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2010年2月2日〜2月12日

企画 大倉 宏

大高正嗣(おおたか まさつぐ)
■ 1973年青森県弘前市生まれ。旅行の途中で新潟に住み着き、仕事も転々と十余年。写真は小林茂氏と村井勇氏に手ほどきを受け、絵は独学。酒食にこだわり無。2008年8月新潟絵屋で初個展。

←「虎之図」 2010年
  アクリル/ボール紙  100×200cm

新潟絵屋 ●2008年 8月02日〜10日
一昨年の夏、小川弘幸さんの初企画で大高さんの初個展が絵屋で開かれた。それまで大高さんには、会ったことがあるような、ないような。噂はいろいろ聞くけれど、どういう人かよく分らない。FMPortが開局してほどない、ひどくエキサイティングだった時分、大高さんがDJをしていて、どういうわけか半日以上も延々と喋っているのを聞き、強引引に切れ目なく言葉をつないでいく力に「すごい」と思った記憶は鮮烈にあった。
会期中のパーティでもその能力は遺憾なく発揮され、すごいなぁと改めて思ったけれど、「よく分らない」度は深まるばかりだった。ところが個展の後半、大高さんが描いて持ってきた大きな猫の絵を見て「あっ芦雪」と思った。そのとき、私の回路に大高さんがつながった。
長沢芦雪は応挙の門弟の一人だが、師から三度破門されたという変わり者だ。同じ「奇想の画家」でも蕭白的な巧んだものでなく、体臭のようににじみ出す「奇」がある。猫みたいな虎とか、サナダムシにしか見えない龍とか…描いたらなんだか「なっちゃった」感が横溢する。まるで大高さんの猫の絵みたいに。その猫は猫なのにちょっと怖い、と借りて飾っていたら人に言われた。少し「虎」が入っていたのだろう。
ということで、寅年の本年、2度目の個展ではそのトラたちが会場に一斉に放たれます。段ボールの襞を指でつぶして描いた竹林から、のそりと這い出すトラは、大高さんその人のよう。怖そうで、どこかまとまりがなく、まことに「よく分らな」くて面白い。その変なトラらに囲まれる展示室を、会期中居酒屋にしたいと大高さんは言う。ますますよく分らない個展になりそうで、ものすごく楽しみだ。(大倉 宏)

 


 

2010年2月18日〜2月28日

企画 伊藤信行
 

(左)黒備前 酒呑 h4.5cm 2009年
(右)黒備前 酒器 h13.5cm 2009年

澁田寿昭(しぶた としあき)
■ 1957年兵庫県生まれ。81年武蔵野美術大学卒業。85年備前陶苑入社。89〜91年一水会陶芸展入選、93年日本陶芸展入選、91、97年焼締め陶公募展入選、93〜95年陶芸ビエンナーレ入選、91、92年田部美術館茶の湯の造形展優秀賞、91、93、94、95、97年同展入選。2000年ヘルシンキ市立美術館「茶の湯ー現代の造形展」(フィンランド)出展。99〜09年までに備前焼ギャラリー青山(東京)で個展9回。07年広島そごう3人展。新潟絵屋では01、02年に個展を、04年に渡邊琢磨との2人展を開催した。岡山県備前市在住。

新潟絵屋 ●2001年 4月22日〜30日
●2002年 8月17日〜30日
●2004年 4月22日〜30日
須恵器にルーツを持ち釉薬を使わない備前焼は、土味が前面に出てくる焼締陶です。「桟切」「火襷」など備前独特の窯変は、土の色味やテクスチャーに表情を持たせ、私たちの視覚や触覚を楽しませてくれます。実際に触ってみると、しっとりとしていたり、ザラザラだったりしますが、陶器と磁器に無い肌触りや口当たりは、無釉焼締の「器」特有のものと言えるでしょう。

備前の陶芸家、澁田氏の久々の個展です。最近は山間の自宅にある工房で制作しているとのことで、その暮らしぶりが伺われるメールの一節を紹介します。
「裏山でクヌギを切り家まで運び、斧で割ってストーブで燃やす。畑で作った野菜を食べ、時々、裏山で捕れた猪を頂く・・・。こんな日々の生活が、本当の『もの』を作ると信じています。」
羨ましいような、大変なような・・・。しかし、そうした日々の生活が彼を動かして土を作り、轆轤を挽き、窯を焚いています。
今回は昨年暮れの登窯と年明け1月の窖窯からの新作を中心に100点余りが出展されます。暖かくて使い勝手の良い澁田氏の器たちに是非会いに来て下さい。(伊藤信行)

 



こんぴら通り・吉川酒店×新潟絵屋プレゼンツ
◎備前焼で楽しむ新潟の山廃
2010年2月20日(土) 18:30〜20:30
会場:新潟絵屋・澁田寿昭 備前作陶展の展示室
参加費:4,000円(澁田寿昭作・ぐい呑み付き)
限定12名(要申込/新潟絵屋025・222・6888まで)

