2013年6月


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2013年7月の絵屋

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宇梶静江展

2013年6月2日〜10日

企画 大倉 宏
 

宇梶静江「むかう」

宇梶静江(うかじ しずえ)
■ 1933年北海道浦河郡アイヌの家庭に生まれる。20歳で中学を卒業後東京に行き苦学。結婚後は東京に来るアイヌのウタリの面倒を見ながら2児を育てる。72年朝日新聞にアイヌの連帯を呼びかける投書をし反響を呼ぶ。アイヌの権利獲得の活動に挺身する。60歳をすぎてアイヌ刺繍を学び直し、和服ちと刺繍による古布絵でアイヌの精神世界を描く作品制作を始める。古布絵による絵本に『シマフクロウとサケ』『セミ神さまのお告げ』『トーキナ・ト』(いずれも福音館書店)。2011年吉川英治文化賞受賞。水と土の芸術祭2012(新潟市)に参加。

←「むかう」2013年 刺繍 25.5×18.0cm

宇梶静江絵本原画展示
2013年 6月3〜9日 10:00〜20:00
(6/8 12:00〜 6/9 12:00〜15:00)

会場:北書店(未刊行の絵本原画1点を展示します。
なお6月13〜30日に新潟絵屋での展示作品の一部を北書店でも展示します。)
 昨年の水と土の芸術祭に展示された、宇梶静江さんのフクロウの刺繍はすばらしかった。特に展示室入口の掛け軸の、もりあがった糸が、フクロウの体を包む羽そのものので迫力があった。
 宇梶さんの古布絵
(こふえ)による絵本『シマフクロウとサケ』では、カムイ(神)であるフクロウが柄杓で海水を干上がらし、満たす。生きているのは森の野生動物であり、心に壮大な神話や物語や世界観を生み出す精神生物でもあるフクロウだ。木の根や幹や枝が変じたような力強い糸の表情に、宇梶さんが復権に尽力してきたアイヌ文化が、ヤマトが北に追い、抑圧してきた森の文化の血を引いていることを強く感じた。
 80歳になるその宇梶さんに、無謀にも新作の個展をお願いした。仕上がってきた刺繍の翼の生命感と気品に息をのんだ。その芸術家魂の底から北の森や海や川の、それらと共に生きてきた人(アイヌ)の心の声が聞こえてくる。(大倉 宏)
※古布絵:アイヌの伝統刺繍をベースに古布と糸で作られた作品。

 


 
蓮池もも展

2013年6月12日〜20日

企画 大倉 宏
 

蓮池もも「No.69」

蓮池もも(はすいけ もも)
■ 1983年新潟市生まれ。2006年fullmoon upstairs、07、08、09、10、11年画廊Full Moonで個展。新潟絵屋では10年6月、12年6月に個展開催。12年2月「新潟の画廊から 栗田宏/アンティエ・グメルス/蓮池もも」(ギャラリーKANI/東京中野)出品。12年〜絵屋便・表紙絵を連載する。

←「No.69」2013年 色鉛筆・紙 9.5×9.5cm

 絵を見る話の会
6月14日(金)19時15分〜20時半
会場:砂丘館(中央区西大畑町 / 700円 / 要申込)
一枚の絵を見ながら案内人と絵の中を歩く、解説ではないお話し。今回の一枚は蓮池もも作品を選びました。
ゲスト:田村佑(ギターと紙芝居) 
喫茶:カトレア草舎
 蓮池ももが文様を描き始めた。模様や文様は衣服や壁紙やカーテンなど身の回りにあふれている。けれど1万年以上前、縄文の人が、細竹でやわらかい土に波打つ線を最初に刻み、突いて点を刻んだとき、その人は何を感じただろう。その<何か>が、白い紙を針で掻き、鉛筆でその上を擦るように塗り込める、文様に湧出している。背景にしりぞくのでも、空気を生み出すのでもない。文様を見つめる者を内部に引き込み、果てのない奥へ誘う。その果てない場所を、掘り進む針先が、闇を吸い、ほのかな光に変容させていく。
 方形のシリーズは、闇と光の呼吸を繰り返すなかでその枠を変容させ、文様そのものが、生命体のように「生き」はじめる。中期の縄文土器にあふれる文様が、器形それ自体を変容させていったように。いつも「新しく始まる」波が砂を運び、削り、土地を生成していくように。(大倉 宏)

 


