2006年10月


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2006年10月2日〜10月10日 企画 広田郁世

KURAE Naphphong(クラエ・ナパポン)
■1963年タイ王国プーケット生れ。シラパコーン大学大学院版画専攻修了。2000年に富山大学大学院に研究生として留学。タイ芸術局企画絵本の原画制作。「World AIDS Day 2004」タイNGO、AIDS撲滅キャンペーンポスター制作。世界各国の絵本コンクールや版画展に出品。2005年ANA国際環境絵本コンクール優秀賞受賞。タイ王立美術大学バンコク校助教授。

←「Bird」2005年、エッチング 16.5x12.5cm

子供が奔放に描いたような純粋な線。身近な自然を見つめる暖かなまなざし。異国に住む彼の遠い記憶の中の思い出の断片のような作品からは、時に痛々しいほどに暗い影が見える。封じ込めて忘れたふりをした小さな記憶を呼び起こされるような。
少年時代に突然病気で失った兄と遊んだ思い出が、その時の自然とともに何より強烈な表現や活動の動機になっているという。クラエ氏はバンコクに在住し、タイ王立美術大学助教授として教鞭をとるかたわら、少年院やストリートチルドレンを対象に絵を描くワークショップをしてきた。
多くの学生から慕われ、版画家としても有名であるが、良き子どもの理解者としてタイ王国政府から表彰を受け、タイ政府芸術局専属の絵本作家としても大いに活躍している。そんな彼が取り組む作品「人と自然」は、ますます深く暖かく、そして切ないのである。 (広田郁世)

 


 
2006年10月12日〜10月20日 企画 大倉宏

小磯 稔(こいそ みのる)
■1937年、東京生まれ。東京芸術大学美術学部工芸科(漆芸)卒。4年次に安宅賞、卒業制作(漆芸飾棚)でサロン・ド・プランタン賞。60年日本コロムビア入社。その後東京芸大、大妻女子大講師を経て、77年新潟大学教育学部助教授(83〜2000年教授)。現在、新潟大学名誉教授、新潟県文化財保護審議委員、新潟市景観審議会会長等。2003年新潟絵屋、05年羊画廊で個展。

←「生きる・南蛮」2005年 22×16cm

描く瞬間の高揚を、見る人が共に体験するライブペインティングが、若い人の間で共感を呼んでいる。歴史的には席画と呼ばれる即興絵などにつながるこうした絵を、ファストフ−ドならぬファストペインティングと仮に呼ぶなら、日本の歴史にはもう一つ、仏画に代表されるようなスローペインティングの存在がある。
気の遠くなる工程を重ねて、一枚の絵を完成させる小磯さんの「うるし絵」もまた、現代のスローペインティングだ。装飾古墳のモチーフに、近年は芽や花など植物のテーマが加わった絵には、独特の簡素さと幻想感がある。コンピューターならほんの数分で描けそうなパターンを、何ヶ月もかけて、一枚のうるし絵に仕上げる。一瞬の高揚を、ドミノの牌をひとつひとつ立てていくような緊張感に分解し、一歩一歩、ゆっくりと完成に近づける。こうして生まれた絵の魅力。光を様々なニュアンスで照らし返すうるしの光沢と、一つになった線や色、モチーフ。ライブペインティングとはおよそ遠い場所に立ち上がる絵に、まるで牌を最後に一気に倒していくような、ライブな爽快感が感じられるのが面白い。 (大倉宏)
 
2006年10月22日〜10月30日 企画 大倉宏

松川孝子(まつかわ たかこ)
■1945年新潟市生まれ。日本女子大国文科卒。73年渡仏。75年よりウィーンに在住。国立ウィーン応用美術大学卒。オーストリア芸術家協会会員。94年以降ウィーン、東京、大阪で個展。ヨーロッパ各地の展覧会に出品。アルベルティーナ美術館(ウィーン)、グラフィック美術館(ノルウェー)、Petit Format 美術館(ベルギー)ほかに作品収蔵。新潟では95、2001年(大和アートサロン)、04年(新潟絵屋)で個展。

←「森で」 2006年 50×80cm

追求するモチーフというものが、ひと頃の日本画にはあった。今の若い世代はモチーフでなく、描く行為自体へ関心を移しつつあるようだ。洋画も日本画も素材の違いでしかなくなった。
松川さんのミクストメディアによる抽象作品には、素材への関心と質感の追求という点で、そんな若い世代に近い感覚がある。それでいて、どこか懐かしい、ひと頃の日本画の匂いがする。
今回同時期に砂丘館に展示される作品では、ストライプの垂直的な作品が森に、水平的な絵が島の浮かぶ海の風景になっているものがある。構図や素材感など、まるで1950〜60年代の日本画の甦りのような気配が、逆に新鮮だ。
松川さんの抽象の底に、モチーフの追求という、今の若い世代には希薄になったものが確固としてあることに、今さらのように気付く。松川さん自身の言葉を借りれば、それは「土地の記憶」ということなのだろう。新潟、東京、そしてヨーロッパのいくつかの都市。そうした場所の風景、土や水や空気の感触というモチーフの追求が、垂直や水平のストライプに、浮遊する紙片のような形になり、素材、質感への関心につながってきたのだ。(大倉宏)
  
 

LREX・並木町絵屋の最終会期展構想進行中!
 さまざまな分野のメンバーが集中的に展覧会を企画・構成し、作品を発表しているLREX(レックス)。ここ数年ちょっとおとなしくしていましたが、今年の12月、並木町での絵屋の最後の展覧会期間に久々の「LREX展」を開催します。展示室だけではなく、周辺の人や場所、そして絵屋の委員やスタッフをまるごと巻き込んでしまおう! と、現在あれこれ構想をふくらませているところです。絵屋で個展を開催した作家も含まれているLREXの、「絵屋と並木町界隈」企画。詳しくは11月発行の絵屋便でお知らせします。寒い季節ですが、内容はうんとホットになるはず。ぜひ足を運んで、一緒に楽しんでくださいね。(絵屋運営委員・LREXメンバー:上田浩子)


松川孝子展  
10月20日から開催の松川孝子展と同時開催企画です。
会期:10月19日(水)−11月9日(水) ※月曜・11月7日休館
会場:砂丘館ギャラリー
時間:9:00−21:00(最終日17:00) 
入場無料
主催:砂丘館(新潟市西大畑町5218−1 TEL.025-222-2676)

ギャラリートーク「土地の記憶」
松川孝子/聞き手:大倉宏
日時:10月22日(日)15:00−
500円(直接会場へ)


近ごろ、妙な若者がいるのをよく見かける。知らぬ顔だが、どうやら店番をしているものらしい。坊主頭におかしな眼鏡をかけ、穴の開いたジーンズなどを穿いている。画廊の店番としてはいささか珍しい風体の男だ。人相は悪い。だが、愛想がないわけではない。こちらに「いらっしゃいませ」と声をかけ、なんとなく落ち着かない様子で椅子に座っている。椅子の上で手持ち無沙汰に目線を泳がせ、かと思うと、おもむろに立ち上がってちり紙を手に取り、盛大に鼻をかんだりする。チーン。・・・そんな感じのヤツが絵屋の店番をしていたら、それはオレのことです。短期間ではありますが、新潟絵屋スタッフとなりました。よしなに。(ま)


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