新潟絵屋十六周年

 2000年6月16日に開廊した新潟絵屋は、2016年6月16日で、創設16周年を迎えます。

 昨年15周年を祝うパーティでは「十五周年漂流記」という文章を参加者にお配りしました。自分たちとしてよいと思える展覧会を継続していきたい。しかし作品販売はなかなか難しい。というせめぎ合う波にもまれ、漂流してきた15年という内容でした。
 その同じ去年の暮れに、新潟絵屋は認定NPO法人になりました。「絵屋がNPOになったんですねぇ」と声をかけて下さるお客様がありましたが、実はNPO法人には2005年になっており、今回なったのは「認定」NPO法人です。「認定」のあるなしで、なにが違うかと言えば、<認定NPOへ寄付する個人、法人に税制上の優遇が与えられる>のです。
 NPOが「認定」NPOになるには、高いハードルがありました。それを越えてまで「認定」を目指したのは、「寄付」という財源の定着なしには、漂流がいずれ難破にいたるだろうとの危機感からでした。この数年の赤字は深刻です。と言っても、認定になったとたんに寄付が集まるわけではなく、認定を力に、より積極的な寄付集めをしなければならない状況にいたったということです。そのために、新潟絵屋の活動の「公益性(社会的な意味)」を、これまで以上に、分かりやすく言葉にして語って、伝えていく必要にせまられてきました。
 16で思い出すのは、中島みゆきの「小石のように」という歌。
 「山を下る流れにのせて/まだ見ぬけしきあこがれこがれ/ころがりだす石は16」
 その冒頭の16を、長く小石の数と思っていましたが、後に16歳で家出した少女か少年のことらしいと気づきました。16年前新潟絵屋が下町(しもまち)の一画にころがりだしたときのメンバーは9人。新メンバーも加わり、初期メンバーもほとんどが今も運営に関わっています。そして「会員」という形で支えてきて下さったたくさんの方たちがありました。
 小石をはこんだ小川は、広い流れになり、石はくだかれて砂に変じます。新潟の町もこの16年で画廊が増え、さまざまな大小の美術の催しがあり、展開し、21世紀初頭とはずいぶん様変わりして、小石だった絵屋がそのなかの小さい粒になってきたように思えることもあります。元気がよかった小石も、いまやくたびれて川のよどみに休息したくなる。すると声が聞こえてくる。
 「おまえー おまえー 海まで百里/すわりこむにはまだ早い」
 たしかに、美術が新潟の町の日常になるという<まだ見ぬけしき>はもっと先にあるようです。新潟絵屋はいまやっと16歳。
 「認定」という新しい鞄を手に、もう一度、山を下る流れにころがりだします。(新潟絵屋代表 大倉宏)

十五周年漂流記

PHOTO:昨年のことば