野中光正・村山耕二展

2月5日thu―15日sun

vol.452

 木版画もガラスも外部との、それは「版木」であったり「火」であったりするが、そうした手強い物質との闘いが制作の大きな要となる。和紙に押し付けた版木は、あるいは、炉から取り出されたガラスは後戻りできない。一瞬にして魂を作品に宿らせる。
 ガラスの村山さんは、制作に先立ち構想をスケッチしたりしない。ぶっつけで溶けたガラスをかたちにしていく。木版の野中さんもほとんどの作品を下絵なしで創る。いずれも生き生きとした命の流れを写すライブ・パフォーマンスなのだ。だが、これがなかなか難しい。心の嫌なものもきっと出てしまうからだ。自然のエッセンスをつかみ、美へと昇華させることができるとしたら、天与のセンスとナイーブさをおいて他にない。かつて「蝶のように舞い、蜂のように刺す」と評されたボクサーがいたが、力技をエレガントに、豪快に繊細に見せることができる点で、2人のコラボはいつも心地よく響きあうものがある。(企画 杜の未来舎ぎゃらりい 斎藤久夫)

野中光正
PROFILE
野中光正(のなか みつまさ) 1949年東京都鳥越生まれ。67年に絵画を、73年に木版画を始める。68~71年太平洋美術研究所、73~82年渋谷洋画(人体)研究所で描く。77年横浜国際船客ターミナルでの初個展。89年新潟県高柳町に移住、紙漉を学ぶ。91年かやぶきの家(高柳)で個展、同年東京に戻る。以後は、ゆーじん画廊、ギャラリーアビアント、ギャラリー枝香庵、高志の生紙工房ギャラリー、画廊Full Moon、砂丘館、新潟絵屋などで個展。

村山耕二
PROFILE
村山耕二(むらやま こうじ) 1967年山形市生まれ。96年仙台に工房「海馬」設立。2001年モロッコへ渡航。サハラ砂漠の砂を融かして作り出す「サハラ」シリーズの考案と研究開始。器をはじめ、オブジェや照明、ガラス素材の研究および造形物の企画・デザイン・制作を手がけている。 游ギャラリー(東京)、杜の未来舎ぎゃらりい(仙台)などで個展開催。07年モロッコ王国・王室へ作品献上品となる。11年宮城県芸術祭 (財)宮城県文化振興財団賞、13年「仙台ガラス」グッドデザイン賞など受賞。

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