2006年6月


2006年5月の絵屋

2006年7月の絵屋

  新潟絵屋あんない 作家INDEX Blog  


 
2006年6月2日〜6月10日 企画 敷村良子

茂本ヒデキチ(しげもと ひできち)
■1957年愛媛県松山市生まれ、東京在住。大阪芸術大学デザイン科卒業後上京しグラフィック・デザイナーを経てイラストレーターに。舞子後楽園スキー場CM、久保田利伸などミュージシャンのCDジャケット、雑誌「ミュージックマガジン」「TARZAN」表紙、貴乃花、マイケル・ジョーダンなどスポーツ選手イラスト、映画『永遠のマリア・カラス』などを手がける。京都町家プロジェクト「繭」(2000年9月)、NYのSOHO‘THE.APARTMENT’(同年10月)など個展多数。週刊新潮連載、海道龍一朗著『天下人』挿画担当。早川書房から年内に作品集出版予定。

http://hidekichi.com

墨を活かしたスピード感あふれるドローイング。1992年松山市のCOMPLEXギャラリーで最初に作品を見たときの衝撃を私は忘れられない。墨というアジアの伝統的な素材を使いながら、描かれる対象は未来的。アスリートを描けば彼らの動きによって周囲を吹いた秒速の風が見え、ミュージシャンを描けば彼らの奏でる力強いビートが聞こえる。躍動感のある線は、まるで即興で描いたようだが、しっかりしたデッサン力があるからこそ可能な離れ技だ。その画力はますます確かに、そして感覚はいっそう鋭くパワフルになっている。個展タイトル「ネオ・ブラック・ストローク」は「新しい墨の形」。新潟絵屋のために、得意の肉体だけでなく、顔や物にも挑戦し、描き下ろした。ポスターの原画、装丁を手がけた本、Tシャツ、時計などのグッズも空間の許す限り展示。茂本の作品は、商業イラストを超えた。第一線で活躍する実力派の作品、絵屋の会員はもちろん、いままで絵屋になじみのなかった若い人たちにも、ぜひ見て欲しい。(敷村良子)

 


 
2006年6月12日〜6月20日
企画 大倉宏

藤田陽子(ふじた ようこ)
■1995年女子美術短期大学卒。96年同専攻科修了。同年坂爪勝幸氏に師事。2000年新潟現代美術リレー展出品。03、04年ギャルリー炎舎(新潟市)、05年新潟絵屋で個展。

←「冬の朝、静けさが街を包み込んでしまう」2004年
  陶 23×43×24cm

藤田さんの去年の展覧会では、元気のいい陶の雲たちが並んだ。
今年は「家」である。制作順で言うと、家のシリーズは雲より早く始まったとのこと。それまで「自分の表現」をうまく探り当てられずにいた藤田さんは、「家」を見つけて、制作が楽しくなったという。
シリーズには日本、中国、アフリカなどの民家に似た家もあるが、今回紹介する白い家シリーズは西欧の田舎の家のようでもあり、どこか違うようでもある。微妙に傾き、カーヴする壁や地面を見つめていると、これは陶器というモノで作られた影像なのではないかと感じられてくる。イメージをモノにするのではなく、逆にモノをイメージに、遠い心の壁に映る影像に近付ける。そういうモノ作りもあっていいという発見が、藤田さんを解放したのかも知れない。
藤田さんの器も、しっかり作られていて、しかも幻想的な手触りがあり私は好きなのだが、今回はその器もあわせて展示する。器好きの方もどうぞ。(大倉 宏)

 


 
2006年6月22日〜6月30日
企画 渡辺リリコ

篠崎三朗(しのざき みつお)
■1937年福島県生まれ。桑沢デザイン研究所グラフィック専攻科卒業。日本児童出版美術家連盟会員、東京イラストレーターズ・ソサエティ会員、内閣府「障害者週間ポスター」審査委員。現代童画会ニコン賞・高橋五山絵画賞受賞。ミュンヘン国際児童図書館にて絵本『おかあさんぼくできたよ』(至光社)、挿絵『新美南吉おじいさんのランプ』(小峰書店)が国際的に価値のある本に選ばれる。その他絵本、挿絵多数。主な展覧会歴:日本の絵本原画展(西宮大谷記念美術館)、NHKハート展(渋谷東急本店文化村)、世界の絵本の原画展(日本橋丸善)、現代日本絵本画家展(上海・北京)、日本のナイーブアート画家6人展(ブダペスト)、地球環境絵本展(愛知万博)、野生動物保護チャリティ絵画展(有楽町マリオン)にて美智子皇后作品お買いあげ。その他個展、団体展多数。横浜市在住。

←「リュートを弾く天使」2006年
  ガラス絵 19.5×15cm

もえぎ色の空がひろがる4月に篠崎さん宅を訪れました。私を出迎えてくれたのは壁や窓辺の天使たち。ガラス絵、オルゴール、立体の天使たちが小首を傾げ、てにてに中世の楽器を奏でています。
サウダージ。ふっと風が通りぬけ、旅の香りがしずかな調べとなってきこえてくるようでした。あざやかな彩りの天使たちは見る人の記憶に触れ、こころを揺らし、それぞれの想いを蘇らせてくれるのでしょう。
その日は天使に包まれ、和らいだ気分で旅のスケッチ帳を拝見したり、創作のことなど篠崎さん夫妻と話は尽きませんでした。
そして6月、さまざまな表情の天使たちがバロック的な空間とリズムをつくり、新潟の空にその調べを共鳴させることでしょう。
是非お楽しみください。(渡辺リリコ)
  

3

 
新潟絵屋は大正時代の町屋のミセ部分を改装して展示スペースを作りました。土壁、和紙の壁、格子戸などで構成される壁面は、温かみがあって落ち着く、他の画廊に飾る時と絵が違って見えると作家の方によく言われます。砂丘館は昭和初期の高級官舎で、その蔵はパネルをめぐらせてギャラリーに改装されていますが、随所から蔵の気配が匂いたち、展示空間に独特の個性と表情を加えています。砂丘館ではさらに和室と洋間という居室にも絵や立体作品を展示することがあり、文字どおり住まいの空間がギャラリーになります。絵屋の設立目的のひとつが生活空間に絵(美術)をつなぐこと。住まい空間を使った砂丘館の展示は、その意味でも、絵屋の本来の活動でもあると言えます。絵屋が砂丘館の指定管理者の公募に応募した理由のひとつもそこにありました。伝統的書院座敷に、思いがけない現代の作家の絵がぴったり納まるのを見るのは、スリリングな喜びです。


 絵屋の周囲が用地買収され空き地だらけになってしまいましたが、新潟絵屋も来年は新しい場所での再スタートになります。今の並木町での活動は今年12月20日までです。移転先など、詳しくは次号でお知らせします。


いろんな人が絵屋に来てほしいなあ、と常々思っています。そんな訳で、絵本や挿絵を手掛けてきた津田真帆さんの個展前には、子育て中の方々や保育園を訪ねたり、書店の絵本売場での宣伝をしました。画廊が無縁だったという方にも、絵屋へ来て少しでも近い存在に感じてもらえると嬉しいです。これからも、時にはスタッフルームから出ていろんな場所で宣伝活動したいと思います。(井上)


2006年5月の絵屋

2006年7月の絵屋

  新潟絵屋あんない 作家INDEX Blog