お品書き
お酒:想天坊活性にごり生 プロ限定(河忠)・直蔵(君の井)・笑満寿(住乃井)
お料理:こんぴら通り・新小とりさんの串もの

思えば2008年の夏、大高正嗣さんの個展を開催した折りにこの日本酒の会は始まりました。以来年に2回(真夏と真冬)、呑み比べを楽しみながら新潟の日本酒を紹介しています。これまでは「麒麟山」「朝日山」「河忠酒造」と蔵元毎に紹介しましたが、今回は趣向を変え、ふたつの蔵元の「山廃仕込の酒」を備前焼のぐい呑みでじっくりと味わってみたいと思います。


◎ウェブショップ『ウェブ絵屋』オープン
常設作家(今後も増えていきます)
井田英夫 華雪 [ 準備中 ]フジタ ヨウコ 石原けいこ

『ウェブ絵屋』とは?答えは様々でしょうが「どこでも絵屋(要ネット環境)」もそのひとつかと。職場でこっそり・ほろ酔いで帰宅後に。24時間いつでもいらしてください。 (ウェブ絵屋店長 石垣言美)


華雪さんの作品や書籍は新潟絵屋ショップコーナーでも多数取り扱っています。
・二十四節気七十二候カレンダー(2/4〜)
・『書の棲処』(赤々舎) ・『石の遊び』(平凡社)
・between the books 『ATO』 (Gallery360°) etc.


書・テキスト:華雪

 

創業189年の老舗書店「北光社」(新潟市中央区古町通6)が、2010年1月31日で閉店した。

北光、と書いたとき、北と書き、つぎに光と書いて、それを見ている目が、きたのひかりと、読んだ。north light と頭のどこかが言った。きたのひかりは、いつも焦がれている新潟の空に見ているあかるさだった。north light は今はまだしらないけれどいつか見たい透んだ明るい光だと思った。

北光社はそんな北の光を名前に抱えていたのだなあと思っていたら、気持ちは柾谷小路を、古町の角を目指して歩いていた。

北光と繰り返し書くうちに、北光社でわたしはOさんと何度も待ち合わせをしたことを思い出した。今、わたしには新潟に家族と言っていいような人々がいる。彼らに出会う前は、北光社で見つけた本が新潟の「中」へ誘ってくれた。安吾の本を新しく買い直したのもここだった。『新潟県の歴史散歩』を買って、夜遅くまで新潟島の地図と見比べていた。『古老百話』を買って、そこに収められた人々の口から話された言葉に引かれるように下を巡り、『北国雪譜』を読んで、今ここではない雪の新潟の景色を雪の日の新潟島を歩きながら想像した。北光社が、新潟をまだ深く知らないわたしの、新潟への入り口の場所だった。やがて佐藤さんと知り合って、新潟絵屋の展示を店内に引っ越しさせて小さな展示をさせてもらったり、携帯電話を持たない彼を店に誘いに行って本町の案山子で飲んだことも忘れられない。Yと新潟で最初に会った時も北光社で待ち合わせをした。Oさんと時間になっても現れないYを待った。まだかなと言いながら、店内をひとめぐりすると、ふたりとも本を買ってしまい、早く来てもらわないと、ご飯を食べるお金がなくなってしまうなんて笑ったことも思い出した。思い出して、北光とさらにいくつも書いた。この思い出を留められる字のかたちが目の前に出て来るまで書いた。

北の光が、たくさんの人の心の内にいつまでも残っていくことを願っています。


月刊「まちの日々」第37号

特集:北光社
発行:みなとまち新潟倶楽部
http://www.minatomachi-niigata.jp/machinohibi/

新潟絵屋にて無料配布中



昨年の3月、絵屋のショップコーナーに一枚の虎の絵が掛かった。一頭の虎がタバコを口にくわえているその絵は、韓国の民画ではオーソドックスな図だと聞く。けれども、なかなか強烈な印象であった。それから一年間、石原奈穂子さんによる韓国の民画を紹介するシリーズがスタートした。時には季節感を取り入れ、子供の日に因んだ「鯉」を、受験に因んだ「カニ」を、はたまた自由を表すという「イカ」を展示したこともあった。ほかには何かの願いを絵に写し長年描かれ続けている「果実」や「鳥」なども石原さんは描いた。それらは、毎回、石原さんの解説文とともにショップの一角に展示をし、静かな反響があった。今年2月、このシリーズは終了する。「虎」をトリに。展示室では別な虎がいて(2/2−12)、ショップにも虎がいる。虎が店中をウロウロしているような光景が、最後に見られることになった。(井上美雪)
■ 韓国民画セレクト 2009.3〜2010.2


絵屋便、DMの配達を担当する絵屋運営委員・田代のはみだし連載コラム
タシロ便がゆく ―熱く赤い道 編その8―

昨年、「チョコラ!」というウガンダのストリートチルドレンを追ったドキュメンタリー映画を観た。「アフリカの貧困」だとか「子どもたちのたくましさ」だとか、そんなお決まりの感想では収まらない、深い余韻が残る作品だった。そして観終わったあと、なぜだろう。ふっとSさんの事を思い出した ※「チョコラ!」…監督・小林茂(つづく)
タシロ…田代早苗(俳人・新潟絵屋運営委員)

   

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