5月2日sat―10日sun
vol.460
中村文治が器の形をした彫刻を発想したのは、器がガラスケースに入れて展示されている美術館でだった。
飲み物や食べ物、花などを入れて「使われる」器が、ただ見られるためだけに展示されている、異様とみれば異様なその状況が、だったら使えない(=見られるだけの)器―彫刻を作ってみるというアイディアになった。土でなく木を素材としたのは、それが自分に一番身近だったからだという。器の姿をした彩色木彫は、器として使えないよう、底に穴があけられた。
これは、見る私たちへの意識への、やわらかい挑戦だ。器を見て何かを容れてみたいという条件反射を、身をかがめてかわす器。岡本太郎の「座ることを拒否する椅子」に似ているけれど、もう少しのほほんとした空気が、世代と個性の違いを感じさせて面白い。(企画 大倉 宏)
PROFILE
中村文治(なかむら ふみはる) 1980年新潟県生まれ。2006年大阪芸術大学大学院芸術制作研究科彫刻修了。個展は2003年A-BOX (新潟)、06・08・09年信濃橋画廊 (大阪)、2010・11・14年 arton art gallery(京都)、12年ギャラリ―島田deux (兵庫)、15年4月山木美術 (大阪)など。08~09年「In my place 坪田昌之 中村文治展」をギャラリ―島田、福田画廊 (新潟)、新潟美術学園ギャラリー (新潟)で開催。09年韓国の彫刻シンポジウムに参加し長期の滞在制作を行う。
PHOTO: White horizon―bowl―」2013年 木に着彩・銀箔
■作家在廊予定日: 5月2・10日