2012年3月
 

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藤原 祥展

2012年3月2日〜10日

企画 大倉宏
 
藤原 祥「土地」

藤原 祥(ふじわら しょう)
■ 1950年島根県松江市生まれ。スペイン古典の内的劇性に強く惹かれる。サン・フェルナンド国立美術学校(スペイン/マドリード)卒。77年タラベラ・デ・ラ・レイナ賞名誉賞受賞。グループ展に95、2002年「21+∞展」(O美術館、東京都美術館)、91-97年「アジア交流展」(ソウル、香港ほか)等。個展は80年島根県立博物館、82年ギャラリー檜(東京)、92年ギャラリーHera(ストックホルム)、93年ギャラリー睦(千葉)、03年、09、11年ニッチギャラリー(東京)、07年11月、08年9月、10年5月新潟絵屋等。近年は植物や風景から造形のヒントを得、植物園等でも立体による展示を試みている。

←「土地」2011年 ミクストメディア、紙
  62.0×98.0cm

 5年前の、絵屋での最初の藤原祥の個展の印象は光だった。
けれど、その後の2回の展示では、彼の制作のもっと底にある土の感触がしみてきた。
 この冬の新潟は大雪で、センターラインなど地に刻まれた記号が消え、そのことで、隠れていた地面=土の顔が現れた。新雪は、たちまち足跡やタイヤの轍でぐちゃぐちゃになったけれど、人がじかに触れ、乱し、乱された地の光景に、思いがけない親しみと暖かさを感じた自分がいた。
 それは、藤原祥の絵に感じるものと同じだった。
 絵という地面を画家は走り、転び、くじける。これではダメだと苦悶してもいるかもしれない。でもその土に、直に刻まれた軌跡が、しみる。人がそこにいる、生きている暖かさがある。(大倉 宏)

 



 
梅田恭子展

2012年3月12日〜20日

企画 小見秀男
 
梅田恭子「耳と糸 二十八」

鉛筆のドローイングと銅版画を展示

■作家在廊日:2/12、13、18、19、20(18日は夕方)

梅田恭子(うめだ きょうこ)
■ 1971年東京都生まれ。94年多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン専攻卒業、96年同大学大学院美術研究科デザイン専攻修了。94年から個展を中心に、東京、大阪、名古屋、新潟などで作品展を開催。新潟絵屋では2010年3月個展「ディム、ソノ音」開催。刊行物に銅版画集『ツブノヒトツヒトツ』(2009年 言水制作室)がある。
http://umedakyoko.com/

←「耳と糸 二十八」2011年 銅版画
  5.7×13.0cm

 梅田さんの表現は痛く、そして眩いけれど魅せられてきた。どこがどう痛いのか説明できないが、何故に痛く、眩いのかは分かっている。自己の「存在」を凝視し、あまりにピュアな姿勢で制作に挑む作家の内面に昇華した繊細で強靭なミクロコスモスを前に言葉を失い、悟性と感受性が否応なく照射されているのに気づくから。だからと言って、心を射るような厳しい表現だけではない。文芸における「もののあわれ」の詠嘆に照応するような抒情も宿し、作者の内には怜悧な観察者に幻視のロマンチストが寄り添っているのがわかる。それからもし、あなたの心の余白にまだ柔らかな琴の線が残されていれば、闇の空間が奏でるピアニッシモの旋律に共振するだろう。どうぞ、梅田さんの心奥からの表現に眼と耳を凝らして欲しい。こころから「私」を浄化し、精神の糧とするために。(小見秀男)

 


 
野中光正展

2012年3月22日〜30日

企画 大倉宏
 
野中光正「1112

野中光正(のなか みつまさ)
■ 1949年東京都鳥越生まれ。73年木版画・絵画をはじめる。68〜71年太平洋美術研究所、73〜82年渋谷洋画人体研究所で描く。77年横浜国際船客ターミナルでの初個展。89年新潟県高柳町に移住、紙漉を学ぶ。91年かやぶきの家(高柳)で個展、同年10月末に東京に戻る。以後は、ゆーじん画廊、ウィリアムモリスギャラリー、ギャラリーアビアント、高志の生紙工房ギャラリー(高柳)などで個展。新潟絵屋では01年3月、05年3月(画廊 Full Moonと2会場で)、06年11月、10年3月に個展開催。

←「111222」2011年 木版画+手彩色、和紙
  48.0×37.0cm

■作家在廊日:3/23、24、25

 ちゃきちゃきの江戸っ子という言葉がある。
江戸っ子でない私には、「ちゃきちゃき」のニュアンスがいまひとつよく掴めない。でも、長年、野中光正の絵を見てきて、時々の、微妙だが、どこかくっきりもした変貌に接し、わからないながらその言葉を思い起こしてきた。
 生まれ育ちも、今の住まいも浅草の野中は、生粋の江戸っ子・下町っ子だが、見たところは雲のように茫洋とした雰囲気の人で、あまり江戸っ子ぽくない。シンプルな抽象画は、同じ江戸でも一見東京・山の手風でもある。
しかし、その底に、どこか私は東京下町を、自分のよく知らない「ちゃきちゃき」を感じてきた。近年の変貌で、シンプルな形がずれ、衝突し崩れたり、勢いのある線が色面上を跳ね飛びだしたのを見ると、内なる野中のきっぷのよさが、俄然前に迫り出してきたように感じる。
 新潟に住む私には、エキゾチックな画面でもある。(大倉 宏)

 

 
  

3月31日(土)14:00〜15:30

絵を見る話の会2

案内人/大倉宏(新潟絵屋代表・美術評論家)
ゲスト/田村佑(ギターと紙芝居)

参加費500円


■1月21日 絵本サロン(エズラ・ジャック・キーツ)
「ひとりの作家の絵本を丁寧に読み聞かせてもらい、ゆったりとした時間があった。参考テキストのプロフィールは作家の人生が見えてきた。いつもは手元で開く絵本を遠目で見て、配色が美しいことに改めて感心した」(Y)
※4月の絵本サロンはお休みです。
■1月23日 渡邊博展ギャラリートーク「見比べて楽しむ抽象画」
「絵を見て、意味や作者の意図を読もうとしたことがあった。抽象画は特に難しいように思っていたけれど、大倉さんの話を聞いて、考えないように意識するだけで絵の世界にうんと近づける感じがした」(M)
■1月31日 俳句の会「紙とエンピツと」
「どきどきで句会の初体験をさせて頂きましたが、大変楽しかったです。とてもワクワクし、今もそれが続いています。参加の皆さん方のたたずまいにも静かに感動いたしました。」(R)

これまでもコンサートやダンスなどの催しを企画してきましたが、2012年は、年間を通じ、絵本の読書会・句会の会・絵を見る話の会などの講座やギャラリートークを積極的に開催していきます。

タシロ便がゆく

絵屋便、DMの配達を担当する絵屋運営委員・田代の12ヶ月
タシロ便がゆく ―草猫が詠む編 その15
杜氏の名は雪三郎や帰りけり 草猫

実はこの雪三郎さん、漆職人で杜氏ではない。全くのフィクション。でも春になると酒の仕込みを終えて故郷へ帰ってゆく杜氏。こんな名前の人がいたら、と想像してしまう。深く雪の残る山村の小さな村へと帰ってゆくのだろうか。
タシロ…田代早苗(俳人・新潟絵屋運営委員)

俳句の会「紙とエンピツと」 案内人/田代草猫
5/31、7/31、10/31 各回10:30〜12:00(参加料500円/申込受付中)

   

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