2010年7月


2010年6月の絵屋

2010年8月の絵屋

  新潟絵屋あんない 作家INDEX Blog  

 

2010年7月2日〜7月10日

企画 大倉 宏

菅野くにこ(かんの くにこ)
■ 東京都生まれ。武蔵野美術大学油画科卒業後、リトグラフ、エッチングの制作を続ける。1998年より手漉き和紙による制作を始める。2001年ガレリアグラフィカ(東京)、05、07年ギャラリー舫(東京)、02、04、06、08年新潟絵屋、09年アートスペースエリコーナ(いわき)で個展。

←「女」2010年 ミクストメディア 60.0×45.0cm

菅野さんの新作「女」の赤は、どうしてこんなに「こく」があって美味しそうに見えるのだろう。年代物のいい赤ワインみたいだ。そう思いながら、近くにあった他の絵(額装前)の裏を何げなく見て驚いた。灰色の雑巾を幾重にも縫い重ねたようだ。菅野さんがあわてて、いろんなのを使っていたらそうなって…というようなことを言った。「いろんなの」がこれまで描いた絵だと聞いて、また驚いた。菅野さんはほぐした和紙を重ね貼りしながら絵を作っていく。展覧会で売れ残った絵の多くはほぐされ、再利用されるのだという。「私は制作しているときが一番楽しいので」という言葉から、以前絵屋で見たいい絵のいくつもが、もう存在しないのだと知り、私の方が今度はあわてた。
前の絵は紙だけでなく、そこに塗られた色や形も、新たな色や形が重ねられたりして再利用される。そうか。あの赤の美しさは、一度に生まれたのではなく、そんな風にいくつもの絵を、時代を、通りすぎ、齢を重ねた「こく」であり、美しさなのだ。本当にワインと同じ…と思った。(大倉 宏)

 


 

2010年7月12日〜7月20日

企画 大倉 宏
 

長谷川 徹(はせがわ とおる)
■ 1948年新潟市生まれ。69年武蔵野美術大学中退。92、94年安井賞候補。96年感動創造美術展グランプリ受賞。個展多数。新潟市在住。

←「WORKS」 2010年 アクリル、板 84.0×59.3cm

長谷川徹の絵屋での個展は7年ぶりになる。
抽象という表現が広く理解され、受容されているとは言えない新潟の環境で、妥協することなく、抽象を続ける。しかもそこへ自分の全部を注ぐ長谷川のような存在を、どうやって新潟の人々の心につなげていけるのか。これは新潟絵屋を含めた町の画廊のひとつの、重い課題かも知れない。
昨年、砂丘館でその長谷川の近作を蔵の二階に展示した。そこでサックスとコントラバスの、即興のコンサートも開いたのだが、緊張感と動きのある音楽と、昨年から変化を見せた長谷川の絵の、絵具をねじこみ、炸裂させるような画面が溶け合い、耳と目から音が体に流れ込んできた。
音楽(歌詞のない)を聞くように、絵を見るなら、抽象は響きとして、色や線の流れとして、心に入ってくる。今年の長谷川の絵は、また以前の筆数の少ない、静寂(空白)に鼓を打つような姿に戻ってきたけれど、以前になかったユーモラスな表情が垣間みえるのが面白い。その響きを、目を澄ませて、聞いてほしい。(大倉 宏)

 


 

2010年7月22日〜7月30日

企画 大倉 宏
 

フジタ・ヨウコ(藤田陽子)
■ 1995年女子美術短期大学卒。96年同専攻科修了。同年坂爪勝幸氏に師事。2000年新潟現代美術リレー展、08年越後の花鳥画展(農舞台/十日町市)出品。03、04年ギャルリー炎舎(新潟市)、05、06、07、08、09年新潟絵屋、09年ギャラリーいなば(東京)で個展。09年長三賞入選。

←「風を運ぶ鳥」 2010年 49.0×23.0×h23.0cm

フジタ・ヨウコの新作「風を運ぶ鳥」を見ていたら、感情の遠近法という言葉が浮かんだ。
陶器というモノに実在化されたイメージが、実在というよりイメージとして私にじかに入り込み、しかもそのイメージが私のなかで強烈に実在しはじめるのはなぜか。
家をかすめて飛翔する鳥。その鳥が家ほども大きいのは異様だが、その異様が、その鳥に、鳥の運んできた風に驚き、見入る心の感情を伝える。客観ではなく主観の、感情の遠近法がここでは採用されているのだ。不思議なことにその鳥の翼も胴も目も、家の壁と同じようにこすれ、はがれ、くすみ??「そまって」いる、家に。
かくして家ほども大きな鳥が、家にそまった焼き物は、奇妙な陶器であるより早く、飛び来るものに心を奪われ<あっ>と思う、一瞬の感情を私の心へ放り込むとともに、感情というモノにあらざるものを、土にひねり、窯で焼き、出土品のような肌をもつモノとして在らしめる。感情が生き生きした感情のまま、古物のように物質化する。その魔法の大胆とストレートが実にフジタ・ヨウコ的だと思う。(大倉 宏)

 



8月の
新潟絵屋
 02日(月)〜10日(火) 清水友裕展
 22日(日)〜30日(月) 中尾昌吾展

INFORMATION
新潟絵屋の企画について

 

NPO法人化に伴い、会員が3種類になります。
     正会員     年会費 5,000円
     個人賛助会員  年会費 5,000円
     法人賛助会員  年会費10,000円
  
入会金はいずれも不要。正会員は新潟絵屋の総会に参加でき議決権を有します。

入会方法
■直接絵屋でお申し込みください。郵便振込もご利用になれます。その場合は、郵便振替口座〈新潟絵屋00510-6-61917〉へ住所・氏名・電話番号・入会希望・会員の種類をご記入のうえ、会費をご入金ください。
■会員には1年間有効の会員証を発行します。この会員証の提示により1企画1作品に限り購入が1割引、絵屋で行われる有料の催しが2割引になります。また、コーヒーも無料サービスいたします。どうぞご利用ください。
■更新期間内に継続手続きをされた「継続会員」の方は、会員証の提示により作品購入時に1000円割引(1回のみ)いたします。
■これまでの会員は、引き続き個人賛助会員とさせていただきます。
■常時カンパ(運営協力費)も受け付けています。
※郵便振込でご入金の方には、次回の絵屋便と一緒に新会員証を送付させていただきますが、手続き確認時に会員証を作成しますので、直接絵屋でもお渡しできます。


1. 年会費が変わりました。
  正会員5,000円←6,000円、個人賛助会員5,000円、法人賛助会員10,000円
  正会員は年に一度開催の総会に参加でき議決権を有します。
  絵屋の活動に一歩踏み込んだ関わり方の選択肢です。


2. 北書店へ出店
  市役所前にある町の本屋さんで、展示の企画をしていきます。
  津田真帆展 6月15日(火)〜7月3日(土)
  北書店:中央区医学町通2番町10-1-101 tel.025-201-7466 10:00〜20:00・日休


絵屋便、DMの配達を担当する絵屋運営委員・田代のはみだし連載コラム
タシロ便がゆく ―ふと見た暗がり編 その2
思うに、印象的な風景や美しい景色といったものは、心の中の日常とは、ちょっと違った部分に作用する。それは意外と精神の深い部分に入り込んでいかないのではないだろうか。人を好きになる時、素敵だとか、可愛いいとかいった解りやすい要素よりも、ちょっとしたしぐさだったり声の感じだったりと、言葉にならないような事の方が心のひだに沁みていくのと同じなんだろう。(つづく)。
タシロ…田代早苗(俳人・新潟絵屋運営委員)

   

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