2017年春 アンケートを実施

 2017年春、これまでさまざまな立場で新潟絵屋の活動に関わって下さった方々、関心を寄せて下さった方々にご協力いただき、アンケートを実施しました。

新潟絵屋並木町

質問

1 新潟絵屋のイメージ

たとえば、新潟絵屋が誕生したこと、あるいはこれまでの活動によって生まれたこと、変化したと感じること、新潟絵屋を支援したり、関わってこられた理由など。

2 新潟絵屋へのご意見や期待すること

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1 新潟絵屋のイメージ

Nさん 女性

 個展の際は、絵屋の二階に滞在させていただきました。自分自身の作品と一緒に暮らした十日間だったと感じています。絵屋はとても風通しが良い感じがしました。新潟で初めて展示する私と私の作品を、とてもしなやかに受け入れて下さいました。もともとそこに居たかのようなすごく自然な気持ちで暮らすことができました。いろいろなバックグラウンドを持った方々が共同で運営されているNPOというあり方が、「絵屋」という場を形作っている一因なのだろうと思います。
 絵屋での個展後も私自身の心もとなさは相変わらずですが、それでも以前よりほんの少しだけ「進んでいくための軸」に近づけた気がしています。

Nさん 男性

 アート作品の評価というものは難しく、現在たとえ評価が高くないものであったとしても、後に評価が高くなる場合がある。反対に現在評価が高くとも、後に人々に忘れ去られるというものもある。
 新潟絵屋で紹介されてきた作家のなかでも、十年後、百年後に残っていくような作家がいるように思える。そのような作家たちを応援してきた新潟絵屋の活動を応援したいと思っている。アートは人間の本質であり、人間存在の証しであるように思える。これからも新潟絵屋の活動を楽しみにしている。

Aさん 男性

 私が画廊に通うようになったのは、自分が画家になれず、しかし夢の続きを見たい、あるいは自分が世界と関われるのは絵によってしかないというネガティブな考えの時期があったからでした。
 いくつかの画廊に通い、自分の給料で絵を買うようになって、自分が好きだと思う絵が画廊の方や画家にとっても好きな絵であったりする喜びや、良いと言われる絵が多くの人の心の栄養になる事を、身をもって知りました。
 絵屋では特に、長い年月をかけて画家さんを見守る、応援する事の大切さを知りました。良いもの、大切なものが、私自身も育ててくれています。

Kさん 男性

 日常や日々の生活から少し離れた場所
 絵屋や美術を身近なものとして、ふらっと立ち寄れる場
 さまざまな企画の作品があり、思わぬ出会いがある
 足を運ぶたびに新たな出会いがある
 絵屋は街の心のオアシスであり、刺激的な場所である

Kさん 男性

 多くの作家の多様な作品を見る機会を得ることができた。時には作家と直接話をする機会に恵まれ、新たな視点を発見する事もある。作家と作品を身近に感じることができる場所が絵屋だと思います。市内の他の画廊に足を運ぶきっかけとなり、絵屋周辺の施設(旧小澤家住宅、旧齋藤家別邸、砂丘館、他)を回るスタート地点であったり、「たごさく」でラーメンを食べて、本町のお店を見て回り、買物を楽しんだりと、私の中では新潟の文化を楽しむ拠点になっていると思います。

Iさん 女性

 私にとっての「新潟絵屋」は「画廊たべ」の延長で、いつ伺っても「よう来なさった。お茶でもなじらね」と暖かく迎えてくれる場所です。

Sさん 女性

 絵屋が生まれた経緯をよく知っているわけでも理解しているわけでもないので、ほとんど直カンでの意見になりますが、絵屋誕生の種となった根本概念や考えや、そこに集結したご縁や意志などは、とても貴重で、とても大切なもののように感じます。私も含めて、その大事な礎をよく知らない、もしくは忘れてしまった人たちも多いのではないでしょうか。絵屋がどんな考え、流れの中から、どんなふうに生まれたのか、どんな役割を担う存在なのか、なぜ絵屋が、芸術が必要であるのか…………そのあたりのことをまとめた文章を、寄付関連の資料だけではなく、絵屋便にも、毎号もしくは時に掲載したら良いのになあと思っています。(私にとっては個人的ご縁と、直カンによって、絵屋は大切な存在です。)
 展示を毎回観ているわけではないので、ちょっと決めつけになってしまうかも知れませんが、展示内容がいつも似たような波長を出しているようで、同じような、領域の狭いその波長が常に絵屋をつらぬいていて、その領域に入り込めない人たちを拒んでしまっているように感じます。

