宇梶静江展

9月22日tue―30日wed

vol.473

 刺繍にも、絵やピアノと同じタッチがあるのだなあと、宇梶静江の刺繍を見て思う。絵の場合は筆が紙にさわった跡だが、刺繍のそれは「一針の糸」。誰が刺しても同じみたいなのに違う。ピアノのタッチに似て、この刺繍のタッチは、一針に一針がつながり、重なっていくリズム、呼吸から生まれるのだろう。
 宇梶のタッチは彼女の人間、人生のように生き生きして、弾んでいる。動物の神が一人称で語ったりするアイヌの神謡や叙事詩には、新鮮な泡がつぎつぎはじけるような、スケールの大きいリズムが躍動している。宇梶がそれらに引かれたのは、彼女のリズムとアイヌ詩のそれが、互いを発見し合ったということだろう。
 3年前の芸術祭で新潟とアイヌ文化の縁が生まれた。今回もこの個展と平行していくつもの催しがある。80を越えて元気な宇梶静江や、ほかのアイヌの方々に会える。自国のなかのもうひとつの文化を、存分に感じたい。(企画 大倉 宏)

PROFILE
宇梶静江(うかじ しずえ)
1933年北海道浦河郡アイヌの家庭に生まれる。20歳で中学を卒業後東京に行き苦学。結婚後は東京に来るアイヌのウタリの面倒を見ながら2児を育てる。72年朝日新聞にアイヌの連帯を呼びかける投書をし反響を呼ぶ。アイヌの権利獲得の活動に挺身する。60歳をすぎてアイヌ刺繍を学び直し、和服ちと刺繍による古布絵でアイヌの精神世界を描く作品制作を始める。古布絵による絵本に『シマフクロウとサケ』『セミ神さまのお告げ』『トーキナ・ト』(いずれも福音館書店)。2011年吉川英治文化賞受賞。水と土の芸術祭2012(新潟市)に参加。

関連イベント
■9/22(火)~30(水)「宇梶静江の世界展」
会場:てんゆう花(新潟市北区木崎2 025-387-4110/10:00~17:00)

■ウポポリムセの会主催
・8/28(金)~30(日)特別展示「アイヌが伝えてきたもの」会場:旧二葉中学校・音楽室(新潟市中央区二葉町2-5932*水と土の芸術祭2015ベースキャンプ/10:00~18:00)
・9/25(金)19:00~21:30 「宇梶静江アイヌ叙事詩を語る」会場:福島潟 潟来亭(新潟市北区前新田乙/定員50名/要予約(ウポポリムセの会090-8743-9626 upoporimuse@gmail.com)
▶ https://www.facebook.com/UpopoRimse

PHOTO:「向かう」2015年 刺繍 27.0×37.7cm 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>