2013年3月


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2013年4月の絵屋

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素描2人展 緑川俊一・吉田淳治

2013年3月2日〜10日

企画 大倉 宏
 
緑川俊一「顔」 吉田淳治「D-74」
「顔」2000年代 コンテ・紙 25.7×18.2cm 「D-74」2008年 鉛筆・紙 21.7×26.8cm

緑川俊一(みどりかわ しゅんいち)
■ 1947年東京都生まれ。67年絵を始める。71年小笠原諸島の父島、母島、72年小樽、77年東京、88〜91年ニューヨークに住む。マエダ画廊(名古屋)、現代画廊、ギャラリー川船、空想・ガレリア、ギャラリー汲美、羽黒洞木村東介(東京)、たけうち画廊(新潟)などで個展。ほかグループ展多数。新潟絵屋では2001・09年個展開催。千葉県船橋市在住。

吉田淳治(よしだ じゅんじ)
■ 1951年愛媛県宇和島市生まれ。1970〜76年東京、以後は宇和島で制作。81年パリに1カ月滞在、イタリアに旅行。宇和島市立伊達博物館、べにばら画廊(宇和島)、松山三越、田都画廊(松山)、マエダ画廊、Gallery芽楽(名古屋)、現代画廊、紀伊國屋画廊、始弘画廊(東京)、ギャラリー小蕪亭(長野)、新潟絵屋、画廊Full Moon(新潟)などで個展。グループ展多数。2011年「絵画のwaltz-吉田淳治展」(町立久万美術館)、12年7月〜9月「絵画風景 吉田淳治展」(砂丘館)が開催される。http://junji-yoshida.webhop.info/

 たとえば手を左右に振るような、誰もができる体の動きによって人を感動させるダンサーにこそ、私は感嘆するのだけれど、その動く手が紙の上で、鉛筆を持っていれば、素の描線――素描が、そこに生まれる。すぐれたダンサーの動く手に、多くのものが含まれ語られるように、すぐれた素描家の手が生み出す線も、その画家だけがもつ豊かさを、抱えている。鉛筆が絵筆になれば素描は絵になるが、絵の底には手の動きが、つまり素描が、潜んでいる。
 昨年夏の砂丘館の吉田淳治展では、色彩の美しい油彩を並べた。深く低く響くバスの声のような画面に目を近づけると、鑿跡に似た硬質の筆触が見えた。その筆触―動き(つまり素描)の集積が、色を共鳴させているのだった。吉田さんからは、同時期に描かれた鉛筆の素描も預かっていたが、スペースの関係で展示できなかった。緑川俊一の素描を、砂丘館に時折飾っている。反応していく人がいる。この人の絵をもっと見たいと言われる。多くではない反響が、強い。無数の表情を秘めつつ、早く、放り投げるような緑川さんの屈曲する線も、独特さではひけをとらない。
 強さと深さ、剛毅と繊細を兼ね備えた2人の素描を並べて、素描の力を感じてみたくなった。(大倉 宏)

 


 
信田俊郎展

2013年3月12日〜20日

企画 大倉 宏
 

信田俊郎「絵画No.10-Two Spaces」

信田俊郎(しだ としろう)
■ 1953佐渡市赤泊生まれ。78年新潟大学教育学部美術科卒。在学中久保尋二、小町谷朝生、亀倉康之、長谷部昇、小磯稔各氏の指導を得、85年には故末松正樹氏と初めて会う。88年ニューヨーク近代美術館で見た主にバーネット・ニューマンの作品によってカラーフィールドペインティングの意味をはっきり知り、以後の制作の出発点となる。個展、グループ展多数。新潟絵屋では2006・08・12年に個展開催。2011年「新潟の画家たち 色と形を紡いで〜そして、希望へ〜」(万代島美術館)出品。

←「絵画No.10-Two Spaces」
  2013年 油彩・キャンバス 112.0×162.0cm

 信田俊郎のアトリエは、入ると正面に、制作中の大きい油絵が掛かっている。真っ先に、そうやって絵を見る。そして描く。シンプルな繰り返しが伝わる。使い尽くされたチューブの堆積が床に小さい丘を作っている。踏むと足裏が心地よい。
 新作の油彩がよかった。彼が長年つれそってきたグリッド(格子)のパターンを、形が自らの手で掴み、動かそうとする。その渾身の力や、形を横断する筆触のゆらぎが、共に「色」と組み合っている。そうして生まれつつある色彩空間の深さが、グリッドパターン全体を、違う位置にずらしはじめている気配が見える。
 小さい水彩画にも、同じグリッドと、身をふりほどこうとする色とのドラマが、くっきり見える。以前の水彩の自由は、油彩とともに、グリッドと組み合う不自由を選択しなおしたかのようだ。それで、それが、いいのだと、見る私も感じる。自分に残されたひとつの課題を、シンプルに生きはじめた画家の、無駄のない空気がアトリエに流れている。(大倉 宏)

 


  

「絵屋を出る」
日頃は絵屋でさまざまな作品と共に時を過ごしています。
私にとって最高に嬉しいことは、絵屋から送り出した作品たちのその後を見られることです。2013年、絵屋にいるだけでなく、お客様のお部屋に合った作品を一緒に探す活動を始めます。新潟絵屋はオープンから13年目。その間に出会ったさまざまな作家さんの作品をご提案し、お部屋の環境、壁の状況を見て、額装や取り付け金具まで細やかにご相談をお受けします。居心地のよいお部屋づくりのお手伝いをさせていただきます。

■お問い合せ 
新潟絵屋・井上美雪 025-222-6888 info@niigata-eya.jp


タシロ便がゆく

絵屋便、DMの配達を担当する絵屋運営委員・田代の12ヶ月
タシロ便がゆく ―草猫が詠む編 その27
頬白の来て頬白を呼んでをり 草猫

庭に飛んで来た頬白がぴぴっと鳴くと、どこからかもう一羽、やって来た。鳥の言葉が解ったら、どんなに楽しいだろうとよく思う。でも、こんな時は解ったところで面白くもないのだろうな。人間の恋人たちのように、内容なんて、どうでもよく、只々お互いに言葉をからめていく。それが嬉しくて嬉しくて、たまらないのだろう。きっと。
タシロ…田代早苗(俳人・新潟絵屋運営委員)

俳句の会「みんな違ってみんなヘン」(参加料500円/申込受付中)

   

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