ギャラリー&ミュージアムマップ 4/20~5/25 2017

私たちは、画廊や美術館を巡るひとが増えるにはどんな環境が必要か、考えています。
2008年創刊、毎月無料配布の情報冊子です。

新潟島とその周辺のギャラリー&ミュージアムマップ | gallery & Museum Schedule 2017.4-5

2017年4月20日(木)- 5月25日(木)

田中正弘 展

5月12日fri―20日sat

vol.525 作家在廊予定日:会期中毎日

 アイヌの世界では自然や動物だけでなく、道具にもカムイ(神)が宿り、不要になると、道具のカムイに供え物をし、感謝を告げてカムイの世界に送り返すのだという。
 歯のこぼれた斧や、蚤の市で求めた古物で構成した田中正弘の作品に感じるのは、どこか飄々とした読経の声だ。知人の死をきっかけに制作された20年前の「立棺」シリーズから、原爆の記憶をこめた「雲水」、黒い標本箱風の「植物誌」「昆虫記」へ続き、今日につながる制作を想起すると、どれにも人や植物や昆虫や道具に手向ける、制作者の一貫した祈りがこめられていたことに気づく。仏教の僧は日本では、いつからか死者の供養を担う存在になった。「供養」を「カムイへの感謝」に重ねると、これらの作品たちはそのような供養=感謝を、生きたものに、使われたものらに向けて捧げ続ける僧たちに見えてくる。
(企画 大倉 宏)

田中正弘(たなか まさひろ)
1946年新潟市生まれ。76年初個展以降、東京銀座を中心に個展グループ展多数。90年「四季の径・彫刻大賞展」大賞受賞(古河市)。91年寄居浜(新潟市中央区)に 「夕日モニュメント」を製作。2003・06・09年新潟絵屋で個展。13年~「どこかでお会いしましたね」展(さいたま市)毎年出品。

田中正弘展

PHOTO(上): 「斧斤・伝」
PHOTO(下): 「新・風土記」2015年 40.0×30.0cm

野中光正・村山耕二 展

4月22日sat―30日sun

vol.523 作家在廊予定日: 4/29、30(時間未定)

 3年前、仙台の杜の未来舎ぎゃらりぃの斎藤久夫さんの企画でのこの2人展は、私が展示をさせてもらったけれど、愉しかった。絵画とガラス、平面と立体という違うものが、同じ場所で、いい感じで共鳴する、その響きから発想がわいた。
 ふたりの共通の魅力は色だろう。砂は、高温で融かすと必ずガラス化するそうで、いろいろな土地の砂のガラス器が並んだが、微妙な色合いの差が面白かった。作家の感性が色に繊細に反応していた。
 野中の近作は、ことに色の渋さの底の華やかさが深まってきた。村山の器も飄逸(ひょういつ)さと、やわらかさと、華やぎがある。
絵とガラスの響き合いが、今回はどんな変化を見せるのか、楽しみだ。
(企画 大倉 宏)

野中光正「170120」野中光正 (のなか みつまさ)
1949年東京都生まれ。67年に絵画を、73年に木版画を始める。89年新潟県高柳町に移住、紙漉を学ぶ。91年かやぶきの家 (高柳)で個展、同年東京に戻る。以後、ゆーじん画廊、ギャラリーアビアント、ギャラリー枝香庵(東京)、高志の生紙工房ギャラリー、画廊Full Moon、砂丘館、新潟絵屋などで個展。2017年2月画集 『昭和四十五年の夏・野中光正』刊行。

PHOTO: 「170120」混合技法/和紙 60.8×45.6cm

村山耕二村山耕二 (むらやま こうじ)
1967年山形市生まれ。96年仙台に工房「海馬」設立。2001年モロッコへ渡航。サハラ砂漠の砂を融かして作り出す「サハラ」シリーズの考案と研究開始。07年モロッコ王国・王室へ作品献上品となる。11年宮城県芸術祭 (財)宮城県文化振興財団賞、13年 「仙台ガラス」グッドデザイン賞など受賞。 http://www.kaiba.org

