2009年9月


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2009年9月2日〜9月10日

企画 大倉宏

竹久野生(たけひさ のぶ)
■ 東京都生まれ。上智大学文学部史学科卒業後、1968年造園家の夫とともに南米コロンビアに移住。80年コロンビア国立大学芸術学部美術科卒業。以後日本とコロンビアで美術活動を行う。日本では画廊ゆめじ(東京)での発表を中心に全国各地で個展。2004年9月絵屋で個展。詩画集に『アンデスの風と石が運んだもの』(三修社)がある。

←竹久野生 「仮面パーティ」 2007年
      油彩、キャンバス 17.3×13.6cm

 

吉田加南子(よしだ かなこ)
■ 東京都生まれ。詩人。現在学習院大学教授(仏文学)。詩集に『仕事』(詩学社)『星飼い』『匂い』『定本 闇』(高見順賞受賞)『波』『吉田加南子詩集』『さかな』(思潮社)等。詩論、随想に『幸福論』(思潮社)『言葉のむこうから』(みすず書房)。他訳書多数。2004年5月絵屋にて絵の個展。

←吉田加南子 「中国、石門の狭谷」
 (中国・漢中市外 褒斜道石門狭谷 褒河ダム)
  2007年8月19日

コロンビア在住の画家竹久野生さんの個展を詩人の吉田加南子さんの企画で開催したのが5年前。その吉田さんがチリの詩人ネルーダの死後出版された悲劇的な詩集『2000年』を訳し、竹久さんが絵を付す詩画集(未知谷より刊行予定)の計画が進行中で、今回実はその詩画集の詩と絵を紹介する展覧会の予定だった。が、詩画集はまだ完成していないので、お二人の絵を並べる展覧会とした。そんな経緯がなければ実現しなかった2人展をひそかに私は喜ぶ。竹久さんと吉田さんの表現はともに、本質的に直感的だと思う。ひとつの言葉、形、線が一挙に詩想全体に切り込む。その一つ一つがつながって生まれる絵や詩は、だからどの部分をとってもそのまま2人の絵であり、詩なのだ。
会場には今夏竹久さんが南半球で制作中の詩画集のための絵も到着の予定で、ネルーダの詩を含む吉田さんの詩の朗読とお二人のトークも予定している。(大倉 宏)

 


 

2009年9月12日〜9月20日

企画 大倉宏

石原けいこ(いしはら けいこ)
■ 東京生まれ。California College of Artsで絵画を学ぶ。2000年イタリアUnbriaのinternational School of Paintingの絵画と彫刻のサマーセッションに参加。05、06年Cecile Moochneck Gallery(バークレー)での展覧会、08年Red Dot Art Fair(ニューヨーク)に参加。個展は03年カフェひょうたん島(東京)、04―08年ギャラリーブリキ星(東京)、Front Gallery(オークランド)。現在アメリカ合衆国、バークレーに住む。 ■会期中来日予定

←「音(いん)」 2009年 油彩、キャンバス 20×20cm

東京西荻窪にある魅力的な画廊ギャラリーブリキ星での個展で、初めてお会いした石原さんは、羊飼いがはくという素敵な靴をはいていた。アメリカのバークレーに住む彼女は、その靴でいろいろな場所に旅するらしい。昨年は東京から四国へ行き、新潟にも現われた。ブリキ星の個展で私は小さい写真の作品を買い、以来ずっと絵屋のスタッフルームの一角に掛けている。時折メールで送られてくる新作(絵)の画像を見ながら、時折大きく変貌する石原さんの表現をつなぐ強い霧の力を思う。霧は見える世界をさえぎるが、霧の朝ひとはいい知れずわくわくする。さえぎられることがもたらす、不思議な、静けさの中の興奮。石原さんの最近作の、あいまいな影をそのまま現実存在として、筆のかすかな息で立ち上がらせたような絵に惹かれる。谷間の霧に包まれ、静かにうごめく羊の群れと眠る羊飼いの夢の生々しいごつごつした手ざわりを感じる。 (大倉 宏)