Wさん 男性

 商業ベースで運営されている他の多くの画廊と異なり、或る主張を持って運営しているように感じられる点が第一にあげられます。そのことで一定の質を保っているように思われ、ひとつの権威が感じられます。

Nさん 男性

 新発田の田部さんの意志を継いで、「良質な絵画を広め、安価で買ってもらい、画家を支援したい」という気持ちに賛同して会員として支援してきた。なかなか、画廊には入りにくいが「新潟絵屋」は気軽に入れることも魅力と感じた。
 また絵を買いたい、飾りたいと思っても「高価」であるため、普通の市民としてなかなか購入することができなかった。その点、そこそこの値段で頒布されることが良いと思った。
 ときどき新潟に出たついでに寄らせていただいている。

Tさん 女性

 過去において美術、アート等はあまり気さくな印象ではなく、比較的、心構えを持って“さぁ 行こう”と見に行っていたように思う。が、絵屋さんは知人の作品を応援しに行ったりするうち、とても身近な存在になった。ひいては美術、アート、全般において気軽な存在になってきた。自分の広告を(「ギャラリー&ミュージアムマップ」に)出すにあたり、“作る”ということに思いをはせるようになった。
 イメージは、やわらかな光、です。

Wさん 女性

 新発田の田部さんの画廊が無くなり、美術館以外では絵を観る等と言う事は殆どなくなりました。画廊と名の付く所は絵を購入する為と言う目的がなければ、入れないような敷居の高さを感じていました。
 でも「新潟絵屋」さんはちょっと違う。今迄、知らなかった作家の方達、若い方の作品…等々、興味深くて、純粋に「観てみたいあぁ〜」と思う。絵屋さんが独自の視点から選ばれた作品が…じゃ、行ってみようか…に変わったと思います。良いなぁ〜と思う絵は、欲しいなぁ〜となります。金額を見て、あきらめる事が多いのですが、それは納得。絵との出会いも一期一会だから、とっても残念で、ずっと心に残っている事もありますが…。絵屋さんを支援する事にいたらない状況だと思いますが、今とても大事な重要な場所だと思っています。
 建物と内容について。小さなスペースですが、伺うとそれを感じない空間にいつも不思議だなぁ〜と感じています。壁の小さな穴もホントニおもしろいですネ。
 絵屋、砂丘館、ギャラリーみつけ、等、更に広がり、更につながっていかれますよう!
 ギャラリー&ミュージアムマップの田代草猫さんの今月の一句…本当にありがとうございます。個人的にはいつも「みるく歯科クリニック」の広告が気になって…。絵も文も……的を得ているなぁ〜。

Tさん 女性

 私にとっては、他のスタッフの方をそれほど知らないこともありますが、井上美雪さんという絵屋を象徴する人物が絵屋そのものとなっています。その独特な雰囲気、お人柄、その時展示されている作品あるいは作家さんとの二者が混ざってひとつの空間ができていると思います。
 アンケートの資料にこれまで520もの企画展を開催とありましたが、井上さんを通して、<絵屋さん<新潟の作家さん<全国の作家さん…<<と広がっていくことに情報源としても心強く感じています。
 移転後の方がよく伺うようになったのですが、当初は大通り沿いの佇まいに違和感を感じていましたが、最近は随分景色に馴染んできました。
 実は、DMの送付に色々好きな点が。チラシの三つ折の仕方とか(タイトルが出るように工夫されてますよね)、束ねるときの帯びの印刷された挨拶文面とか、あと裏紙の活用とか、いいな、と思う点が随所にあります。

Oさん 男性

 長い間、絵屋さんの存在は知っていましたが、私が最初に足を踏み入れたのは、阿部信子さんの作品展だったように思います。勿論作品展によって空気感は違うことと思いますが、私が伺った時々に共通するのは、空間に温もりを感じることです。その作品を包み込む温もりの中で観たいと思うから、足を運ぶのだろうと。我が家へ作品が移った時のイメージが出来る場であるとも感じています。

Tさん 女性

 ここまで11年に渡り6回もの個展を企画くださり、本当にありがとうございます。作り手の側として、発表の場があるということは描き続ける力の大変大きな支えとなります。絵屋さんを通して知る、見てくださる方々のお声、他の作家の方々の存在と生き方、スタッフのみなさんそれぞれの感性での企画と温かい対応や購入の支え、ご尽力には、大きく心動かされ力づけられてきました。
 ご準備も大変ながら月3回という企画数ならではの多ジャンルの作品紹介ともなったと思います。各企画紹介文も一層作者へと惹きつけてくれるものでした。作品、その作者、そしてひとりの人としての作家の生き方まで感じさせてくれる企画の数々に触れさせていただきました。
 また、建物の移築保存を含めてみなさんの古き良きものを愛でる心と結束、行動力。日本の培ってきた歴史や当時の人々の痕跡に、急ぎすぎる現代の私たちの心を動かし震えさせてくれるものがまだまだあるのだということを改めて教えてくださった意義も大変に大きかったです。
それは関連する砂丘館での展示にも。その感性と見識の深さに感服いたします。
 現代と過去の人々、そして様々な美しさへの橋渡しをしてくださってきたことへの敬意と感謝でいっぱいです。今後の絵屋さんの存続を願い、微力ながらできる形でのご協力をさせていただきたいと思っています。