 
峰村リツ子 ドローイングと油彩

2013年6月22日〜30日

企画 大倉 宏
 

峰村リツ子「裸婦」

峰村リツ子(みねむら りつこ)
■ 1907年新潟市の沼垂に生まれる。生家は味噌の醸造業。10代後半に東京へ行き、太平洋美術研究所で油絵を学ぶ。野口弥太郎、里見勝蔵、児島善三郎らの指導を受ける。女性の油絵画家の草分けの一人。戦前は1930年協会展、二科展、独立美術協会に出品。34年三岸節子、桜井浜江、佐州敏子らとグループ女艸会を結成。戦後は女流画家協会、自由美術家協会等で発表後、70歳を越えてからは主に個展で発表。洲之内徹のエッセイ「気まぐれ美術館」でもしばしば紹介された。93年朝日ギャラリーで自薦展を開催。95年没。

←「裸婦」1983年 鉛筆・紙 30.2×22.0cm

■同時期開催
 ありのまま
人の裸を描くことはとらわれない自由を呼吸すること
峰村リツ子展 
2013年5月30日(木)〜6月30日(日)
会場・砂丘館
(中央区西大畑町 / 月休 / 観覧無料 / 9時〜21時)
6月22日(土)15時〜16時半 ギャラリートーク
お話:荒木いづみ
(峰村リツ子四女)/ 聞き手:大倉宏
参加料500円
(直接会場へ)
会場・砂丘館
 昭和のはじめ、まだ少女と言っていい年頃の峰村リツ子は、自立した生き方に憧れて新潟から東京に行き、太平洋美術学校で絵を描いた。佐伯佑三らの影響で「日本的フォービズム」と後に言われる激しい筆致の絵が花開いた時代。新潟市美術館にある「女の像」には、佐伯の友人里見勝蔵の筆が入っているという話もあり、大きな目はそう言われると里見風だが、そうやって彼女は当時の一番いきのいい美術表現を肌で呼吸した。 戦後は娘さんの住むニューヨークへ行き、そこの美術学校で、様々な人種に混じり和服でたくさんのヌードを描いた。少女の大胆さがずっと生きていたのだ。日本的フォービズムは、明治以来の西洋画の学習が置き去りにした<線>の再発見だったのだと思う。ヒトを前に峰村さんは飽くことなく線を引き続けた。その時間の厚みが、どんな国の人間の裸を前にしても、のびのびと手が動く自由を生み出した。
 砂丘館で展示される大らかで美しい油絵の底にある線の力を、絵屋の会場で感じてもらいたい。(大倉 宏)

 


  
トピックス

5月2日 北書店にて
(中央・いまきみちさん
  右・西村繁男さん)
2会場で開催した「いまきみち・西村繁男展」、北書店では絵本のスライドショーとトークを開催し、小さいお客様も多く、40人余りにご参加いただきました。


タシロ便がゆく

絵屋便、DMの配達を担当する絵屋運営委員・田代の12ヶ月
タシロ便がゆく ―草猫が詠む編 その30
めまひかと思えば余震や麦の秋 草猫

四十才を越えた女には「更年期」というオソロしいものがやって来るらしい。それでクラッと来るたびに、これがウワサの?と思うのだけど、2004年10月のクラッは中越地震。2007年のクラッは中越沖地震。その後いくたびもクラッとしたけれどみな余震で、おかげさまでまだ更年期は来てないらしい。
タシロ…田代早苗(俳人・新潟絵屋運営委員) 
俳句の会「みんな違って、みんなヘン」
5月31日(金)10:30〜12:00 会場:新潟絵屋展示室/各回500円
毎回テーマを変え、お茶を飲みながら俳句の解説と実作をしていきます。折々の季節に、自分の言葉を探してみましょう。
5月のテーマは「家の中の亡命者」です。
案内人:田代草猫(たしろ そうびょう)2000年より俳句同人誌「童子」にて句作。05年日本伝統俳句協会入会。
今後の予定:7月31日(水)「音は何色」・10月31日(木)「キッパリ」(単回での参加可能/経験問わず/要予約)

ニュース

募集の呼びかけに応えて、2012.13の2年度で、年度平均100名を超える寄付会員への入会、更新をいただくことができました。認定NPO法人認定に向けてのPST(パブリックサポートテスト)の条件を満たしたことになります。手続きにはまだ時間がかかりそうですが、新しい年度内(〜2014.3)に認定NPO法人の認定が実現できるよう努力していきます。今後ともよろしくお願いいたします。

大倉 宏(新潟絵屋代表) 

   

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