2006年8月


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2006年8月2日〜8月10日 企画 敷村良子

川島 猛(かわしま たけし)
■1930年香川県高松市生まれ、NY在住。武蔵野美術学校を中退し1963年渡米。アート・ステューデント・リーグ在学(1964−67)、Daniel Schnakenberg及びBoard of Controlスカラシップを受ける。1966年ニューヨーク近代美術館の展覧会で高く評価され、現在までSOHOのアトリエを拠点に制作活動を続けている。その作品は、アメリカではニューヨーク近代美術館(永久保存作品)、クライスラー美術館、ポツダム州立大学など、日本国内では国立近代美術館(京都、東京)、東京都立美術館、大原美術館、広島市現代美術館、富山県立近代美術館などに収蔵されている。
川島猛HP:http://www.dpoweb.com/~kawashima/index.shtml

←「Red and Black 」1966年
  アクリル画 172.7 ×172.7cm

昨年6月、川島猛さんが新潟絵屋を見に来られ、新潟市美術館もご案内した。川島さんはひとつひとつの作品を長い時間をかけて見ていた。何かをつかみとろうとするかのようなまなざし。半世紀かもっと、絵を制作してきた人であるのに。私が場内を二周、三周しても、川島さんはまだ絵と対峙していた。なんという貪欲な姿勢だろう。私は驚いた。やっと出てこられたら、川島さんはにっこり笑って「いやあ、いいコレクションだねえ。同じ作家でも色が渋いね。これは新潟の光と関係があるんじゃない?」とおっしゃった。私はハッとした。同じ日本でも香川と新潟では違う光を受けとっている。「新潟の人に僕の明るい色は受け入れられると思う?」と川島さんは私に問いかけた。
そういえば、私が今回の企画を持ちこんだとき、大倉さんはためらっていた。洲之内徹に私淑する方だから、川島猛がどういう人かは知っている。だからこそ、新潟人の好みからすると色が明るすぎるというのだ。ならば、なおのこと私は新潟で川島作品を紹介したいと強く思った。ある人はNYの喧騒を、またある人は大自然の多様な生命を見る川島ワールド。今回はぷちカワシマ展。本来の川島猛らしい大作の展示はない(いっておくが川島作品は単にサイズが大きいのではない。描かれている世界が無限大なのだ)。絵屋の空間に合わせ、やや小さな、いうなれば個人の家に飾りやすいかわいい作品を中心に紹介する。いくら小さくとも、いや小さいからこそ、川島猛の魅力に溢れ、清らかで力強いエネルギーを放っている。
皆様と川島猛の出会いが、新鮮で刺激的なものでありますように。(敷村良子)

 


 
2006年8月22日〜8月30日 企画 大倉宏

田中正弘(たなか まさひろ)
■1946年、新潟市生まれ。76年の初個展以後、東京銀座を中心に個展グループ展多数。90年「四季の径・彫刻大賞展」大賞受賞(古河市)。91年新潟市寄居浜に「夕日モニュメント」を製作。2003年新潟絵屋で個展。

←「雲水」2006年 ブロンズ、鉄 h17cm

一昨年のやはり夏に開いた田中さんの個展は、友人の死をきっかけに始まった「死を恐れるな」シリーズを中心とした。抽象の作品を発表してきた田中さんの個展に、体を硬直させたミイラ様の人体を壁に張り付けた作品が登場したときは誰もが驚いた。絵屋の個展では、発表直後の生々しさは和らぎ、土壁に立て掛けられた二つの大きな立棺はどこか死者の国の静けさを感じさせた。
個展には随分たくさん人が来た。高校まで新潟にいた田中さんの同級生も多かったけれど、そうした知人が訪ねてくるのは、田中さんの人の魅力もあるようだった。寄居浜の海に面して立つ田中さんの彫刻「夕日モニュメント」は、コールテン鋼の太いアーチ上部に巨きな自然石が要石としてはめ込まれたシンプルな抽象造形だが、松林や海や夕日や作品を包む自然を、どこかゆったり迎えいれている風情がある。作品を頒布する画廊の意味にも、田中さんは思いをめぐらせ、知人たちが求めやすいよう小さな棺とミイラの小品も並べてくれたが、それを求めていく人の多いことにびっくりした。死者のイメージが仏―仏像のようにも見えたらしい。広島の原爆投下をモチーフにした作品もあった。今回初登場の「雲水」はまるでその原爆のきのこ雲が、死者を供養する旅の僧侶に変容したような不思議なイメージだ。死者へ向ける切迫した視線が、死者とともに行こうとする静かな諦観の感情に変わって、抽象の作品にもあったどこかゆったりした気配が生まれている。穏やかな顔で重いものをそっと抱えていこうとする仕草に、アイロニカルなユーモアがある。(大倉宏)
  
 

ギャラリートーク
「創作環境としてのニューヨーク」
若くからニューヨークを創作の場所に選んだ川島猛さんに、
作家の目からみたこの大都市の魅力を語っていただきます。
●8月6日(日)14:00−15:00
●会場:砂丘館ギャラリー(蔵)
●聞き手:大倉宏 
●参加費:500円
終了後、川島さんを囲む小さな集いを催します。
お気軽にご参加ください。

NYの川島さんのアトリエ→


「大地の芸術祭
越後妻有アートトリエンナーレ2006」始まる
♪夏が来れば思い出す〜自然とアートと人間がおりなす三年大祭「大地の芸術祭/越後妻有アートトリエンナーレ2006」(7月23日〜9月10日/十日町市・津南町)が今年も開催されます。50ヵ国を超える350組のアーティストが参加。前回までの119作品を含む329の作品が760平方キロメートルの会場に点在するその規模は、まさに空前絶後の国際美術展。「百聞は一見にしかず」。現地に出向いて汗だくになって里山を歩き回り、五感を通じて体感することで心に深く刻まれる感動が印象的です。全作品を見ることができるパスポート(一般前売3000円)の事前購入が断然おすすめ。新潟絵屋でも取り扱っています。開催概要など詳しくはhttp://www.echigo-tsumari.jpをご覧ください。
また全国の書店で現在発売中の『美術手帖』7月増刊号でも「大地の芸術祭」の作品ガイドが特集されています。(小川)


新潟絵屋の軒下を飾る朝顔は舞踏家のHさんが用意して下さったものです。去年はとれた種を沢山のお客様に差し上げました。この夏、絵屋の朝顔の子供達も遠い町で美しい花を咲かせていることでしょう。(C)


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