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2 新潟絵屋へのご意見や期待すること

Nさん 女性

 「絵屋」が、NPOという新しいギャラリーの姿を、見る人や作る人や作品とともに緩やかに変化しながら探っていく過程は、それ自体が一つの作品のようだと感じています。その「制作過程」を進行形で見せて頂き、ほんのわずかばかりですが、作品を通して関わらせて頂いていることを、とても光栄で嬉しいことだと感じています。
 絵屋の運営委員の皆さんや、絵屋で出会った皆さんの一言一言が、その後の制作の中でふとよみがえって気づきを与えてくれることが何度となくあり、その度に貴重な経験だったのだと実感しています。

Nさん 男性

 現代アート作品を絵屋でもっと沢山観たい。工芸も含めて。

Aさん 男性

 水土、大地の芸術祭よりも、もっと身近な感じで、やさしい感じで町の人達が芸術、絵画などにふれあえる場が、私の住んでいる所にあったらと思います。色々な町にあったらと思います。シュミの人たちとつながって。
 病院や公共の場、普通のお店にも絵がたくさんあったらいいなと思ったりします。(ホスピタル・アート・ディレクターというのをテレビで見ました。)先進的な絵屋の絵たちが世に出て、他の画廊も続いてほしいですね。

Kさん 男性

 人々のニーズは多種多様で運営は大変でしょうが、絵屋のこれまでの理想や理念を貫いてほしいと思っています。そこに絵屋の個性と価値があると思っています。

Kさん 男性

 購入した作品を家で飾って楽しんでいますが、まとめて飾ることができないので、絵屋のスペースで飾ってみたい。

Iさん 女性

 10年以上前に複数作家で構成された企画展に参加させていただき、同じ作り手である作家さん達と交流もでき、とても有意義かつ楽しかったことを思い出します。こういった企画(夏に「ガラス展」とか)は発表する側にも見る側にも新鮮味があると思います。
 また一度絵屋の2Fを拝見させていただいたことがあって、確かたくさんの本や画集があり、ワクワクしたのを憶えているのですが、「Book & Caféスペース」として少し開放していただければ嬉しいです。(コーヒー代ちゃんといただいて…)

Sさん 女性

 大勢の人が来れば良いということでは絶対なく、高次元の質の中で、領域の幅が広がれば絵屋がもっと生きると。まことに個人的感想ですが、「おおむかし、こういう世界にとらわれてたなあ…こんな世界にハマりこんでいた時代があったなあ……」と、過去にやっとのことふり切り通過してきた暗いトンネルを見るような、そんな感じを抱かせる作品が多い。(もちろん、「これはスゴイ!!」と、ひとつ上の次元に頭が持って行かれるような、頭上の眼が開くような、そんな輝かしい世界を見せてくれた作品もありましたが、)
 人間は暗い、だからこそ、そこを突き抜けた光に浴したい、手に入れたい……
 この意見は(鑑賞者、コレクター)複数名の意見でもあります。その中には絵屋に時々通っている人もいます。本当に必要としている人同士が引き寄せられ結びあえるような、キリキリと引きしまった気の漂う場としてずっと続いてほしいです。

Wさん 男性

 これまでと同じく、解らないとされている(?)現代アートを一般に啓蒙しつつ、解る作品の展示もふやしていただきたいです。

Nさん 男性

 われわれは素人なので、絵については専門家が見た評価を受取る以外ない。どちらかと言うと、私たちは直感やその印象で絵を選択評価するからである。その点、作品は専門家が「評価」して展示されているが少し落差を感じている。だんだん、乖離している。率直に言って、難しい、分かりにくい作品が多い。
 具体的には、大倉宏さんの好みがあり難しい作品ばかりが展示されているように感じる。販売が伸びていないのは、そのせいであると思う。かといって、我々素人の好みに応じた作品を選ぶとなると、大倉さんの素晴らしい批評家としての眼が許さない事になるのではないか、と思う。
 もう少し、他の運営委員から作品を推薦していただき、幅広い作品が飾られることを望みたい。そうすれば、販売が伸び、訪問者も増えていくのではないだろうか。絵屋としての多様性を失ってきているように思えます。
 希望としては、絵画を処分したい人と買い手をつなげる「絵画オークション」をしていただきたい。できれば、絵画だけでなく「日本画(軸物)」「美術的道具類」などのオークションがあれば参加してみたい。