中島佳秀 展

4月2日sun―10日mon

vol.521 作家在廊予定日: 4/2、8、9

 去年、中島佳秀の動物の絵の、毛だけが絵になったような、魅力的な抽象を紹介した。一点購入して、家のよく目につく壁に掛けている。媚びないが、冷たくもなく、適度な距離感でこちらを見つめ返してくる絵だ。
 今年は再び動物の絵を中心に展示する。動物が抽象になったのではなく、両者は平行して描かれているらしい。
 数年前の展示で、中島を動物画家と思った人がイルカの絵を注文した。中島は応えようとしてできなかった。中島の動物は、動物ではなく、中島から絵を引き出す爪のようなものなのだが、イルカにはきっと、爪がなかったのだ。
 近作で見る限り、その爪はごわごわした毛であったり、しわのよった肌だったり、主に触覚的なものとして作用している。きわめて部分的な動物なのだが、その部分の力で、全体が動く不思議なモノがここにある。
(企画 大倉 宏)

中島佳秀「いばらと、おどろ 7」

中島佳秀 (なかじま よしひで)
1975年京都市生まれ。都市計画・建築を学んだ後、独学で平面の制作を始める。2008年より個展を中心に平面作品の発表を行う。2010・11・16年新潟絵屋で個展開催。 http://www.yshdnkjm.com

PHOTO(上): 「いばらと、おどろ 10」
PHOTO(下): 「いばらと、おどろ 7」2017年 ミクストメディア/紙 21.0×29.7cm

小林寿一郎「佐渡の芸能」木版画展

5月22日mon―30日tue

vol.526 作家在廊予定日:5/27・28

 小林さんの木版画には作風にふたつの面があると思う。一方に深い精神性を備えた作品があり、一方で遊び心を発揮したユーモラスな表現があって主題により彫り分けられている。技法にも木口、板目、両版併用があり、多様な顔料を駆使した色彩、マチエールも多彩だ。作域も広く、だから見ていて飽きることがない。4年前新潟市の蔵織で彼の作品をまとめて観る機会があった時の感想だ。
 今回の個展は広い作域の中から小林さんが長年手がけているどちらかというとユーモラスな作品が多い「佐渡の芸能」をテーマでお願いした。鬼太鼓、薪能、子供歌舞伎、花笠踊り、のろま人形に文弥人形の頭、車田植、そして宿根木の屋並など。小林さんのふるさとに寄せるおおらかな眼を感じながら、ユーモアをたたえた木版画で佐渡の芸能の素晴らしさを楽しんでほしい。絵屋では14年ぶりの個展。(企画 小見秀男)

小林寿一郎(こばやし じゅいちろう)
1954年佐渡市生まれ。70年万国博覧会世界児童画展特選受賞。82年より高橋信一(佐渡版画村美術館創立者)に師事し、86年から版画家日和崎尊夫に木口木版の指導を受ける。91年ニューヨークに滞在して現代美術を学ぶ。95年第50回県展県展賞受賞、無鑑査となる。96年「現代版画の状況展」(福島、新潟)、04、05年個展「佐渡の芸能版画展」(ネスパス、佐渡博物館)、06年「新潟の作家100人」(新潟県立万代島美術館)出品。2000・03年新潟絵屋、13年蔵織で個展。現在佐渡版画村会員、佐渡狭門会会員、新潟県展委員。

小林寿一郎「下久知八幡祭り」

PHOTO(上): 「佐渡文弥」2017年 木口木版画
PHOTO(下): 「下久知八幡祭り」2017年 木口木版 15.3×10.4㎝

斉藤文夫 写真展 『海の村 山の村』

5月2日tue―10日wed

vol.524 作家在廊予定日:5/3・5・7・10

 半世紀余り、去り行く「郷土」を撮り続けた斉藤文夫氏。
 斉藤氏は荒波や豪雪の中で生活する人々の中に入り込み、土地の生活、習俗、様々な道具を記録に残した。厳しい自然と対峙しながらも、どこか可笑しみを含んだ写真もあり、見ている側が様々な感情に包まれる。そこには営々と受け継がれて来た人々の海や山との関わり、それらと混然一体となった人同士の交わりが刻まれている。
  氏がフィルムに収めたものは、時が経つにつれ、現在との「差異」をより明瞭に浮き彫りにする。それは被写体が失われて戻らないからこそ、より深く見るものに変化と喪失を訴えかけ、私たちに現在への眼差しを問う。
  撮影から数十年、すでに埋められぬものとなった差異は、それが一体何であったのかと今静かに私たちに問い続ける。(Bricole 桾沢和典・桾沢厚子)

