小木曽瑞枝展「前上下左右後」

4月12日sun―20日mon

vol.458

 銀行で、喫茶店で、パン屋さんで、あの作家のあの作品が合いそうだ、などと想像する癖がある。必需品ではないけれども、あったら格段にいい。そんなささやかな仕掛けが、いろんなものを鼓舞する。
小木曽さんは、パブリックアートを多数手掛けてきた。ユーモラスで明るい色調の作品は、どこかのんびりとした佇まいがあり、安らぐ。空間は活気づき、周辺とも調和する。新潟にもあったら、と空想した。
 近作は糸ノコギリで板を裁断し、彩色して制作される。今回は後ろからの視点を加えた新作を交えて構成することにした。シリーズ「クリプトクロム」は、青色光受容体タンパク質が語意で、ギリシャ語で「隠れた色素」という意味がある。”可視化する事は出来ないが、確実にそこに存在している”そんな意味合いだという。白い壁に掛けると、側面の色は反射し、ほのかに壁を染める。
 作家がキーワードとしている言葉「日々観光」は、”日々観る事(風景の観察)に光をあてる”という意味。新潟絵屋の空間で、面白がり上手な美術家はどんな風に遊ぶのか、待ち時間がたのしくてたまらない。(井上美雪)(企画 井上美雪・大倉 宏)

PROFILE
小木曽瑞枝(おぎそ みずえ) 1971年東京都生まれ。日本大学芸術学部美術学科卒業。96年東京芸術大学大学院美術研究科修了。2007年ポーラ美術振興財団在外研修員としてスウェーデンに滞在。風景の観察を通じ、独自の視点で物語性を構築し、ファンタジーとリアリティーの狭間にあるような世界観を平面や立体、インスタレーションなどの作品として発表。近年の主な個展に、UTRECHT/NOW IDeA「The garden of deep sea」、IDEE自由が丘店「日々観光」、TRAUMARIS/SPACE「花蜜標識/ネクターガイド」(東京)、「左見右見」(横浜・東京)、Circle gallery「Chryptochrome」(東京)など。12年府中市美術館「OVER THE RAINBOW 虹の彼方」出品など。パブリックアート多数。

PHOTO:「2010年『森へはいる』「Beginning!Beginning!展」(Sunday issue/東京)にて

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