Tさん 女性

 絵屋ファンが集って語らう機会はいいですね。
 酒会とか―。また行きたいです。
 他の何かでもいいし、それこそ、気軽にかまわず参加する機会がふえるといいと思います。

Tさん 女性

 物販スペース(?)が奥まっていて少し入りづらさは感じます。
 18時までというのはありがたいです。もうチョイ、19時とかもいいなと思いますが、もちろん色々諸事情がありますからね。

Oさん 男性

 作品を家に受け入れるとはどういうことなのだろう?と考えられる人が、絵屋さんの活動を通じて増えることを期待します。実際に増えていることと思いますし、私もその一人ですが、更に増える事を望みます。

Tさん 女性

 大きな美術館にはできない、誰もが気軽に無料で立ち寄れる場の存在は貴重です。運営から離れ理想論かもしれませんが、できることなら町中にこそあって欲しい。他の生活に直接関わる店舗と同じように存在して欲しい。特に子どもたちにこそたくさんの様々な表現に触れ、先入観なく親しみ楽しんで、もって生まれた心の豊かさを失うことなくいて欲しいと思います。

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*このページは、今後も随時更新していきます。
*お寄せいただいたご回答をほぼ原文のまま掲載させていただきました。

さらに、長文の回答もご紹介します。

藤嶋俊會さん 会員

 私の新潟との関わりから話を始めると、知人の紹介で新潟日報の美術展評を始めたのは1986年の11月からであった。最初の作家は原裕治さんの彫刻だった。その頃は公募展が主だったが、グループ展、個展、何であろうと新潟に関わりのある美術家を取り上げようと思った。新潟日報の原稿用紙に原稿を書いて東京支社に郵便で送っていた。今では写真も添付してメールで送れるようになり、隔世の感を強くする。2007年1月21日六本木に国立新美術館ができてからは、上野と六本木の両方を見るのはきついので公募展は見るだけにした。後日公募展評を続けて欲しいとう声を何人かの作家から聞いた。以来現在は「ニイガタレビュー」(2014年3月29日から開始)への投稿に主として関わっている。
 私自身は会津若松市に生まれ、母方の祖父は第四銀行に勤めていた銀行マンであり、ルーツは新潟にあるようであった。おかげで新潟との縁が出来、多くの作家を知ることができ、貴重な財産にもなった。また上越市美術展の審査などで新潟県に出掛ける機会もあり、その度に新潟市に立ち寄って市内を歩き回ることもあった。
 よく言われるように新潟は美術に熱心なところであると感じており、新潟の美術情報には敏感になっていた。そうしたところに新潟絵屋の情報も入り、大倉宏さんの名前はすでに知っていたので直ちに入会をしたのだと思う。現在は地元神奈川の美術展評を毎月担当しており、新潟と神奈川という対照的ともいえる地方の美術状況に関心を強めている。

 さて本題だが、外側から眺めている身勝手な見方ではあるが、新潟絵屋の存在は大きな役割を果たしていると思う。確かに新潟には県立、市立の美術館がともに2館ずつあり、財団立や私立の美術館も結構ある。問題はそこで開かれる展覧会も重要だが、現存して活動している作家が集まる場のことである。そこへ行けば誰か見知っている人がいて雑談してひとときを過ごすことができる場のことである。美術館もそういう場ではあるはずなのだが、しばしば敷居が高くなりがちである。絵屋と砂丘館は敷居を外して場作りに貢献しており、その事実自体が重要であると思う。
 美術館の事業の中で必ず取り上げられるのが郷土作家に対するフォローである。グループ展から始まって個展を開いたり、作品を収蔵したり、地方の美術館ならどこでも実施している事業である。若い時は地元の美術館など無視して都会に出て来たが、突然美術館から電話があり作品を出してくれと云う連絡をもらったというような話も聞く。美術館がゴールというわけではないが、絵屋と砂丘館は美術館ではできない裾野作りに役立っており、裾野がなければ峰も頂上もない。本来は美術館がやるべきことだがなかなかできないことを代わってやっている身軽さを発揮している。
 経営的なことについては意見を述べる資格はないと思うが、お金の動きは時代の流行や趣味の傾向に大きな影響を受けるのだと思う。(2017年4月24日)
2000年6月新聞記事絵屋
2000年の紹介記事より
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並木町時代のアルバムより
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2004年7月 児玉晃展