村井勇展「ニイガタサキュウ」

11月12日thu―20日fri

no.478

 村井勇が今回撮影した砂丘は、西新潟の海岸道と海の間の浜だそうで、その道を私は、ほぼ毎日車で通る。冬は実におそろしい道で、強烈な海風に吹き飛ばされた砂が、蛇のように横切り、路面をぼこぼこにする。飛砂よけのフェンスをまるごと飲み込んだ峰が、数日で出現する。地形が劇的に変貌する。強い風の日のあと、砂丘に刻まれる風紋は、多種多様でふしぎな姿をしている。
 この浜の砂丘に、村井はよく夜明けごろに行って撮影するらしい。幻想的な砂丘は、私の知る浜のようであり、知らない場所のようでもある。波や風の声高な叫びとは違う、砂の声がにじむ写真に引き寄せられ、歌になりそうな一歩手前で、口を噤む声の余韻に耳をすます。夢の道をたどってきた浜のようだ。(村井 勇)(企画 大倉 宏)

村井 勇(むらい いさむ)
1961年東京都生まれ。88年より製作開始された記録映画『阿賀に生きる』で撮影スタッフを務める。93年、記録映画『地域をつむぐ―佐久総合病院付属小海町診療所から』に撮影助手として参加。映画撮影終了後、単独で南佐久のお年寄りの姿を撮り続け、97年に新潟市万代リターナにて初個展「ぼちぼちいこか」開催。その後、98年長野、99年神戸、京都で巡回展を開催。新潟絵屋では2000・04・10・12年個展開催。02年創刊よりフリーペーパー「assh」(発行・新潟日報社)の表紙写真を担当する。

PHOTO: 2015年 カラー インクジェットプリント