 


 

2009年9月22日〜9月30日

企画 斎藤健一

BAKU斉藤(ばく さいとう)
■ 1948年新潟市生まれ。94年からアンコール遺跡群の尊顔を中心に撮影。主な展覧会に、97年朝日ギャラリー企画展「東京」、99年ユネスコパリ展「パリ」、2006年アンコール遺跡の尊顔展「国連ニューヨーク」等がある。

←BAKU斉藤 「聳え立つ尊顔たち」1995年 バイヨン寺院北壁


詩:斎藤健一(さいとう けんいち) 1949年新潟市生まれ。詩集『海岸の草』、『航海燈』、『実体風貌』、その他評論多数。

BAKU斉藤から電話がかかるとき、自分を名告ったのち、
「元気か」とややくぐもった声がひびくのである。
ぼくは素っ気なく「おお。」と応じる。
実はうれしいのだが、いつもこれだ。
彼との約束が10年ぶりで果たせることになった。
BAKUの渾身の勇をふるったアンコールの顔17点。
ぼくの詩17篇。
自分は雨雲の岸壁にときどき眼を投じ、
2階の机上でノートに詩を書き誌したのである。
BAKUは詩をまだ読んでいない。
写真は撮る者の全身の表現に違いない。
それゆえにこの上なく美しいのだ。
彼はぼそっと吐き出す。「55歳ぐらいの命だと考えていたが。」
奇妙なことにこれは当たらなかった。
彼の知らぬ忍耐が隠されているからなのだ。  (斎藤健一)

 


 

竹久野生・吉田加南子展関連イベント◎詩の朗読とお話し
2009年9月6日(日) 午後5時〜(パーティ 午後6時〜) 参加料:500円
竹久野生+吉田加南子(朗読) 聞き手…大倉宏
ネルーダの『2000年』ほかの朗読と、絵と詩をめぐって話を伺います。
終了後お二人を囲みささやかなパーティもあります。


「総会・会員交流会」7月20日(月・祝)
砂丘館の座敷にて、理事と正会員とで、前年度(2008年6月1日〜09年5月31日)の事業および会計報告、今年度計画などを審議しました。中でも会計年度を期首4月―期末3月へ変更することについて審議し、承認を得て、変則的に今年度は期首6月―期末3月となります。総会につづいて開催した会員交流会では、会員のSさんが2年連続で参加。絵屋発行のフリーペーパー「新潟島とその周辺 ギャラリーミュージアムマップ」の広告欄をスクラップしているとの意外なお話を聞け、嬉しいことでした。( I )


石原奈穂子さんによる、韓国の民画を紹介するシリーズ
9月は烏賊が登場します。

「漁海図」(¥21,000)
魚たちがぶらぶらと遊び歩く姿は悠々自適だ。平和感・のんびり感を醸し出す。
昼も夜も目をあけている魚は危険を警戒し追い払うとして、邪気の意味がある。また仲の良い夫婦を象徴し多産を意味することもある。
鯉をはじめナマズなどが描かれるが、エビ・イカ・カニなどは立身出世・君子の姿・子孫繁栄・長生きを象徴として描かれる。

Book 「timeless piece 未来にのこしたい仕事」
(監修 ジョー横溝/ブルースインターアクションズ) ¥1,680
最先端から伝統芸能まで、「天職」をつかんだ14人へのインタビュー集。
書家の華雪さんも登場します。

絵屋便、DMの配達を担当する絵屋運営委員・田代のはみだし連載コラム
タシロ便がゆく ―熱く赤い道 編その3―

Sさんの俳句歴は長い。昭和19年入隊し、東京の浜町公園にあった高射砲隊に配属になったときも高濱虚子編の歳時記を手元から離さなかった。
 正月の兵静かなり藁砧
B29の来襲しない休日にはこのような句も詠んでいた。3月10日。その日は慰問で、長谷川一夫出演の映画が上映される予定だった。(つづく)
タシロ…田代早苗(俳人・新潟絵屋運営委員)

   

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