2008年5月


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2008年5月2日〜5月10日

企画 大倉宏

渡邊博(わたなべ ひろし)
■1938年新潟市生まれ。熊谷喜代治にデッサンを学び、後笹岡了一に師事。日展、光風会に出品し66年光風会会員となるが、68年退会。以後は紀伊国屋画廊、美術ジャーナル画廊、現代画廊、ギャラリーXepia、ギャラリー銀座汲美(いずれも東京)などで個展により発表。新潟での個展は91年新潟伊勢丹、02年、05年新潟絵屋に続いて4度目。

 

←「不如意」 2008年 水彩、紙 35.7×25.7cm

渡邊さんの近年の絵のちょっと難解そうなタイトルや、絵そのものに、私はなんとなく「ぼやき」の気配を感じて、そこが面白い。同じ人生のよしなしごとを語っても、愚痴と違って、ぼやきが聞く者のそこはかとない笑いを誘うのは、一種の諦観に濾過されて、語る人本体からよしなしごとが幽体離脱し、客体のようにそこに現れるというような、ユーモラスな不思議ゆえだろう。語られるよしなしごとには、さまざまの喜怒哀楽がにじんでいるが、そんな人間的感情もまた人から離れ、風のように、霧のように、落ち葉のように漂い出す。渡邊さんの水彩や油彩はそんな風や、霧や、落ち葉で編まれた半透明の織物のようだ。どこか暗めで、柔らかく、人の息のような暖かみがある。
今回はお願いして、20年ほど前の渡邊さんの油彩も近作とあわせて並べさせてもらう。この頃の絵に描かれた目を閉じた人形の顔が、表情が、私は好きだ。感情や思念を内側に解き放っていく、渡邊さんの絵の始点をそこに感じる。(大倉 宏)


 

2008年5月12日〜5月20日

企画 大倉宏

菅野くに子(かんの くにこ)
■東京生まれ。武蔵野美術大学油画科卒業後、リトグラフ、エッチングの制作を続ける。1998年より手漉き和紙による制作を始める。2001年ガレリアグラフィカ(東京)、02、04、06年新潟絵屋、05、07年ギャラリー舫(東京)で個展。

 

←「少女」 2007年 ミクストメディア、和紙 63×48cm

菅野さんの絵屋での個展は早いもので、もう4回目になる。その絵は、私たちの現実の世界という川の傍らを流れる、もうひとつの川というふうで、現実をどこかその川面に映しながら、現実そのものには、決して交わらない。絵の世界のそのような原理は変わらない。現実の世界にけれど季節がめぐるように、絵の気配が個展の度に、微妙に変化するのが私は興味深い。2年前の展覧会で印象的だったのがひとりの幸福をにじませた黒だったが、今回はその黒の水深が浅くなり、水底から漣(さざなみ)のように震える青が、浮かび上がってきた。
黒の気配は残っていて、その青が黒と交錯し、融合し、ときにせめぎあって、画面に生気と新たな重みと、静けさを生み出しているように見える(静という字は青が争うと書くのが面白い)。眺めていると菅野さんの絵の世界の川幅が、いつしか広くなっていることに私は気づく。(大倉 宏)

 


 

2008年5月22日〜5月30日

企画 川瀬裕子

川合朋郎(かわい ともろう)
■1976年大阪府生まれ。2001年東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業(卒業制作はO氏記念賞受賞、大学買い上げ)03年同大学院美術研究科修士課程修了。02年ギャラリー北村(東京)、03・05年ギャラリーGAN(東京)、06・08年NICHE GALLERY(東京)にて個展開催。新潟では01年に雪梁舎美術館「フィレンツエ大賞展」出品以来の発表。静岡県在住。

 

←「象る/トルソ」 2008年
  水彩、石、ペン、鉛筆、紙 33×25cm

川合さんの作品を初めて見たのは3年前、青山の画廊でのことでした。丹念に仕立てられた下地にうっすらと、しかし中から湧きあがるような緊張感とともに浮かび出る象(かたち)は描かれたというよりも、土塊の中からそっと掘り出されたようにキャンバスの上に存在していました。
その後彼の作品を画廊で、パブリックスペースの広い会場で、そして喧噪入り混じる上海アートフェアの会場で見るたびに、回りの雰囲気や音、雑踏とは無関係にそこに「在る」象の静けさと存在感に不思議さを感じました。彼は自らのアーティストステイトメント中で「描く側が持っているイメージを画面に映すだけではなく、画面と対話しながら、そこに浮かびあがる図像を拾っていく」と書いています。
それはミケランジェロの「大理石に閉じ込められていたダヴィデを解放するために彫り出した」という言葉を私に思いおこさせます。(川瀬裕子)

 



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絵屋便、DMの配達を担当する絵屋運営委員・田代のはみだし連載コラム 11

傘という便利なモノが普及しているこの世の中、雨を浴びる機会なんて、はっきり言ってないだろう。いや積極的にそんな事、したくはないけれど。時間にしてみれば、ほんの20数分ってとこだったのだろうか。でも集中豪雨を浴びてる最中は、とんでもない湿度のぶんだけ時間もじっとり重く長く感じられた。(つづく)
タシロ…田代早苗(俳人・新潟絵屋運営委員)




   

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