2011年6月


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池田美弥子展

2011年6月2日〜10日

企画 大倉宏
 
池田美弥子「この坂から」

池田美弥子(いけだ みやこ)
■ 新潟市生まれ。武蔵野美術大学卒業。創画会会友。1996年三渓日本画大賞展佳作賞、2004年「新潟の作家100人展」、05年「第3回トリエンナーレ豊橋」などに出品。個展、グループ展毎年開催。新潟日報「甘口 辛口」(02、08年)、『中世絵画のマトリックス』(青簡舎)などにコラムを執筆。

←「この坂から」2011年 岩絵の具、箔、ニカワ、和紙
 60.6×72.7cm

 池田美弥子の風景は「上からの視点」で描かれる。
 広重の名所絵にも、バードアイのものがあるが、池田さんのは鳥でなく、目につながる体が人で、浮かんだ体はパーマンかのび太のように、中・低速で移動しているように思える。今回の個展は絵屋や砂丘館のあたりの宙を、その体がゆるりと飛ぶ。
 そういえば、浮世絵以前の日本の絵、中世の絵巻や説話画の多くも俯瞰図である。ただそこには視点に連接した体の感覚は希薄で、透明だ。物語の時間や出来事を入れる。多収納の容れ物としての古い俯瞰構図には、異なる時空のつなぎに「雲」が登場する。池田さんの絵にも、浮く「体」と土地の間に、柔らかい雲が浮遊する。透明だった場所に「私」という体があらわれ、伝承のかわりに「私の時間」が流れる土地や町を、雲とともに動きながら俯瞰し、語ろうとする、そういう現在形の、プライベートな、開かれた物語景を池田さんは描こうとしているのかも知れない。(大倉宏)

 


 
片山健展

2011年6月12日〜20日

企画 大倉宏
 

片山健「新しい皿」

片山健(かたやま けん)
■ 1940年東京都生まれ。武蔵野美術学校商業デザイン科卒業。絵本に『どんどん どんどん』(文研出版)『タンゲくん』「コッコさん」シリーズ『きつねにょうぼう』(長谷川摂子・文)『たのしいふゆごもり』(片山令子・文)『ぼくからみると』(高木仁三郎・文)『おなかのすくさんぽ』(以上福音館書店)、画集に『いる子ども』(パルコ出版)『夜の水 朝の水』(架空社)などがある。新潟絵屋での個展は2001年9月、05年6月に次いで3回目。

←「新しい皿」2011年 水彩、紙 35.0×28.5cm

あーとぴっくす
「詩や夢想の空気にふれる絵」大倉宏
 数ヶ月前片山健さんに電話をしたら、ずうっとある仕事をし続けているのに、それができなくて…とのことだった。そして個展まであと一ヶ月半、原稿を書くためまたご連絡したら、すごく困ったような声で、実はまだ満足いく絵が一枚もできていなくて…と言われた、
 そこで思い出したのは、名作絵本『タンゲくん』は前半を描いて、ずっと未完成で、10年くらいたってふとしたきっかけで後半ができたという、絵屋5周年の記念トークの折の、片山さんの思いがけない話だった。
 「できていない」状態は片山さんがいつも抱えている荷物で、それを簡単には「できて」しまわせぬ何かがあり、そうして負うことになる荷の重さに片山さん自身はいつも困っているのかも知れない。でも、その「困った」を通って『タンゲくん』やコッコさんシリーズや、他のすばらしい絵本があるのだとしたら…電話口で本当に困っている様子の片山さんに、なんだか逆にわくわくしている自分を、こらこらと小さく平手打ち。
 引き受けていただいた11周年の記念トークは「自分のではない絵本」について話してみたいとのこと。こちらもまた、すごく楽しみだ。(大倉宏)

片山健 新潟絵屋開廊11周年記念
片山健講演会「わが愛する絵本」
日時:6月12日(日)14:00〜15:30
会場:クロスパルにいがた
(新潟市中央区礎町通3ノ町2086)講座室 302・303
定員:50名/料金:1,200円
新潟絵屋へ電話、メールなどでお申し込みください。 

