広田郁世展

5月22日fri―30日sat

vol.462

 広田郁世が描く風景はいつも薄明だ。朝や夜に向かっていく薄明というより、うす明りの空の下に固定され、時間がとまってしまったような薄明。こういう光、時間が、ここ新潟では、特に秋から冬が終わるまでの時期によくある。広田の住む富山もそうなのだなあと、絵を見て共感する。
 真っ暗になれば時に星や月が、あるいは家の灯が見えるけれど、薄明ではそれも見えない。なにかが見えるようで、見えない風景を、ぼんやり見ているとき、現実からも夢からも遠いその場所で、私が出会うのは自分の呼吸であるかもしれない、と、広田の絵を見て気付かされる。彼方に追いやられた私が、ほんのつかの間、ここに、そばに帰ってくる、そんな感覚と言ったらいいだろうか。草の根や、家々の屋根や壁や、たわんだ電線のあたり。緩慢そうで微細な変化に富むグレーの空。見ている自分が、遠方の自分を迎える小さい、あたたかい家に思える。(企画 大倉 宏)

PROFILE
広田郁世(ひろた いくよ) 1963年生まれ。87年大阪芸大日本画専攻(科)修了。89年文化庁芸術家国内研修員。86~91年創画展に出品。2001年~現在パンリアル美術協会に出品。12年第5回東山魁夷記念日経日本画大賞展。他グループ展、個展で発表。87~07年アマチュア演劇、人形劇団の制作・舞台美術等担当。07年~影絵&人形mao company代表。挿絵、装丁の仕事多数。趣味は熱気球、動植物の観察。富山県射水市在住。
http://www. .com/

広田郁世

■5月30日(土) 秋葉小夏2015 ツバメコーヒーブース:「てつがくをはぐむ」に、大倉宏と参加予定。

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