斉藤文夫(さいとう ふみお)
1933年新潟市西蒲区(旧巻町)福井生まれ。写真家、郷土研究家。NPO法人福井旧庄屋佐藤家保存会理事。元巻郷土資料館長の石山与五栄門氏や写真家・熊谷元一氏との出会いによって、郷土の風景、暮らし、人々の営みなどドキュメント志向の写真を撮り続ける。地域資源の発掘や文化・研究活動の傍ら、『角海浜物語ー消えた村の記録ー』『蒲原 昭和の記録ーカメラが捉えた昭和の残像ー』写真集も出版。1998年より旧庄屋佐藤家の保存活用を始め、現在も囲炉裏の火を守り続ける。

◆斉藤文夫写真展『海の村・山の村』ギャラリートーク
2017年5月3日(水・祝)14:00~15:00
会場 :新潟絵屋 展示室
ゲスト:斉藤文夫×桾沢厚子(ブリコール)
司会 :大倉宏
参加料:500円【要予約】
予約受付・お問い合わせ先:新潟絵屋 info@niigata-eya.jp

斉藤文夫 「山村の春」

PHOTO(上): 「海に生きてきた漁師(昭和46年、浦浜)」
PHOTO(下): 「山村の春(昭和49年 下田村大江)」

■斉藤文夫写真集『昭和の記憶 新潟 海の村 山の村』刊行のお知らせと製作資金ご支援のお願い
http://bricole.jp/donate

ギャラリー&ミュージアムマップ 2017.3-4

私たちは、画廊や美術館を巡るひとが増えるにはどんな環境が必要か、考えています。
2008年創刊、毎月無料配布の情報冊子です。

新潟島とその周辺のギャラリー&ミュージアムマップ | gallery & Museum Schedule 2017.3-4

2017年3月20日(月祝)- 4月25日(火)

津田 真帆 展

4月12日wed―20日thu

vol.522 作家在廊予定日: 4/12

 津田真帆の絵を支える二本の柱は、元気と繊細だ。そう感じ続けてきた。
津田はすばらしい絵本の絵の作者で、挿画もすてきだ。絵本の絵も、挿画も、イメージにつながっていて、イメージは個展で発表する絵にもつながっている。家で言うならイメージは壁であり、屋根かも知れない。
 いつからか、壁と屋根のない、柱だけの津田の絵を見てみたいと感じるようになったのは、構造だけに還元された家は、どんなだろうと思ったからだ。見る側の身勝手で、そう、津田に伝えたりもした。
 今回の新作では、その、むき出しの柱が覗いていて、ドキッとした。風が吹きよせ、雨も落ちてくるであろう柱の間に広がる空間の光景に、居心地に、そそられる。
(企画 大倉 宏)

津田真帆「新しい陽」

津田真帆(つだ まほ)
1966年東京都生まれ。東京芸術大学卒業。子どもの絵画・造形教室に携わる。装丁・挿絵の作品に 『デ・ラ・メア物語集』(全3巻)、絵本に 『巨男/おおおとこの話』『うずまき・うずまき・かたつむり』『あかちゃんがいるの!』(大日本図書)、『わたしのあかちゃん』(福音館書店)、『あきですよ』(金の星社)がある。檜画廊 (東京)にて個展多数。2006・08・10・12・14年新潟絵屋で個展開催。東京都在住。

