小林久子展

5月12日tue―20日wed

vol.461

 小林久子の線について、「引かれた,幅のある時間でなく、もっと凝集した〈一瞬〉を感じさせる」と書いたことがあった。
 それを否定するようだが、図版の絵の線などを見ていると、画家が引いている時に感じている抵抗感、向かい風を感じる。風が強まるほど線は力を増し、一見同じ速さで進む。見た目の早さは無風時と同じでも、内実の速度が違う、変化している。内実とは向かい風を感じ反応する身体。左上から右下に走る線の群れのなかで、右上へ浮き上がって行く数本は、線を引く体が風の浮力を受け、舞い上がったかのよう。
 小林の美しい色はその身体が動く空間の、疎密や、さまざまな動きを内在させる大気のように、常に変貌し、押し戻す、見えない、生きた抵抗体に見える。穏やかなようで、猛烈な動を、臂力(ひりょく)を隠している。絵画という宙空で、地中で、見えない力がいつもせめぎあい、組み合い、火花を放っている。〈一瞬〉を感じるのはそのせいだ。(企画 大倉 宏)

PROFILE
小林久子(こばやし ひさこ) 東京都生まれ。ニューヨークを拠点にフィラデルフィア、パリ他で個展多数。日本ではニッチ・ギャラリー (東京)を中心に各地で個展。新潟では2005・07年画廊Full Moon、09・11年新潟絵屋で個展。ニューヨーク在住。
www.hisakokobayashi.com

PHOTO:「音のない言葉」2008年 油彩/キャンバス 55.8X71.1cm

■作家在廊予定日:5月12日~16日

■堀川久子 踊ル ― 小林久子展会場にて: 5/15(金)18:30~(500円/申込不要)
終演後、ささやかな会を開きます。

▶みるものとよいところ 会場のようす

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です