中島 世津子 展

9月2日fri―10日sat

vol.503

 中島世津子は描きに描いたことが、あるに違いない。練達という言葉が、紙を切るように、撫でるごとくに走る一本の線からも浮かんでくる。私が引かれるのは、偶然さえもあやつってしまえる程の素描の伎倆に、けれど微妙に、確乎として、あらがうものがあること。そのことを画家が懊悩しつつ、欲してもいるらしいこと。そう感じさせる、魅惑的なゆらぎ、不安定が、ことに水彩に、ガラス絵にきらめいていたことだった。ガラス絵での個展を最初にお願いすることにしたのはそのような「小勢」に、ひとりの見るものとして寄りそいたいと願ったからでもある。
中島を教えてくれたのは、昨年砂丘館で個展を開いた早川俊二で、早川夫妻と中島は数十年前、パリで出会った。昨秋この町に来て、新潟絵屋を見て、ふたりは今は三重の松坂市に住む旧友を思い出したのだった。(企画 大倉 宏)

中島世津子(なかしま せつこ)
1978年パリ エコール・デ・ボザール デッサン科卒業、80年同絵画科卒業。88年帰国後は、現代日本美術展、ビエンナーレまくらざき「風の芸術展」、「太陽のプロヴァンスにて日本展」、岡田文化財団パラミタミュージアムなどに出品し、2000~03年・15年アスクエア神田ギャラリーにて個展開催。12年作品集『中島世津子 素描』(用美社刊)刊行。 www.setsukonakashimadameme.com

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photo:「ハルカ」2016年 水彩/ガラス 16.0×22.0cm