12月2日wed―10日thu
vol.480
新潟絵屋で峰村リツ子の絵を展示したとき、橘三紀が見に来て、とてもよろこんでいたのを思い出す。
峰村は女の肖像、ヌードも多く描いた女の画家で、その女性像のおおらかさには男子ならざる視点があった。男子である橘が描く女には、アニマ(男の内なる女性像)の雰囲気がやっぱり漂っている。けれど、同じくらい豊かに、峰村の女性像に通じるおおらかさ、自由の空気がある。寄せる波と返す波のように、ふたつの女が重なって、乱暴のようで繊細な線、強烈なようで微妙なニュアンスを内包する色が、しぶきとなって跳ね上がる。あるいはたがいを飲み込んで、静まる。
どこを見ているか分からない、ちょっとは虫類に似た目が魅力的だ。ちがう生きものだけれど同じヒトである—そんな、定まらない存在を見続ける一人の画家がいる。
(企画 大倉宏)
橘 三紀(たちばな みき)
1941年両津市生まれ。69年大橋広治先生の知遇を得、師事。72年光風会展に入選、76年光風会会員に挙げられる。99年光風会退会、現在に至る。個展、グループ展多数。
PHOTO: 「おんな」2015年 油彩・キャンバス F6