2009年8月


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2009年8月2日〜8月10日

企画 大倉宏

田中正弘(たなか まさひろ)
■ 1946年、新潟市生まれ。76年の初個展以後、東京銀座を中心に個展グループ展多数。90年「四季の径・彫刻大賞展」大賞受賞(古河市)。91年新潟市寄居浜に「夕日モニュメント」を製作。2003年8月、06年8月新潟絵屋で個展。
*会期中作家在廊

←「植物誌 ソラマメ」

されど死ぬはみな他人――と言ったのは誰だったか。
死を私たちは確かに直接体験できず、直接体験する時はもういない。だから死は巷に(テレビや新聞に)あふれていても、私たちの人生から遠いのだが、それを変化させるのが「身近な人の死」だ。自分の生の一部となった人の消滅という形で死は生に刺さり、ときにそれを変貌させる。友人の死を契機に10数年前に始まった田中正弘の「死を怖れるな」シリーズはミイラ、立棺という直接死を指示するイメージから広島への関心を経て前回個展で登場した「雲水」へ変化し、今回の「THE禅」や種を鉛板に埋め込んだような「植物誌」へつながってきた。「雲水」「THE禅」にはこけしや土人形に似たユーモラスさがあるけれど、それでいて微妙に深い何かが剽げた気配に混交するのは、作者に入り込んだ「死」の声が依然響いているせいだろう。それらを鎮魂のイメージとするなら「植物誌」は死と生の循環を象徴するようだ。死、鎮魂、循環は死と生(そして性)をめぐる宗教、文学的イメージをなぞるものだが、田中の作品が宗教、文学的イメージの表現と見えないのはやはり極めて直接的個人的な体験から、それらを作り手が順次発見してきたからだと私は思う。
新潟絵屋での田中展はいつも真夏。酷暑の日々に田中の作品はけれど不思議に似合う。という言い方も変なら共振する。日本の夏にお盆があり終戦記念日があり、広島長崎があるせいかもしれないが、それ以上に生の気配が高まるとき人はより強く死を感じる、つまり死と生の連続と循環を本能で直覚するためだろう。(大倉 宏)

 


 

2009年8月22日〜8月30日

企画 井上朗子

高橋直美(たかはし なおみ)
■ 1991年信州大学教育学部美術科卒、93年創形美術学校造形科中退、99年渡米、現在ニューヨーク市在住。2008年8月、09年4月、小さな展示ルーム「ココロ」にて個展開催。
*作家在廊日…8/22(土)・23(日)・29(土)

←「蔦」 2009年 水彩

数年前、ニューヨークの直美さんのもとを訪ねた。初めての海外旅行に胸膨らませたものの、案外普通の観光地で、日本人も多く、なんだか「外国」という感じがしない。救急車がけたたましく鳴り響く、アジア人の多い地域にある直美さんのアパートメントも、亀田に住んでいたころ遊びにいった直美さんちの感覚に近い。遠く、海を越えただけで、仕事したり家事をしたり、そういう感じはほとんど変わらない。
ニューヨークで描かれた直美さんの絵に触れたとき、それは確かにニューヨークの人々や風景が描かれているのだけれど、不思議と身近な親しみ深いものに感じられ、心惹かれた。そこに人の暮らしがあり、風景がある。
直美さんはニューヨークで「生活」している。仕事したり家事をしたり。そして絵を描く。そんな当たり前のことに改めて納得させられた。 (井上 朗子)

 



◎絵屋宵らいぶ2
 〜とある夏の日の優しい空間、一期一会で終われない共演〜
2009年8月15日(土) START 18:30〜/OPEN 18:00〜
新潟絵屋・展示室にて
昨年の夏にも開催し好評だった、絵屋スタッフ・みと企画の音楽ライブ。今年はオリジナルの楽曲で活動中の若手ミュージシャン3組と、ご高齢の二本柳茂が出演する。音楽と映像(アニメーション)が交わる空間を、どうぞお楽しみに。
出演:conte、森田花壇、茶柱、二本柳茂 映像:漫画研究会 犀の眼
参加費:\1,000(1drink) 定員:30名
要申し込み:新潟絵屋まで Tel.&Fax. 025-222-6888 eya@h5.dion.ne.jp
主催:新潟絵屋 企画:みと


◎「日本酒の会 夏編 ―想天坊―」7月5日(日)
夏と冬に開催し、毎回好評の日本酒の会。今回は河忠酒造さん(長岡)の日本酒をセレクトし、蔵元の解説を交えながら聞き酒した。会場は、水をテーマに写真を撮り続けている、みやがわともこさんの個展・展示室。作品がとてもいい演出をして、今回も好評だった。日本酒好きの共通項で集まった人々の、異業種交流会のような雰囲気が毎回面白い。( I )


松本健宏 手ぬぐい 第2弾
京都の染色作家・松本健宏さんの一枚一枚蝋防染して染めた「蝋纈手拭い」が、さらに入荷。手拭いは包装にもおすすめ。(「堀割計画」 ¥2,000)
石原奈穂子さんによる、韓国の民画を紹介するシリーズ
8月は花と鳥、9月は烏賊が登場します。(「蓮花図」 ¥8,000)

「蓮花図」 蓮の花は牡丹と同じように民画の素材として多く登場する花だ。韓国の民画の本では、「牡丹を花の王とするなら蓮の花は花の君子」と表現している。泥の中に生きながらも汚い水を一滴も身につけない清雅さと高潔な姿は君子の比喩となっているからだ。そのため儒教でも仏教に劣らず君子の花としてほめたたえるという。
 蓮の花は花と実が同時に生長する特性があるため、息子を望む念願を開いた蓮の花で表現した。ぎっしりと詰まったハスの実は多男を象徴する。それだけではなく蓮の花の「蓮」という字が続くという意味の「連」と音が同じため、「連」と書くべき所に代わりに蓮の花の絵を描いたりした。相次いで息子がたくさん生まれることを望む意味を込めて息子を象徴する対象物と蓮の花を一緒に描く場合はこのような例と見ることができる。

「花鳥図」 いかにもユニークな姿のこの鳥は「コノハズク」だという。絵を描くにあたってコノハズクを調べたがお世辞にも似ているとは言えない…。でもこの存在感に圧倒され描かせていただいた。韓国独特のユーモア感、おおらかさ、絶妙の脱力加減をお伝えできていたら、うれしい。民画の花鳥図は鶴・鳳凰・雁・おしどりを代表に、鴨・雉・鷹・スズメと多様だが、コノハズクが描かれることは希だ。

絵屋便、DMの配達を担当する絵屋運営委員・田代のはみだし連載コラム
タシロ便がゆく ―熱く赤い道 編その2―

昨今の高齢者はお元気な方が多い。Sさんもまた、俳句をたしなみ水彩画を描き、あちらこちらのギャラリーに作品を観にいかれる。そこで絵について、俳句について、楽しげに語られるのだが、ある日のこと、ふっとおっしゃった。「私、東京大空襲。自分の目でみたんですよ」。(つづく)
タシロ…田代早苗(俳人・新潟絵屋運営委員)

   

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