 


 
高田洋一展

2011年6月22日〜30日

企画 大倉宏
 

高田洋一「浮遊林―静かに眠るように―」

高田洋一(たかだ よういち)
■ 1956年大阪府生まれ。79年大阪芸術大学美術学科卒業。81年第15回現代日本美術展大賞。96年第6回ブルネル・アワード奨励賞ほか。90年文化庁芸術家在外研修員としてベルリンに滞在。和紙、竹、石を用いた、わずかな空気の流れを捉える繊細で穏やかな作品の動きが早くから注目され内外での美術館、画廊での展覧会多数。2006年新潟市新津美術館で個展。兵庫県立近代美術館、富山県立近代美術館他にパーマネントコレクション。09年「水と土の芸術祭2009」招待、新潟市新津美術館前庭に「水の声」設置。大規模なパブリックアートも多数手がける。近年アートと科学など異分野をつなぐワークショップ、出前授業などアートの教育普及活動も活発に行っている。

←「浮遊林―静かに眠るように―」2010年
 流木,燈台躑躅(ドウダンツツジ)、河原石、大理石
 H180×W250×D150cm

 動く。高田洋一の、美しいシルエットを持つ立体が。
 2006年の新津美術館での個展を、見逃してしまった私は、その静止画のシンプルな美しさを見て、それが動くのを、もう一度新潟で見られないものかと願ってきた。今回砂丘館と新潟絵屋の2会場での個展に、胸をときめかせている。
 3月11日に大地と海が動いた後、高田は「動く」自分の作品をこの時点で発表してよいものか、真剣に悩んだ。観客のあらゆる反応をシュミレーションして考える姿に、作品の独特の〈精密感〉の淵源を見たように思った。ハイテク産業などで発揮される日本人の技術力が、空気のわずかな動きに反応する、原理としてはローテクな、高田の立体にも生きている。
 動く立体に、動かされる心。高田は両者に共通する、シンプルさと精密・繊細さの魅力に、目を注いできたのだろう。福島の原発事故は、人間を軸とすべき技術が、経済や政治などに優先されてしまった結果だと断言する彼の明快な主張の「人間としての技術者」の声に、心を動かされる。(大倉宏)

風と出会った日 ― 未来の思い出 高田洋一展
関連イベント(会場はいずれも砂丘館) *電話・メールで砂丘館に要申込
  
砂丘館(旧日本銀行新潟支店長役宅)新潟市中央区西大畑町5218-1 TEL & FAX. 025-222-2676
●小さな茶会/高田洋一の作品「白い一日」にて作家と過ごすお茶と語らいのひと時
6月4日(土)
13時/14時
6月5日(日)
11時/13時/14時
定員各回5名 1,000円
●ギャラリートーク
高田洋一/聞き手:大倉宏
6月18日(土)
14:00〜15:30
500円
●中野綾子・加藤千明
   ダンスパフォーマンス
(高田展会場にて)
6月18日(土)
19時
6月19日(日)
14時30分/19時
定員各回20名 1500円 
高田洋一の作品「白い一日」 高田洋一「月の影」 中野綾子・加藤千明

 


 



かえるカードフェア
小林憲明さんは無類の蛙好きで、車のナンバーもこだわりの269(Flog)。
蛙好きによる蛙画のポストカードを集めます。
6月2日(木)〜8月10日(水)お盆までの期間限定、
お楽しみに!

小林憲明 蛙画のポストカード
 

タシロ便がゆく

絵屋便、DMの配達を担当する絵屋運営委員・田代の12ヶ月
タシロ便がゆく ―草猫が詠む編 その6
黒南風や石の本読む二宮金次郎 草猫
入梅の頃、黒雲をともなってざわざわ吹く南風を黒南風(くろはえ)という。ただでさえ重苦しい空の下、二宮金次郎の像は、石の薪を背負い、石の本を読んでいる。石の本には、いったい何が書かれているんだろう。
タシロ…田代早苗(俳人・新潟絵屋運営委員)

   

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