PHOTO(上): 「飛びだす」
PHOTO(下): 「新しい陽」2017年 ミクストメディア/紙 37.5×51.0cm

塩﨑 貞夫 展

3月2日thu―10日fri

vol.518

 砂丘館と2会場で開催する塩﨑貞夫展。
 3年前に亡くなった塩﨑の絵を、新潟の個展で見たとき、絵の匂いがすると思った。すこし甘いようだけれど、凛とした匂いだった。いい絵は匂いがする、と誰かが言ったけれど、本当にそうだ。絵柄としては痩せた女がもやのような空間に横たわる絵を、記憶するのみだったけれど、本人にはよくお会いした。新潟に来ると絵屋にも寄ってくれた。女のイメージが、古墳や塔や山や満開の桜やコスモスなどに変幻し、そのどれもが「死と鎮魂」のモチーフを奏で続けていたことを、昨秋ご遺族宅で残された遺作を通覧して感じた。
 その主題は画家個人にとって何だったのだろう。生きている寂しさと、死んでいる寂しさが、同じである空間を、画家は絵という大地に建築しようとしていたのだったかも知れない。そのひと続きの空間を歩きたい。生きる者と死せる者が視線を、ささやきをかわす空間の匂いを呼吸しながら。(企画 大倉 宏)

塩﨑貞夫(しおざき さだお)
1934年新潟県糸魚川市に生まれる。10代の頃療養生活を送る。56年国画会に初入選、以後毎年出品。63年国画会新人賞を受賞し会友となる。73年国画会を退会。77年~2005年文藝春秋画廊 (東京)で隔年で個展。97年アートギャラリー環 (東京)で個人コレクションによる清宮質文・塩﨑貞夫展。2007・08・09・10年 フォルム画廊(東京)で個展。04年~14年ギャラリー壹零參堂 (鎌倉)で隔年で個展。ほかアトリエ我廊(新潟)、たけうち画廊(新潟)、南青山画廊 (東京)、ギャラリー青雲 (東京)、ギャラリートータク (東海市)で個展。14年2月14日没。14・16年フォルム画廊で遺作展 が開催された。

塩﨑貞夫展_箸の墓古墳

PHOTO(上): 「矢田丘陵の辺り」
PHOTO(下): 「箸の墓古墳」 1985年 油彩/キャンバス 65.0×50.0cm

同時期開催
2.15[水]~3.20[月祝] 会場:砂丘館
3.4[土] ギャラリートーク 「レクイエムの画家」
3.3[金] セミナー「箸の墓と卑弥呼の時代」

砂丘館会場のようすをブログでお伝えしています。

藤原 祥 展

3月12日sun―20日mon,holiday

vol.519

 藤原祥の近作が田畑あきら子の絵に近接して見えるのは、私の目の中の偶然の現象だが、そこから、このうるわしい、豪奢な渾沌を前にする、心のありようということを思う。
 あきら子も、さかのぼれば村山槐多も、豪奢な絵や言葉を、かいこが美しい絹を吐くように生んだ。しかし彼らの現実は、生活は、豪奢ではなかった。その輝きは、彼らの人生の、際の、崖っぷちの向こうの空白からわいてきた。
 千葉で穏やかな生活を送るように見える藤原の心にも、崖があり、描くことは、きっとその先と向かいあうこと、戦い、生きることなのだ。
 絵のすさまじい、うねりときらめきに、そう感じる。(企画 大倉 宏)

藤原祥2017.3

藤原 祥(ふじわら しょう)
1950年島根県松江市生まれ。スペイン古典の内面の劇性表現に強く惹かれる。79年サン・フェルナンド国立美術学校 (スペイン/マドリード)卒業。77年タラベラ・デ・ラ・レイナ賞名誉賞受賞。個展は島根県立博物館、ギャラリーHera(ストックホルム)、ギャラリー睦 (千葉)、ニッチギャラリー (東京)等。新潟絵屋では2007年11月、08年9月、10年5月、12年3月に個展開催。

PHOTO(上): 「生きものの居る風景」
PHOTO(下): 「異境の花」2016年 ミクストメディア/和紙 105.0×102.0cm