藤原 祥 展

3月12日sun―20日mon,holiday

vol.519

 藤原祥の近作が田畑あきら子の絵に近接して見えるのは、私の目の中の偶然の現象だが、そこから、このうるわしい、豪奢な渾沌を前にする、心のありようということを思う。
 あきら子も、さかのぼれば村山槐多も、豪奢な絵や言葉を、かいこが美しい絹を吐くように生んだ。しかし彼らの現実は、生活は、豪奢ではなかった。その輝きは、彼らの人生の、際の、崖っぷちの向こうの空白からわいてきた。
 千葉で穏やかな生活を送るように見える藤原の心にも、崖があり、描くことは、きっとその先と向かいあうこと、戦い、生きることなのだ。
 絵のすさまじい、うねりときらめきに、そう感じる。(企画 大倉 宏)

藤原祥2017.3

藤原 祥(ふじわら しょう)
1950年島根県松江市生まれ。スペイン古典の内面の劇性表現に強く惹かれる。79年サン・フェルナンド国立美術学校 (スペイン/マドリード)卒業。77年タラベラ・デ・ラ・レイナ賞名誉賞受賞。個展は島根県立博物館、ギャラリーHera(ストックホルム)、ギャラリー睦 (千葉)、ニッチギャラリー (東京)等。新潟絵屋では2007年11月、08年9月、10年5月、12年3月に個展開催。

▶みるものとよいところ 会場のようす

PHOTO(上): 「生きものの居る風景」
PHOTO(下): 「異境の花」2016年 ミクストメディア/和紙 105.0×102.0cm