐる感。
見えないタイフーンが、北上していく。(大倉 宏)

 


 

同時開催企画 
異界のアクロバット 
アンティエ・グメルス展 1988-2005
●12月9日(金)〜2006年1月15日(日)9:00〜17:00
 ※月曜・12月27日(火)〜1月3日(火)・10日(火)休館
  1月9日(月・祝)は開館
●会場:砂丘館(新潟市西大畑町5218-1) 

ギャラリートーク「描くという夢」
●12月18日(日)14:00〜
●アンティエ・グメルス/聞き手:大倉宏 
●参加料500円(直接砂丘館へ)


 ある日、「絵屋の玄関の板戸が壊れているので見てほしい」との電話がスタッフから入った。絵屋のお抱え大工でもある私は用事を済ませてようやく夜の8時頃に現場に駆けつけた。一応は戸締りされている状態だったのでホッとする。症状はと言うと、要するに5年の風雨に晒されたことによる「加齢現象」であった。乾燥によって隙間が空かないように杉板を相欠きにしてつくってある建具なのだが、時間の積み重ねによる自然の力は凄いものである。打ち付けてある釘をも持ち上げて暴れ、差し込んである部分の框からも外れて割れが入り既に明かりが漏れている状態にあった。取り合えず接着剤を注入し、相欠きを揃え新たに釘を増し、建て込み終えてきたのである。こんな風に板戸は養生しながら使えば、まだまだ5年やそこいらは大丈夫。本体の新潟絵屋自身ともども、この先の風雨に耐えていってほしい。(新潟絵屋運営委員 旗野秀人)


絵屋では書籍や下町周辺地図、レターセットなども販売しています。12月のおすすめは野中光正ポチ袋。以前個展開催された作家さんが制作した個性的で洒落た一品です。様々な風合いがあるので選ぶのがきっと楽しくなりますよ。(I)


   

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